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「まだ旅は続けてるの?」
「うーうん、今は一箇所に落ち着いてるの。もうね、上からすると、たぶん私は「その他」扱いになっちゃったのね。今は結婚して、子供もいるから」
「そっか、それはもう仕方ないよね」
「普通の主婦になるんだったら、お役目はもうできないなって。そんなの当たり前よね、世界中またにかけて祈りの旅を続けようってのに、子どもがお腹すかせてるかもって思ったら、気が気じゃないんだもん。あの子にご飯作るために、家に帰らなきゃって。子どもの泣いている声聞くだけで、母親ってそういう風に脳が切り替わっちゃうんだって」
「うん」
「そうしたら、自然と本流っていうか大きな流れみたいなものから外れていって。上から世界を眺められることもなくなっちゃって、前は自然にできてたんだけどね。だから、光の柱の立てるべき場所もわからなくなっちゃった。でも、子どものためだったら、仕方ないなって思った。間違いなく自分の意思もあったの。自分の中で、どっちを優先するのか、何を大事にするのかって、生きていくうちに変わっていくもんだから」
「ふふ、君が肝っ玉お母さんになるなんて、あの時は想像しなかったけど、もしかしたら、結構似合うかもね」
「そうよ、ホント。私は私で今の自分、性に合ってるのかもしれない。もう毎日、子どもと格闘してるからね。でもそこはお役目と似てるとこあるのよ、全部、感性で動くのは子育てとお役目も一緒」
「そっかあ、すごいね。」
「あと、これが正解っていうものがないのも、一緒かな」
「たぶんそれはいつでも、そうだよね。生きている間は」

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