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主人公だってアツい!!~『ピークアウト』第3話感想~

※本編↓

※前回の感想はコチラ↓

~前回までのあらすじ~

 ケチをつけてやるつもりで観始めた「Mピーク」だったが、気付けばすっかりその熱狂に飲み込まれてしまったユキト。逆転トップをもぎ取りスターの矜持を見せつけた高原星二の姿を目の当たりにし、自分もその頂きへと向かうことを決意するのであった──。

ユキト、飛ぶ

 熱狂の夜が明け、ユキトは羽田行きのチケットを手に空港にいた。手持ちはたった10万、先行きは不安ばかりのはずだが、初めて「何者か」になるべく動き出したユキトの顔からは自然と笑みがこぼれる。
 訪れたのは巣鴨にあるプロ団体の道場。早速、中にいた女性にプロ志望である旨を伝えるユキトだったが……。

「やめとき」

 麻雀界を潰すのは誰か問うてきそうなコワモテのおじさんに割って入られる。「麻雀プロなんて真っ当な若者が目指したらアカンよ」おじさんなりの思いやりなのだろうが、あいにくユキトは真っ当な若者ではなく、プロテストのことも知らずに東京にやってきたアホである。

BOY

 

初登場のコマのインパクトがとにかくスゴイ

 そしてこの日、道場を訪れたプロ志望者アホはもう一人いた。彼の名は庄田棒太郎(しょうだ・ぼうたろう)。ユキトとは違って必要書類もしっかり用意し、ぬかりなくプロになる準備を進めていた男……かと思いきや、プロテストの応募締切はとうに過ぎていたのであった。お茶目さんである。

 しかしこの棒太郎氏、初登場時は絶頂寸前みたいなスゴイ顔をしているのでヤベー奴に見えるが、四畳半の自室に転がり込んできたユキトをなんだかんだで受け入れてくれるし、プロテストについても教えてくれる好青年である。この辺はきっとモデルになった方の人柄なのだろう。

※↑(言うまでもなく)今回のサブテキスト。

すべては手遅れなのか

 ところで、第1話からずっと気になっていたことがある。

 「ヒロインもう死んでる問題」だ。

 『鉄鳴きの麒麟児』の「歌舞伎町制圧編」で主人公・鈴司が麻雀を打ち続けるのは、生死の境をさまよう元妻・華子を救うためだった。最初の『鉄鳴きの麒麟児』では娘の小梅にばかり夢中で、華子に対しては少しドライにみえた鈴司だったが、「制圧編」ではむしろ自分の麻雀に対する熱意が惚れた女──華子への想いによるものだったことを思い出す。
 絵面こそ雀荘に入りびたっているアラサー雀ゴロのギャンブル漫画だが、その実態は「大好きなヒロインのために頑張る男の子」の物語でもあった。

 一方『ピークアウト』。ユキトのことが好きだった同級生、リス子──花島理須子は、既にこの世にはいない。生前彼女が思っていた通り、ユキトが麻雀プロになれたとしても、すべては手遅れなのではないか。もう死んでしまったあの子のために、今更なにができるのだろうか。

 ユキトが背負っているのは生半可なものではない。しかし──。

プロの、その先に

 なんだかんだでプロテストを受けられることになったユキト。
 筆記試験を終え、続く実技試験1回戦目は東1局から親の6000オールが飛び出し、トップの独走態勢を許すこととなってしまう。
 そして迎えた南3局。2万点差のトップをまくるためにこの親番はモノにしたかったユキトだが、ネックのペン7索が全枯れ、しかもトップ目のドラポンという最悪の状況に。
 テンパイが入るも既に待ちは純カラ、ペンチャンを落として手を組みなおすにしてもドラポンに放銃するわけにもいかず……。試験に合格してプロになるためだけなら、別にここで無茶はしなくてもいい。

 だが、彼の胸に蘇るのは、東京に発つ前に、リス子の遺影に誓った言葉。


「この先未来永劫 花島理須子 おまえこそが おまえだけが」


「俺のファン第一号だ!」


「何の自慢にもならねえ称号だがくれてやる!!」

「でもよ」

「むしも俺が誰かさんみてえなスターになった時
 そこを超えてすげえ奴になればなるほど」


「おまえの人生の価値だって 上げてやれるんじゃねぇのか!?」


 純カラリーチを敢行するユキト!!
 もちろん狙いは他家をおろしての親番続行だ。

 自分が目指すのは、ただのプロではなくその先のスター
 ならばトップを狙わずに何とする!!

 ……そう、この『ピークアウト』という作品は、単に「城丸雪兎が麻雀プロになるまでを描く漫画」ではない。いや、白状すると俺はこの第3話を読むまで、ユキトが「何者かとは……プロとは……」と右往左往するさまがしばらく描かれるのだろうなと根拠なく思っていたが、誤解だった。

 これは「城丸雪兎が”スター”になる物語」だ。

 リス子がユキトに感じていたのであろう、ほんのかすかな引力。それが満点の星空で一番大きく輝く星が持つ、本物の重力であると証明することができた時、凍り付いて二度と動かないと思われた彼女の人生に、新たなが宿される。だから、手遅れなんてことはない。

 3話目にして想像以上にアツい姿勢を魅せてくれたユキト。まさに新・主人公の面目躍如、素晴らしい回だったとしか言い様がない……!!!

待てるのか、次回

 やだやだすぐ読みたい!
 ひみつ道具で隔週刊だった頃のキンマに戻してよォ~! かねえポン!!


ところでこのモブの子、すごく好みのモブ顔で好きです。

〜追記〜

モブだと思ってたらモデルの方がいたようです。

モブ顔とか言ってホントすみませんでした。推します。


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