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素人が源氏物語を読む~若紫(3)少女をさらって……何度読んでも苦手や。

エセ関西人みたいなタイトルつけてスミマセン。私は本当に何度読んでもこの巻で光源氏と紫の君が接近する場面が苦手で、読むとムカムカしてしまいます。皆さま、「若紫」の後半を読まれる際にはぜひ、胃薬を服用なさってからどうぞ。

■あらすじ

感染症治療のために行った北山で出会った尼君も治療を兼ねて北山に行っていたようで、病状が落ち着いたら京の都に戻ってきていた。

9月の、月のキレイな頃というから中頃でしょうか、光源氏は六条の女のとこに通おうとする道すがら、尼君の家に見舞いに行った。

9月の20日、尼君が北山で死去。

10月20日過ぎ、紫の君や少納言が都の荒れ邸に戻る。

その数日後、光源氏は少納言と故人のこと紫の君の行く末のことなど語らう。

その頃、紫の君は尼君の不在を嘆いて泣いている。と、そこに女の童がきて「大人の男の人が来てるみたい」

お父様なのね! と元気よく向かっていく紫の上。でもお父様はいなくて、光源氏がいる。バツが悪くて少納言のほうに近寄る。

光源氏「お父様じゃないけど、お父様とおなじくらい仲良くしてよ。眠いの? 私の膝で寝なさい。これからは尼君のかわりに、私があなたを可愛がります」

御簾越しに話していた2人なのに、光源氏は御簾の下から手をいれて紫の君の身体を探り手を握る。

紫の君が寝床に逃げると、寝床にまで入ってくる。怖がる紫の君。怖がってる様子を可愛らしく思って抱き寄せて子どもが喜びそうなことを語りかける。

後日、父親が紫の君を引き取る寸前に、寝ている紫の君を光源氏が自宅に連れてきちゃう。で、なんかゴージャスな暮らしね、って紫の君もまんざらではない感じに。

■性的虐待、DV、ダメ、絶対!

この晩に光源氏は行為そのものはしてないんですけど、でもねえ、幼女への性的虐待として法的に裁きたくなっちゃう案件です。

平成末期の2018年の小説『彼女は頭が悪いから』だったら、彼をダメだって言えるのに。平安は受け入れるしか無かったんですかね。悲しい。

そして少納言もさあ、「こんなに幼いんですのよ」って言いながら、紫の君の身体を向こう側に光源氏のいる御簾のほうに押しやるとかさあ、どうなの。性的なことは解らないとしても、頼れる大人がいない絶望が凄いんじゃないですか、これ。光源氏に逆らえないからしょうがないの? 平安の女の人生って、何なんですかねえ。

あと、ほんとヒドイと思うのが、自分のことを嫌がってるし怖がってる紫の君に、子どもが喜びそうな優しいことを語りかけるってところ。DV的な手順ですよね。聞いてるうちに彼女も「そんなに悪い人じゃないかも?」って思っちゃう。紫の君ー、そういうのストックホルム症候群だと思うの。

と、ここまで書いてWikipediaを見たら、ストックホルム症候群は、むしろ交渉による生き残りをかけた戦略、との見方もあるそうです。

そうか、紫の君、ごめんなさい。あなたも桐壺が最期に詠んだ和歌のように、死にそうな時にも「いかまほしき」(生きたい)だったのかもしれないんだね。

っていうか、生き延びるために、辛いこと全部イエスっていうの、やっぱ辛くないですか。それがあなたの生きる道なんですか。平安スタンダードなんですか。

源氏物語を読みながら、私は時々語りかけている。紫式部先生に。登場人物に。何も言わないことで自分の意思を伝えてくる人もいる。「バカね、あれはこういう意味よ」と答えてくれるひともいる。紫の君とはわたしは心が通い会わなくて、彼女はいつもバカのフリなのか本気なのか知らないけど、キラキラした瞳でどこかを見ている。

■もしこの虚構世界で誰も幸せにならないとしても

源氏物語では、誰も幸せにならないように見えます。ねえ、何で紫式部先生はそんなの書いたんですか。

なんかこう、せっかく長いんだから「この身分で、この性格で、こういう相手を選んだら、ハイ、恋愛必勝」みたいなの、くださいよ。私は脳内で紫式部先生への通信を試みる。

紫式部先生は笑う。それを読んであなたはどうするの? 確かにそういうパターンは有り得るかもしれない。でも、その知識って誰得なの?

えっ、誰得っていうか、ほら、なんか希望っスよ、この世界のどこかに大河の一滴くらいでもシアワセが確約されてる場合があるってことを知ったら、何か癒されそうな気がするんスよ。

そう? またね。

そうして紫式部先生はご自身の和歌の如く、見しやそれともわかぬまに、通信を切りました。

この問いに対する今の私の答えは「誰も永遠的の幸せを得られなかった。みんな満たされない人生を歩んだ。読者の人生と同じように。ゆえにケース集のように読める」です。これは学びなのか楽しさなのか、この価値をなんとか呼べばいいのか、

私はまだ知らない。

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