pMDI+スペーサはネブライザーに非劣性(Cochrane Database Syst Rev 2013)

COVID-19対策として、ネブライザーの使用が各施設で控えられ、代替として加圧式定量噴霧式吸入器(pMDI)とスペーサの組み合わせが注目されています。

Cochrane Database Syst Rev;2013(9):CD000052. PMID: 24037768

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24037768/

・成人と小児を対象にpMDI+スペーサとネブライザーで臨床アウトカムを比較した論文を抽出。
・44の論文が詳細に吟味する論文に選ばれ、判定基準に適したのは12論文。
・成人でも小児でも2つの投与方法で入院率に差はなかった(成人ではOR 1.12 95%CI 0.45~2.76,小児ではOR 0.71,95%CI 0.23~2.23)。
・小児ではpMDI+スペーサを用いた方が、救急外来滞在時間が平均して0.62時間(95%CI 0.40~0.84時間)短かった。
・pMDI+スペーサを用いた喘息増悪時のSABA投与は少なくともネブライザーと同程度のアウトカムを生む。

<個人的コメント>

スペーサはpMDIに装着する筒であり、噴霧操作と吸気動作をうまく同調できない小児や高齢者の方を中心に、薬剤の適切な吸入を補助する器具です。
各種製薬メーカーごとに自社の薬剤に合わせて開発・配布しています。エアロチャンバーが代表的な製品です。https://amco.co.jp/patients/post.html

しばしば、pMDIの吸入で「むせる」「逆に咳が出る」という訴えのある方がいます。これは噴射された薬剤が直接咽喉等を刺激するコールドフレオン現象が原因と考えられますが、このような方にもスペーサは効果があります。
この現象はクローズドマウス法(pMDIを直接唇に咥える方法)のほうが起きやすいので、もし噴霧操作と吸気動作の同調に問題がなければ、私はまずオープンマウス法(唇と吸入器の間に指2本ほどの距離をあける方法)を推奨し、それでもうまくいかなければスペーサの使用や薬剤変更を検討しています。

このようにスペーサは「吸入補助具」として使われます。しかし、新型コロナウイルス感染症の患者さんが受診者に紛れている可能性がある場合において、ネブライザーがウイルスを飛散させやすくなる危険が懸念されており、pMDI+スペーサがネブライザーに代わる吸入手段として注目されています。

日本小児アレルギー学会では3月末にいち早く「COVID-19流行期における喘息発作に対するネブライザー使用時の注意喚起」を提示しています。https://www.jspaci.jp/news/member/20200326-1235/
また、日本環境感染症学会では「医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド(第3版)」を公開しています。
http://www.kankyokansen.org/uploads/uploads/files/jsipc/COVID-19_taioguide3.pdf
この中では、エアロゾルを⽣じる処置として気管挿管・抜管, 気道吸引、気管⽀鏡検査などとともにネブライザー療法が要注意として記載されています。ただし「⽿⿐咽喉科での鼻腔への薬剤投与のためのネブライザーは該当しない」となっています。

もともと、pMDIはドライパウダー製剤に比較して前述した同調不良や不適切な吸気流速といったエラーが起きやすいことが知られており(Respir Med 2015. PMID: 25771037)、ただでさえ苦しい喘息増悪時に適切な吸入手技を遵守することには困難が伴います。

喘息の増悪時頓用のSABAにpMDIのメプチンエアー、メプチンキッドエアー、サルタノールを処方している方は多いかと思います。この機会にpMDIの吸入手技について今一度見直し、場合によっては(やや品薄になっていますが)スペーサの組み合わせも検討してはどうでしょうか。

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