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白鳥省吾賞まもなく〆切

第25回白鳥省吾賞の〆切が10月31日(当日消印有効)です。

ヒット曲「星影のワルツ」や反戦詩「殺戮の殿堂」で知られる民衆詩派の代表的詩人・白鳥省吾(しらとり・しょうご、しらとり・せいご)の出身地、宮城県栗原市などが主催する文学賞です。
「自然」「人間愛」のいずれかをテーマとした詩を募集しています。
一般の部の賞金は最優秀賞が15万円、優秀賞が10万円などです。
応募要項は賞のホームページでご確認ください。

詩集賞はいくつか著名なものがありますが、詩を選考対象としている全国区で一般対象の文学賞はあまりないのではないでしょうか。
地方の新聞社などが主催する文学賞は地元出身者や在住者に地域が限られる場合が多く、大学や教育委員会などが主催する賞の場合は年齢が子ども・学生などに制限されることが多いように思います。

地域も年齢も制限がない詩(詩集ではなく)対象の文学賞は、白鳥省吾賞のほかには、伊東静雄賞ぐらいしかないのではないでしょうか(見識が狭くてもうしわけありません、他にあれば教えてください)。

残り3日ですが、希少な機会を逃さずぜひご挑戦を。
わたしは生活に追い回され、疲弊しているため応募できるかどうかわかりません。伊東静雄賞は今年も〆切翌日に思い出し「…来年応募しよう」と決意を固める鉄板のルーチンでした(もう何年繰り返してるのか分かりません…)。

ところで、白鳥省吾さんはどのような詩を残しているのでしょうか。
1922年に出版された詩集『共生の旗』(新潮出版社)に「洪水の約束」という詩があります。

静かな冬の透明さは
水清く涸れた大河のほとりに在る、
ところどころに砂の河原あらはれて
岸辺に消えのこる雪の模様の上
寒さを研ぐ日の光
晴れわたる青空の冷たい匂ひ
影うつる枯れ葦や柳も心澄んで
すべて玻璃の輝きに明らむ。

凍えた沈黙の中を
大地の脈のやうに照りゆく流れ
その水面に舟二つ浮んで
言葉なき黒い数人は砂利を舟に浚い上げては
ときどき辷るやうに漕いで河原に棄てる、
それをまた他の数人が土堤の上に運んでゆく。

寂しくそぼ濡れて汗ばんで
人々よ終日を働いて
河底をどれほど深くしたか
来るべき夏の洪水の恐怖を
どれほど少なくし得るか。

〈略〉

黒く蠢いて原始人にちかい動作の
無知な祈りの労働のかなたに
雪の連峰が静かな光に燦(きら)めく時
人間の力の運命的な微小さが
哀れにも美しく尊く
冬の風景の中に浮彫される。

白鳥省吾「洪水の約束」
詩集『共生の旗』(新潮出版社、1922年)

突き放すように対象化された詩行が淡々と運ばれる詩ですが、人々の営みを見つめる視線には、どこか優しさがあるように思えます。自然の大きな力の前に歯が立たない存在でありながらも、少しでも日々をよくしようとひたむきに生きる人々が描かれ、その民衆に対して寄り添う視点があるのを感じます(あ、だから民衆派といわれているのか…)。

ほとんど100年前の作品ですが、普遍性を獲得した詩語は時の隔たりを越えていくのだと実感させられます。このようなすげえ詩が、じぶんにも書けたらいいのにな…

ちなみに、詩を対象とした他の文学賞を調べてみたら、沖縄県内の賞が相次いで先月末から今月にかけて締め切られていました。

第19回おきなわ文学賞(9月末日・一般対象)

第17回琉球大学びぶりお文学賞(10月24日、大学生・高専生対象)

第4回名桜文学賞(10月27日、一般・学生対象)

ブログ書くのが一足おそくてすみません。
時間切れのリンクを三つ、貼らせていただきました。
では、シュワッチ。

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