UCTによる蕁麻疹の病勢評価

お久しぶりです。
コロナが落ち着いたので(というか終息を待っていられないので)情報発信を再開しようと思います。


Development and Validation of the Urticaria Control Test: A Patient-Reported Outcome Instrument for Assessing Urticaria Control
J Allergy Clin Immunol 2014;133(5):1365 PMID: 24522090

蕁麻疹のコントロールをレトロスペクティブに評価するための指標としてUriticaria Control Test (UCT)を開発し、その妥当性を検証した試験。直近4週間の経過を思い出して4項目の質問に回答するUCTには妥当性や信頼性があり、蕁麻疹のコントロールが不十分な患者さんを識別するための精度にも優れていた。

UCT:この4週間の状況についてお答えください。
Q1.蕁麻疹による症状(痒み、膨疹、腫れ)がどのくらいありましたか?
(0)非常に強い、(1)強い、(2)ある程度、(3)わずか、(4)まったくない
Q2.蕁麻疹によってあなたの生活の質はどのくらい損なわれましたか?
(0)非常に強い、(1)強い、(2)ある程度、(3)わずか、(4)まったくない
Q3.蕁麻疹の治療があなたの症状を抑えるのに十分でなかったことがどのくらいありましたか?
(0)非常に頻繁、(1)頻繁、(2)時々、(3)まれに、(4)まったくない
Q4.蕁麻疹の状態はどのくらい良い状態に保たれていましたか?
(0)まったく保たれない、(1)わずかに保たれた、(2)ある程度保たれた、(3)よく保たれた、(4)完全に保たれた


The Urticaria Control Test and Urticaria Activity Score Correlate With Quality of Life in Adult Japanese Patients With Chronic Spontaneous Urticaria.
Allergol Int 2019;68(2):279 PMID: 30527936

慢性蕁麻疹患者さんにおいて、UCTと以下の2つのスコアの相関を調べたところ、強い相関関係があった。UAS7:1日の膨疹や掻痒感をスコア化して1週間分を合計するDLQI:過去1週間で皮膚の状態が生活にどれくらい影響を与えたかを把握する指標治療介入後のUCTの変化量も上記指標の変化量と相関していた。

<個人的コメント>

私は皮膚科医ではないので、重症慢性蕁麻疹の専門的な介入まではできませんが、成人の食物アレルギー患者さんを拝見していると、その中に多くの慢性蕁麻疹患者さんが紛れて受診してきます。

また重症喘息の合併症としても蕁麻疹はしばしば拝見します。米国の重症喘息コホート研究でもuriticaria/hivesの合併率は15.5%と報告されています(JACI 2017 PMID: 28797732)。このような患者さんに(喘息の用法・用量で)オマリズマブを導入した際に蕁麻疹の病勢がどのくらいコントロールできているかということも、外来診療を行っていつも気になっている点です。

UCTは
 12点以上であればコントロール良好
 8~11点はある程度コントロールできている
 8点未満はコントロール不良とされますが、②を見ると概ねUCTの12点以上がUAS7の6点以下に、UCTの8点未満がUAS7の7点以上に対応することになります。
蕁麻疹の大規模臨床研究ではUAS7を指標になされているものが多いですが、このスコアリングは非専門医にとってはハードルが高いため、UCTで大まかに把握ができ、コントロール不良患者さんを見落とさないというのは助かります。

なお、喘息では同様のツールとして
12歳以上ではACT(Asthma control test: Allergol Int 2012. PMID: 23000730)が、
https://kusurigsk.jp/pc/act/index.html
4-11歳ではC-ACT(Childhood asthma control test: J Asthma 2011. PMID: 22047529)
https://kusurigsk.jp/pc/act_kids/index.html
があります。
UCTと同じく、4週間を振り返って行うスコアリングです(C-ACTは一部当日の症状あり)。
コントロール良好・不良の閾値は20点(満点はACTは25, C-ACTは27)となっています。

UCTやACTのような簡便で効果的な病勢評価ツールは、複数のアレルギー疾患を合併した患者さんの評価にあたり、アレルギー科医の「共通言語」として有用なのではないかと考えます。

(皮膚科や小児科の先生方、間違った点や不十分な点があればご教示願います。)

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