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「ああ、還付金返ってきた。これだけが年末の楽しみだよなあ」
「へえ、還付金っていくらもらえるんですか」
「いくらもらえるって、かけてる保険の口数に応じてもらえるもんなんだよ、てか君ももらってるだろ、保険かけてりゃ」
「いや、僕、保険かけてないから還付金とかもらったことないですね」
「ええ、君、保険かけてないの?ダメだよ、しかも君結婚してたよね、さすがにそれで保険泣けてないのはまずいよね」
「マズイですか?だって、なくても困らないですよ」
「いや、だから君が死んだら家族が困るじゃない。君の収入が無くなったら、保険金がないじゃあどうすんの」
「そもそも、うちの奥さんとは共働きだから、お互い収入と貯蓄があるから、僕が死んでも彼女は普通に自分の収入で生活できますし。僕より給料がいいんですよ」
「あ、それはそうかもしれないけど。いや、でも子どもさんいたら、そこ変わるでしょ」
「子どもは作る予定はないですね」
「いやでも、今はでしょ。また気が変わるかもしれないよ」
「彼女のキャリアを考えてそれもないですね」
「ええー、まあそういうのもあるのかな」
「たぶんですけど、僕とか、保険会社のモデルケースにはまらないんです」
「モデルケース?」
「主任みたいに家族の大黒柱で、子どもさんもいて、奥さん専業主婦で、確かに主任に何かあった時の保障は絶対に必要だよね、って事でいっぱい保険をかけられると思うんですよね、保険会社の一番求めてるモデルケースだから」
「確かに。それで君はそれにハマっていないってことか」
「そうなんです。僕より妻の方が稼ぎが良くて、子どももいないんだったら、保険かけら必要のない人間だということなんで。僕もそれがわかっているから保険はかけてないし、保険屋さんに実情を話すとこいつは違うなって感じで営業もされないです」
「そりゃそうだろうなあ。じゃあオレみたいなモデルケースは」
「保険会社の一番の好物ですね。完璧ハマってますから。抜け出せないでしょう」
「うーん、確かに毎月の保険料は結構キツイんだよなあ。子どもとかの関係でこの保証も必要、あれも必要ってなって」
「でしょうね。保険貧乏ってやつですね。言い方悪いですけど、たぶんこのままだと保険会社に搾取されるだけの養分ですよ」
「どうしたらいいんだろうか」
「本当に自分の頭で考えて、いらないものは解約することですね」
「それができないから、苦労してるんじゃないか…」

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