櫛那姫 (九)


インターネットは網、ウェブ、蜘蛛の巣。


天網恢々租にして漏らさず。
と言う。


地面の底へ落とし、押さえ付け、
そこより外へ出さない。

「そういったコンセプトでいいのかな。」


俺が言うなら地図。マップ。


地域的に地獄が存在する。
その地の底に押さえ付ける。
地理的に局所的に。
インタラクティブに扱えるなら。

「他に意見あるかな?」

「わたしは違う。私はマップでいいと思う。
マップスっていう漫画あったでしょ?
あれ、そういう話。あの頃の漫画、80年代、
サイレントメビウスもそういう世界。
ここは地獄指定。ここは設置。
そういう地図をそれぞれがインタラクティブに書き換えて使っていけば、一番そこが地獄だと思うところが地獄。」

「たしかに。統計的に書き換え可能な地獄。」

「閉じ込めたいと思えば封じ込められるし
その意見が統計的に多ければそこに定額的な予算を積み上げて地獄預金が溜まると抜け出せない。」

「怖いな」

「あんたが言ったんでしょ。」

「システム管理あなただからあなたは大丈夫。
そこさえ守ればあなたがそう運行している運営者で、収まればあなたの生活は安心。あなたのアイデアだからあなたの状態が良くなる事が第一。
あたしたちもそれでいいし。
あなた頭良いから。」

「とても良い意見ね。
まとまったわ。あとはお願いね。」

「信頼されてると感じる。」

「当たり前じゃない、ほんとにこの子は。」

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地獄という基準がこんなに使えるとは。
落ちるのは局所的な要因の、ある状態。
で、あればいいが。

クスリの身体性

それも。

「手に入ったわね。あなたがそういう事に理由を見出してるのはする事に意義を感じて理由があるから。その理由は何?」

「物事の処理。クシナダは秘書かな。」

「冷徹ね。他にする事ないの。」

「この仕事終わらないと何もできなかったんだよね。」

「大丈夫、大丈夫。あなたはあなただから。
アズマに理由聞かれたら御礼言いなさいよ。」

「あの人には話したい事山ほどあって。」

「私があの人に憑いてるのそういう理由。
あなたがそういう人だから。あなたに出会う為にあの人に憑いてた、わかる?」

「嬉しすぎると何も感じないくらい無色透明になる。リミッターとかそういう感覚じゃなく。」

「あんたは不思議。そういうところに女は惹かれて惚れる。魅せられる。引力が生じるくらいあなたが核となる。」

「昔は実力ないからその魅力どうしようもなかった。」

「今は?」

「つったって、どうしようもない。」

「それが女だからね。忘れないでね。」

神がいる事に同意する。

女が神に喩えられるのはそういう理由。

自分にとってはひとりの女。



アズマは今日もゆく。



マップス 了
短編小説 「櫛那姫」完 ----

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