積乱雲の記憶(一)


電子卓に手を打つ。
その盤面には黄色と白のぼやけたキー。
プル イング インフォームド イル
テイカー アル テンプル ドーム
クルーシアル カース
カタカタ鳴らず気分が悪いが、外が雨なのが
昨夜の転換の後始末をしてくれている。

昨日、寺院が落ちた。
私はいつも英文をカタカナでこうして記述している。それが何よりも一番正しいと疑わない。
寺院とは構造的に敷いた洗脳の一部だ。

私たちは見えないものが見える。
見えないものが見える。
見ないものは見ない。そういう事なのだ。
ベーシックパースは45度。
線数50%のグレースケール。
これが一番よく見える。私たちに伝わるのは
この世界。この視眼。
アートオブジェクトの視点とはこのような。

あいつは誰だ。
あの格好、センス、雰囲気。
視覚野に浮かんだものは、高めに設定された
理想主義の表面上の上澄み。
わかった。あいつは、そうか。
四角形のキューブの中の病んだキュビスト。
全員そうだ。白い壁。白い絵。
こんな風景に上があると私はこのような
行き場のない殺風景は観客のせいだと
思い始める。ガタッ

避けなくてもいいのに。

コーヒーでも飲みますか?
あ、はい。
少々お待ち下さい。
明日の公開収録は何時から?
あー、だるいなぁ。
コップ後で洗わないと、いや明日でいいや。
なんかな、この絵、変な感じ。

明るい部屋へようこそ。

じゃあね、また。
あ、帰っちゃった。
こんにちはー。
あれ、誰か来た。

足の付いた人。俺はこいつは人間だと思う。
こいつはなんか違うけど、こいつはそうだ。
たぶん。

コーヒー持ってきたよ。
ありがとう。

視点が変わると何もわからないが、この2人は
恋愛?というものを感じる。
どちらか一方の感じがしない。
それをなんというか、男女でしか有り得ない
感じ。精神構造はガタガタした道路でめちゃくちゃになるから景色は大事。

キューブに置かれたオブジェクトはサイト
シーイングで来た人の感懐を誘う。
何も置かれてないような気分にさせるのが
優れた展示の光景。いかに何もしないか。
設定したものが何かの空間を詐欺。
何かをしに来たとするなら何もしない事で
返答。来たことに意味があるなら意味のない事が正しい在り方。
如何に言ってもそうするしかない。
何もしたくないのではない。
影響力が強い程手に余る。
何も出来ない事には何も起こらないから
明くる日の夜明けが一番いい時間設定。
そういう設定で絵を見る事はできないから、
とても素晴らしいものが何も見えないのが
いい展示。それ以外のものは駄目。
止まった時間設定ではいつでも素晴らしい、
という設定。それがオブジェクト。

外は夏だが、例年以上に暑い。
カラカラに乾いた喉にレモンスカッシュ。
クーラーの効いた部屋。
日差しに天気がお願いしたい。

寺院は明日の夜明けには、落ちる。
一番素晴らしい時間帯に。
この世に存在した事に換えて。
何が起きたかは分からないが、スイッチは
いつでも隣にある部屋に行くだけ。
この世界が隣の部屋に行く時に、
5秒間。隣の部屋の声は聞こえたり
聞こえなかったり。
でも何キロも離れてるところに行く為に
一個づつ移動する。
その5秒間に何が起きたかを知る事はないが、
わかる事はできる。


続く

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