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妖狩りの侍と魔剣『斬妖丸』 : 「未知なる者再び… (参)" 無情の赤い光 "」

拙者は銀色の円盤に迫った

時雨丸しぐれまる』の噴き出す霧をびながら
拙者は円盤を眼前にして立ち止まった

村人達がこの中に…
しかし、どうやって助け出す…?
ヤツ等が簡単に村人達を開放するとは…

「そうだ!」
拙者の頭に考えがひらめいた…

拙者は円盤の外に出ていた
二体の歩哨ほしょうを捜した

いた!
まだ走り回る『火車かしゃ』の動きを追い
銀色の短筒たんづつを撃っておる…
あやつらを…

拙者は『時雨丸』の『霧がくれ』を解き
我が身をおおっていた霧を払った
そして、一体の歩哨めがけて駆け出し
三丈余りの距離(約9m)を一気に跳躍ちょうやくした

拙者はその者が『火車』に向けて構えた短筒たんづつ
拙者に向けられるのを見た…

「遅いわっ!」

拙者は自分に向けられし短筒が発射されるより早く
跳躍から着地すると同時に
『時雨丸』の峰打みねうちにて手から短筒を叩き落した
そして、その者の背後に立ち
首すじに『時雨丸』のやいばを押し当てた

「動くな… 斬るぞ」

たして言葉が通じるか不明だが
拙者は生物相手になら全てに通じるであろう
強い殺気を込めて告げた
もっとも拙者は
九割以上本気で殺すつもりであったが…

相手は理解したのであろう
ぐったりとした様に
抵抗する事は無かった…

向こうでは変わらず
もう一体の歩哨が走り回る『火車』を撃っていた
拙者はらえた歩哨の首すじに
『時雨丸』の刃を押し付ける手に力を込め
左手で戦闘を続ける仲間の歩哨を指さして言った

めさせろ…」

通じたのか拙者の捕らえし者が何かを叫んだ
拙者には何を言っているのか
さっぱり分からなかったが…

だが…
『火車』と戦闘していた歩哨が攻撃を止めた
その歩哨が拙者達の方を見て
手に持った武器を捨てた
物分かりが良いのに拙者は少し力を抜く

次の瞬間だった…

赤くまぶしい光の線が
武器を捨てた歩哨の胸をつらぬいた!
何だ…?
歩哨は立っていた場所から後方へ吹っ飛んだ
そして地面に転がり止まった
やつは二度と立ち上がらない…

拙者の腕に捕らわれていた歩哨が
何か大声で叫んだ
そして拙者の腕を振りほどき
倒れた歩哨に駆け寄った

拙者の腕を逃れた歩哨がひざまず
仲間を抱き起そうとした

拙者の見ている前で
赤い光の線が
今度は跪く歩哨の頭を貫いた
歩哨は仲間の上に折り重なるように倒れた

「『火車』! 逃げろっ! 戻れえ!」

それまで駆け回っていた『火車』が
ジグザグに走りながら
何度も間一髪で赤い光の線をかわ
拙者の方へ無事駆け戻って来た
『火車』は『斬妖丸ざんようまる』に吸い込まれた

水竜すいりゅううーっ!」

拙者は抜き放った『時雨丸』の切っ先を
頭上高くかかげて叫んだ
『時雨丸』からおびただしい量の水が空に向けてほとばし
「キシャーッ!」
水の竜がすさまじい雄叫おたけびを上げながら
拙者の頭上に出現した

またしても銀色の円盤から
赤い光の線が拙者に向けて放射された
しかし、拙者の頭上でうずを巻き
水竜巻みずたつまきと化した水竜が赤い光の線をさえぎった
光の線は水竜巻を通り抜ける際に角度が変わり
拙者の位置とはあらぬ方向へと向きを変え
地面に深く穴を開けた

「水竜が光の線の向きを変えたのか…?
よくやってくれた…」

しかし、何という無情さよ…
彼奴等きゃつらは仲間を二人も殺しおった…

村人達を早く救わねば…


※【(肆)に続く…】

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