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『シモーヌ』VOL.2 特集「メアリー・カサット:女性であり、画家であること」

 19世紀後半から20世紀初頭にかけて活躍したアメリカ人画家メアリー・カサット(1844-1926年)。女性が画家として身を立てることが困難であった時代に、カサットはアメリカからフランスへ渡り、印象派の画家として成功をおさめた。画家として経済的に自立することを目指したカサットは、生涯独身をつらぬき画業に専念。アメリカの美術収集家たちのアドバイザーとしても活躍し、アメリカに印象派絵画を紹介した功績でも評価されている。
 また、そうした収集家のひとりで、友人でもあったルイジーヌ・ハヴマイヤーが取り組んでいた女性参政権運動を支持するなど、フェミニストとしての一面もあった。
 1970年代以降、フェミニズムの美術史が理論化されていく中で、その作品はさまざまに論じられ、芸術という制度の中での女性について考える上で、欠くことのできない画家のひとりとなった。

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メアリー・カサット 《青い肘掛け椅子の少女》1878
油彩、カンヴァス 89.5×129.8cm ワシントン・ナショナルギャラリー



 アメリカの美術史家リンダ・ノックリンが「なぜ女性の大芸術家は現れないのか?」という論文を発表してから来年で半世紀が経とうとしている。カサットが没してからも90年以上の時が経った。
 この間、芸術分野での男女平等は実現されたのだろうか。
 女子の美学生には男子の美学生と同じチャンスがほんとうに与えられているだろうか。
 女性の美術史家は、男性の美術史家と同じように評価され、同じような就職の機会をほんとうに得られているのだろうか。
 展覧会に出品するアーティストや美術館に収蔵される作品には男女の偏りがないだろうか。
 女性アーティストの作品が、「女性ならではの感性」などと短絡的に評価されることはもうなくなっただろうか。
 メアリー・カサットについて考えることは、これらすべての今日でもアクチュアルな問題について考えることとつながっている。

テキスト:相川千尋

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新聞を読むカサット(テオデード・ポープ撮影) 1903年

雑誌感覚で読めるフェミニズム入門ブック『シモーヌ』VOL.2

特集:メアリー・カサット――女性であり、画家であること
・和田彩花「une《femme》peintre et une idole――“女性"画家とアイドルが表現すること」 聞き手 沼田英子(横浜美術館主席学芸員)
・沼田英子「画家メアリー・カサット――人生と作品」
・坂上桂子「メアリー・カサットにみる 新しい女性イメージの創造」
・味岡京子「一九世紀末の《モダン・ウーマン》が未来に繋ごうとしたこととは――メアリー・カサット、シカゴ万博「女性館」壁画」
・小林美香「メアリー・カサットの時代と写真」
・カサット・ストーリー

エッセイ寄稿
・木下千花「私(たち)はなぜストリッパー映画に魅せられるのか」
・太田啓子「揶揄、嘲笑を怖れない」
・相川千尋「ロッキングチェア・フェミニスト」
・大友良英「ジェイミー・ブランチのこと」
・鈴木みのり「みんなの憧れや恋愛観の器になるアイドルについて」
・永田千奈「女と学校」
・荒井裕樹「押し込められた声を「聞く」ことができるか」
・伊是名夏子「ペーパー離婚せざるをえなかった私」
・みっつん「日本とスウェーデンの時差は50年」
・玖保樹鈴「女性議員が増えることは、政治の質を変えること――打越さく良参議院議員インタビュー」

連載
・インベカヲリ★ 巻頭グラビア「Renaître――女は生まれなおしている」
・高島鈴「シスター、狂っているのか」
・栗田隆子「手さぐりフェミニズム入門」
・アトランさやか「パリのシモーヌたち」
・二三川練「ふみがわのフェミ短歌塾」
・小野春「女同士で子育てしたら」
・江戸川ずるこ「ずるこのおんな食べ物帖」
・なとせさん&万次郎「SAW & LAW 往復書簡」
・猫がいるカフェでフェミニズムを研究する会 #猫研
・シモーヌ シネマレヴュー(石川優実『/金子文子と朴烈』)
・書店からはじまるフェミニズム(大塚真祐子/三省堂書店成城店)

表紙・小

雑誌感覚で読めるフェミニズム入門ブック『シモーヌ』VOL.2
シモーヌ編集部 編 A5判 並製 132ページ 
定価1300円+税 ISBN978-4-7684-9102-7
全国の書店で好評発売中です!


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