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さ…る…と…か…に…

初めて一人で読めるようになった絵本は、『さるとかに』だった。もちろん音読だったが、よほど嬉しかったのか、幼い私は、

さ…る…と…か…に…

などと、一字一字を拾い上げながら声に出し、親や、親戚や、来客に"読み聞かせ"をしたものだ。

親も、親戚も、来客も、「すごい、すごい」「ご本を読めてえらいねぇ!」と褒めてくれた。

黙読、ということを意識したのは、小学校一年生のときだ。家に遊びに来ていた同級生が、古田足日『大きい1年生と小さな2年生』を、声を出さずに読み耽っていた。それを見た私の親が、一緒に来ていたその子の親に向け、「〇〇ちゃん、すごいねぇ!」と驚いたのだった。

私は悔しかった。

だから、偕成社『ファーブルこんちゅう記』を、声を出さずに読み切った。確か、カマキリの回か、ふんころがしの回だったと思う。

親は、とても喜んでいた。私も、誇らしかった。

こんな思い出があるからだろう──私は今でも、本を読み終えると、読み終えた私のことを「偉いね」と、つい心の中で褒めてしまう。

私は、読書というものと、とても幸せな出会い方をしたのだと思う。なぜなら、これから先どんなことがあったって、私は本を読むだけで、自分を肯定することができるだろうから。


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『14歳からの文章術』(笠間書院)

私の、一般書のデビュー作です。大学時代の国語科教育法のご講義で、市毛勝雄先生に鍛えていただいた〈論理的な文章〉の書き方──それを土台に、その後の私なりの経験や勉強も踏まえてしたためました。現在【3刷】です。会話や実例、添削例などを通じ、楽しく読めるように書いています。あの『独学大全』読書猿さまから、ご推薦のお言葉も頂戴しました。

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