1280_外の景色
仕事の憂さや日々の人間関係の煩わしさにとらわれて、心の中がドヨーンとした時には、ぼんやりと窓から見える外の景色を眺めてみよう。
昨晩からどこか気持ちが湿っている。思い返せば、原因として考えられるのが、夕方に職場で受けた母からの電話がそれだった。
かろうじて退院した叔母の調子がまだ優れないらしい。心配そうな母の声の調子で、自分の中のシンパシーのような感情が反応する。
母は始終、他人の心配ばかりしている。死んだ父の時を思いださざるを得ない。母の重く暗い感情に絡め取られるような気がして、家に帰る足取りも重たくなった。そんな気持ちを抱えたまま、朝を迎えた。
気付けば、まだ照る日差しに暑さが残っているものの、遅い秋の訪れによって、木々の葉も徐々に色づき始めている。
コーヒーでも飲みながら、張り詰めた冷たい朝の空気と木々のコントラストを眺めて、こんな静けさを感じることが今の自分には一番必要なことだった。
切り替えていこう。まだ何も決まっちゃいない、これからも人生は続くのだし。何かあれば、妻に相談しよう。(妻本人はいたって共感力のない人間だが)いつだって、妻は僕の頼りの綱だった。そんなことをぼんやり考えていると、朝のジョギングを終えた妻が家のドアを開ける。