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学習言語で書かれている教科書の定義文を音読し、視写し、例示して、言い回しを子どもたちは使いこなせているか

   川南町で、新井紀子さんのワークショップや講演会があった。
 
 リーディングスキルテスト(RST)は、小学校5年生から30万人が受験しながら、全国学力状況調査のスコアと明確な相関関係があることが明らかとなっている。新井さんの話では、高等学校入学試験の偏差値と中学1年生のRSTの結果にも相関関係がある。RSTは、塾があまりないような地域の子どもたちにも高校進学等の公平性を保障しようとする試みである。
 
 では、どのようにRSTのスコアが上げることができるのか。
 
 新井さんは受検結果を生かした個別最適な学びとしてRSTノートを活用することを示した。RSTは、個別最適化を追求するためのテストである。この子はどんな読みの特性があるかを明らかにして、この後の学びが困難になるかどうか、将来、中学校でつまずくかどうかを予測するものである。

  子どもたちは、自分の読みがベストであると思っており、子どもたちは苦手の教科があると思っている。短く書いてある文の意味が立ち上がっていない、あるいは、苦手な読み方があるとは思っていない。RSTは、一人ひとりの子どもたちの見えない読みのクセを直していくための診断テストである。児童生徒の特徴について、科目を越えて共有し、将来予想される課題を認識しようとするのである。
 
 新井さんの提案では、RSTノートに子どもたちが日々書いていく内容は、二つあった。
 
 一つは、音読して視写することから始めるというものである。そのさい、生活言語ではなく、学習言語で書かれている高学年の教科書を使って、「○○○を×××と言います」という言い回しを使いこなせるかが重要となる。学習言語は、あるひとかたまりの知識を持っていない人に説明するための言葉である。だから、たとえば、物語ではなく、登場人物や視点といった学習用語の定義と例示を毎日書くのである。
 「山形県は盆地で、夏は暑い。」という文の「で」は、理由を示しているが、「山形県は盆地で、花笠が有名である。」の「で」は、並列を示している。この区別が子どもたちにはわからないという。理科や社会科の教科書にある定義文に①下線を引いて、②文を読み上げ、③ノートに書き写し、④例示するという書く作業を一年間繰り返すというのである。
 さらに、授業の中でめあてやまとめを書く時も、四分六の構えという板書する教師の身体技法を使いながら、「共書き」する。先生が書き終えたときに、子どもも同時に書き終えようとするのである。さらに、教師が口頭でめあてやまとめを読み、子どもが書き留める聞き書きへ移行していく。文が読めていない子どもは、詰まるか、ピッチがおかしくなる。視写(と言うより聴写)や音読は、文節を意識してスムーズに読むことが大事となる。そのさい、「1分間視写」などゲーム性をもたせたり、子どもたちを励まし継続させたりすることが重要となる。
 
 二つには、図や表、グラフ、年表、地図、式などを読み、特徴を3つ書き出すというものである。子どもたちは、図や表に付随するタイトルを読まない。一人ひとりの子どもたちに、図や表やグラフ等から読み取れる特徴を書かせるのである。
 
 RSTは、RSTの評価そのものではなく、フィードバックコメントを担任が確認することが大事となる。子どもや保護者と共に個々の課題を共有し取り組み続けることで、スコアは毎年1つずつ上がっていくのである。

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