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神田伯山独演会に行って。

神田伯山のYouTubeチャンネルを逐一チェックしているくらい好きなんですが、高座を生で聞いたのは、去年(22年)の柳雀・昇也の新宿末廣亭での真打ち昇進披露興行の1回だけ。

それも、寄席の出番の中での15分の1席だけなので、独演会でちゃんと聞いてみたいと思っていたところで、近所のホールに来るというニュースを小耳にはさみました。

その前の年も来ていたんですが、余裕かましていたら全くチケットを取ることが出来ず、しかも前回は大ホール(1200人)で、今回は中ホール(400人)なので、さらに取れないことが目に見えているので、有料会員登録をして先行販売で買える権利をゲットし、発売開始時間の5分前からパソコンの前に陣取り、めでたく、前から数列目の席をゲット出来ました。

ちなみに、カード番号等の登録を終えて、もう1回空席の確認をしたら開始5分で全部売り切れてました。やべえ。


当日は雨。というか台風!

チャリで行けば10分かからないところですが、徒歩で歩く道は雨で水たまりが尋常でない為、45分くらいかかってたどり着き下半身はヒザ下あたりまでビッチョビチョ。

テンション下がるw

開演10分くらい前についてホールに入ると、「台風で大雨で交通機関もヤバそうだから、ガラガラだろうな・・・」っていう予想に反し、会場はほぼ満席。

このホールで普段やってる落語会とか音楽会だと、老人率が激ヤバなんですが、さすがに若い層がめっちゃ多いです。

弟子の青之丞という前座の高座(まあまあ)を終え、真打ち登場。

大体、落語なんかの独演会だと1席やってから中入り(休憩)で、その後にもう1席やるか、2席やってからもう1席っていうパターンが多いんですが、今回は全4席やる宣言w

長いとダレてしまう私としても嬉しいし、その分色んな話を聞けるのも嬉しい。




・玉子の強請り

奉公先でひどい目に合わされた男と出会ったゆすりのプロが、そいつを助けてやろうと、トリッキーな方法で見事に相手からたかって見せるお話。

とにかく圧倒的に喋りと構成が上手いですね。そして笑いのセンスが凄い。

笑いというのは本当に難しくて、コンマ5秒セリフが遅いだけで面白くなるし、コンマ5秒表情を入れるだけで面白くなる。

センスです。

小学校の高学年くらいだったら全然楽しめると思います。全然楽しめるというかメチャクチャに楽しめる。


・小政の生い立ち

後に清水の次郎長の子分となる男が、まだ子供時分にたまたま次郎長に出会い、子分にしてもらうことを約束してもらう話。

お涙頂戴ものですが、涙と笑いを瞬時に交互に提供し続ける話で素晴らしい。


・お岩誕生

有名な「四谷怪談」の主人公であるお岩さんが生まれる前の話。悪党が人殺しを続け、殺された女が幽霊になってやってくるというお話を照明を落としてやるわけですが、その表現の恐ろしさよ。

去年、春風亭一之輔の「もう半分」を聞いた時も怖かったけど、このお話も本当に怖くて、化け物に出くわした時の登場人物の情景描写とリアクションが本当に怖い。

細かく言っちゃうとこれから見る人の楽しみを奪うでしょうから言いませんが、肉体を楽器や音響機器として使い、顔面を画素数の高い映像投影機として使うって意味で、凄まじいエンタメでした。


・万両婿

クッソ大爆笑w

私は基本的に、しょうもない校長の長い話とか、結婚式のつまらないスピーチを聞くのなんかが死ぬほどイヤな、本当に面白い話じゃないと全然笑わないタイプです。

基本的に寄席に行かないのも、聞きたくもないクッソしょうもないセンスも技術もないクソ芸人の話を聞かされるのがイヤだから。

なんで俺がわざわざカネを払って、お前のしょうもない話を我慢して聞かされなきゃいけないんだよ、ふざけんじゃねえ。

そんな、笑いにも話芸にも厳しい私が笑う段階は、

・ニヤリ
・ニッコリ
・フフッ
・ハハッ
・アッハッハ
・ダーッハッハッハ(手を叩く

って感じになっていて、柳家三三、柳家喬太郎、桃月庵白酒っていう人気落語家の高座で「ハハッ・アッハッハ」が多く、春風亭一之輔や桂宮治の落語を聞くと「アッハッハ」がデフォルトな感じですが、この日、ダーッハッハッハと大声で笑って手を叩いてしまいました。

話は、旅先で人違いで死んだことにされてしまった商人が家に帰ってきたら、嫁は他の男と結婚していて、その縁を強引に取り持った大家を責めるものも、それでもどうにもならず、最後は町奉行の大岡越前に裁いてもらうという結果メデタシメデタシなお話。

これね、落語でも講談でもやっているそうですが、マジで伯山が演じた大家が面白過ぎで「まだ終わるなまだ終わるな!」って思ってましたね。

当日「非常に大きな台風の最中」っていうシチュエーションがあった為、演者も観客も、ある種特別な緊張感があったこともあるでしょうが、大変素晴らしい時間でした。

前の方にいた常連と思しき人達(講談が始まるとすぐにメモを取り始める・休憩中、離れた場所に座っている人と話し始める)が、終わったあとに、「今日すごいよかった。万両婿、本当によかったよね~!」って言ってたので常連さんが聞いてもよかったのでしょう。

伯山本人も、「大体20分弱のお話でも、良いお客さんの時は話が伸びる傾向にあって、さっきの話も伸びてました。次のお話は35分くらいなんですが、今日のお客さんだと多分45分になると思いますw」って言ってて、実際に伸びてましたしね。

数えてみると、落語会や寄席にこれまで18回行ったようですが、その中でもベストな会でした。

マジで素晴らしかった。

雨の駅のホームで飲んだ酒がめちゃくちゃ美味かった。

また行くぜ!


-追記-

書き忘れましたが、神田伯山はね、芸はもちろんのこと、お辞儀が大変綺麗なところも好きなんです。

私は小1から中学まで剣道をやっていて、徹底的にきっちりと礼を尽くすことを叩き込まれたので、ピョコッと頭を下げるだけとか、マイクがあるからと斜めに頭を下げる落語家とか見るとイライラしてくるんですね。

頭を下げてマイクにぶつかるのならば、少し後ろに座って頭を下げて、もう1回前に出ろよ、と。

その点、神田伯山さんは本当に美しくしっかりとしたお辞儀を丁寧にしますし、今回も全4席やって、1席終わるごとに1回はけてまた出てくるってことをしていましたが、座布団に座った時だけでなく、袖から舞台に入ってくる時も毎回客席に向かって頭を下げていました。

そんなのにこだわらない人もいると思いますが、私はこだわりますし、芸がどれだけ良くても、頭もまともに下げられない芸人の評価はだいぶ下がります。

色んな人の神田伯山評を聞くと、芸についてや、講談界への貢献度なんかについては良く見ますが、「しっかりとしたお辞儀の良さ」に触れているのは見たことがないので、書いておくことにします。


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