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【新刊紹介】高木亮 著『きりえや偽本大全』

『罪と』が『罪と』、『人間失格』が『人間ひっかく』に。
名だたる文学作品のタイトルをもじり、そこから連想される切り絵と架空のあらすじを付したブックカバー、「偽本」。
その「偽本」が、一冊の本になりました。

「空腹から大家の飼う豚を殺し入獄した苦学生イワーヌシュカは……」(『罪と獏』より)

そんなもっともらしい噓がぎゅうぎゅうに詰め込まれたブックカバーに目を奪われたのは、ちょうど去年の今頃、ジュンク堂池袋本店でおこなわれていた個展「きりえや真夏の偽本まつり2020~パロディブックカバー大集合」でのことでした。
クリアファイルに収められ、ずらりと並んだブックカバーは実に壮観。

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(ジュンク堂池袋本店「きりえや夏の偽本まつり2021」より)

全部ほしいっ!

けれど……。1枚165円とはいえ、すべて揃えると途方もない金額。
それに、せっかく手元に置くなら元ネタも知りたいところ。
長靴をかいだ猫』のようにパッと見で元ネタがわかる作品もあるものの、『アーム状』や『ゴーヤいじり』なんて見当もつかない作品もたくさんあるのです(ちなみに『レ・ミゼラブル(あゝ無情)』と『高野聖』)。

泣く泣くブックカバーを厳選しながら「これが一冊の本になったらいいのに」と著者の高木亮さんにこぼしたところ、「僕もそう思っているんですけどねえ」とのお返事。
かくして、『きりえや偽本大全――名作文学パロディの世界』の制作が始まりました。


掲載作品の厳選に始まり、脚注・元ネタとなる原作紹介文・コラムの書(描)き下ろし、切り下ろし、架空の書評や読者アンケートの協力依頼。
それから、各版元さんへの書影画像許可依頼。

ちょっとおかしなブックガイドとして楽しんでもらえるように、そして元々のブックカバーファンにも満足していただけるように、あらゆる要素をこれでもかと盛り込みました。

掲載作品は、全部で80作品。
気がつけば読みごたえ十分な一冊となっておりました。

目次1

目次2

(↑ 目次)
中身も少しだけご紹介します。

罪と獏

アンナ、カレーにな…

(↑ 本文ページ:『罪と獏』、『アンナ、カレーにな…』)

原作紹介

(↑ 原作本紹介)

一見ふざけた本ではありますが、本書を通して名作文学に親しむ方が一人でも増えることを願って、大真面目に作りました。
ぜひ、元ネタの名作を知っている方にも、これから読もうと思っている方にも、はたまた「そんな機会あるかしら?」と思っている方にも、お手に取っていただけたら幸いでございます。

ただいま刊行記念イベントとして、ジュンク堂池袋本店(8月4日~9月5日)と、オリオン書房ルミネ立川店(8月9日~9月末予定)にて「きりえや偽本まつり」も開催中です。
よろしければそちらも併せてお楽しみください。詳しくは下記URLより。


以下、著者の高木亮さんからのメッセージです。

*  *  *

偽本シリーズ文学編がようやく一冊の本となりました。
長らく作り続け、やめられないのでライフワークのようになってしまっていた(笑)シリーズです。

担当さんが言うようにバラで揃えるには大変な量があり、他のファンの方からもまとめてほしいという声は多く頂いていました。
今回やっとその機会が得られたわけですが、実際の制作にあたりまず考えたことは、「漫然とただまとめるのではなく、過去に作った作品一つひとつともう一度ちゃんと向き合いたい」ということでした。
一つひとつの作品を生み出したときの、何かよくわからないもの(大ぼら)が自分の中から飛び出してくるワクワクする感覚を、本を作る際にも味わいながらやりたい――その楽しさはきっと読者にも伝わるはず、と思ったのです。
それで見開きの作品紹介ページすべてに書き下ろしの脚注コラムをつけることにしたのですが、160本はなかなかの分量で、さりとて自分で決めたため泣き言も吐けず、コラムを上げるため約3ヶ月間ずっと嘘をつき続けなければならないという、楽しくも苦しい充実した毎日を過ごすことができました(笑)。

執筆終了後も、あまり前例のない本だったためか、印刷入稿直前まで面白いほど山あり谷ありで、その度何度も出せるかなと不安になり、「やるからには納得した形で出したいよね!」と担当さんとお互い意思を確認し合いながら、やっと皆さんにお届けできるところまでたどり着くことができました。応援してくださっていた皆さんも含め、関わった全ての方に感謝です。

世の中にウソのようなことばかりがあふれるようになった、今このタイミングで本が出せたことに意味があると信じます。こっそりまぎれて怒られないとかじゃなくて。
噓は噓、ホラはホラとして、いつ開いても安心して笑ってもらえる。みなさんにとってそんな本になれたら嬉しいです。

きりえや高木亮

*  *  *

本書はお近くの書店様、または下記のURLよりお求めいただけます。

初版特典には、なんと『長靴をかいだ猫』のポストカード付き!

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著者のホームページは下記になります。偽本ブックカバー等のグッズはこちらからお求めいただけます。


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