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結果的に架空の芸人の架空の単独ライブのレポートになった

出囃子っていいよなあ〜。つまりは自分のテーマソングってことでしょ?自分の好きな曲(とは限らないようだけど)が自分の代名詞になるということだもんね。いいなあ。羨ましいなあ。
ピース又吉さんのやられてるpodcast『又吉直樹の芸人と出囃子』を聴きながらそんなことを考えた。

小学生の頃、お笑いが好きすぎて「お笑い評論家になりたい」などと血迷ったことを言っていた時もあったんだけど(そんな職業はあるのか?)、自らがお笑い芸人さんになりたいと思ったことは不思議と一度もない。芸人さんに対するリスペクト×自己評価の低さからくる「自分ができるわけない」的マインドの合わせ技によるものか?もしくは、そもそも生来の人前に出ることが好きではない性格によるものか。いずれにせよ私がこの先芸人さんになって出囃子を持たせてもらえることは、おそらくないのだけども。
でも、考えてみるだけならできるか!と思い立ち、やってみると楽しくなってノってきてしまったので、noteに書き留めてみる。

まず結論から言うと、基本の出囃子は藤井隆さんの『I just want to hold you』に決定しました!(拍手)
私は好きなミュージシャンを訊ねられたらいの一番に藤井隆さんを挙げるので、そんなわけで絶対出囃子も藤井隆さんの曲がいい!と思ったわけです。私が地球上で最も好きな曲は藤井隆さんの『わたしの青い空』なのですが、漫才出番の時の出囃子としては不穏すぎるかもと思って他の曲から選ぶことに。
出囃子、好きな曲から選ぶにしても、ただ一番好きってだけで決められるわけじゃないんだなということがわかりました。これからネタするぞー!というテンションになれる必要もあるし、そして何より曲全体というよりもむしろイントロが印象的で出囃子に向いてるかどうかがかなり重要なんだなと。
『I just want to hold you』、作詞作曲プロデュースコーラス、松田聖子氏。やっぱすごいなあ〜!と言わざるを得ない。コーラスも藤井隆さんの声とマッチする透明度、流石です。心地の良いダンサブルさと、心の奥の方がモゾっとするメランコリーさノスタルジックさ。子供の頃に高熱を出してうなされながら見た夢みたいな、居心地の悪さとふわふわして気持ちいいのとが共存してる感じがする。MVがサンリオの映画『くるみ割り人形』というのも最強。つよすぎ。

で、出囃子は決定したわけですが他の候補曲たちも大好きで、選べなかったのが惜しいので、コント単独のネタ毎の幕間曲?転換曲?としてなら合うかも!と思い、架空のコンビの架空の単独ライブについて考えてみることにしました。こっから先、全部私の妄想です。ない話をあることのように長々と話してます。要注意です。

せっかくなのでコンビの詳細から詰めていきたい。コンビ名は『リンゼン』にしようかな。ドイツ語。
多分現在芸歴7年目くらいのコントメインのコンビで、二人の出会いは養成所。お互いバナナマンさんに憧れて業界に入ったためネタ中にも多分にその影響のエッセンスが見てとれる。ツッコミ担当佐崎が思いつきで口にするワードや設定をボケ担当タバタがどうにかまとめて一本のネタに仕上げるというスタイルでネタ作りをしている。
コントでは、セリフ中の言葉遊びや独特の言い回し、どんでん返しの展開に定評がある。漫才をする時はたいてい「いっぺんここで試してみていい?」から始まるコント漫才や、普段何気なく使っているがよく考えるとどんな語源やねんというようなひっかかりのある言葉について空想を広げていくネタが多い。
立ち位置上手側ボケ担当のタバタ(タバタは中学時代からのあだ名であり芸名、理由は顔がタバタっぽいため)の苗字が珍しいというつかみから始まることが多い。「日本にうちの一族しかいない苗字で、高齢化が進み人口は減る一方。自分が結婚して子供が生まれでもしない限り滅びる運命」と語るも、本名は非公開。
立ち位置下手側ツッコミ担当の佐崎は幼少期から10代までをスイスで過ごしており、公用語であるドイツ語とフランス語が話せる。stand.fmで配信している音声コンテンツでは、冒頭で毎回佐崎による「外国の架空のことわざ」を紹介するコーナーがある。由来や歴史的背景を数分間話したのち、「まあ全部嘘なんですけど…」「何の時間やってん」というやりとりからタイトルコールの流れがお決まりになっている。まれに国名から架空のケースもあるが、タバタが地理に疎すぎるため気付かずその回が終わることもままある。配信後Twitterなどの視聴者の感想でやっと気付くらしい。

……しまった、架空のコンビを考えるの楽しくて盛り上がってしまった。単独ライブの幕間曲の話に戻らねば。

リンゼンの単独ライブ『斜めの正面』は、2023年6月29日に中野の劇場であるシアター・セルベサにて行われた。事務所の所有している劇場でなく敢えて小劇場を借りてライブを行うのもバナナマンへの憧れによるもの。
セットはほぼ使わず、何も使用しないかパイプ椅子のみというネタがほとんどだが、その分衣装にはとことんこだわりお金もかけている。タバタは養成所に入る前に服飾の専門学校に通っていた経歴があり、自身で衣装のデザインをすることもある。佐崎はテキスタイルに興味があり個人的に趣味でフラッと布の買い付けに行くことがあるため、自宅が使い道のない生地や布の原反で溢れている。単独の衣装で使用されれば費用で下りるかもしれないという目論見からレシートは全て残してあるものの、柄や色が奇抜すぎて実際に使われることは多くはない。

単独コントライブ『斜めの正面』

オープニング曲: It Runs Through Me / Tom Misch
日曜日の朝9時って感じの曲で、豆にこだわった珈琲飲みながら窓際で外の空気を吸いたくなる曲。ベースの入ってくるタイミングが気持ち良すぎる。仕事しながら聴くのに最適。

1ネタ目『お前の姉ちゃん見たよ』
久しぶりに地元に帰った佐崎は、小学校の同級生だったタバタに遭遇する。「そういえば、こないだお前の姉ちゃん見たよ。姉ちゃんもこっち帰って来てんの?」とタバタから言われた佐崎は、自分は一人っ子だと主張する。そんなわけはない、昔家に遊びに行った時一緒にテレビゲームをしたこともあるとなおもタバタは反論するが、「自分の頭の中で考えてたイマジナリー姉ちゃん、タバタにも見えてたの?」と佐崎が言い出して……

→幕間曲: Loretta / Ginger Root
めちゃくちゃポップでキュートな曲。初めて聴いた時、一音目から好き!ってなりました。ボーカルの脱力感のある爽やかな声が耳に気持ちいい。通勤時に聴くと朝の憂鬱さが和らぐ曲。なんとなく80〜90年代のアニメっぽさがある。

……大丈夫?みんなついて来れてる?気分悪くなったらすぐ途中退室してくれていいからね。こういうテンションのままあと数ネタ分いくからね?

2ネタ目『ココナッツ』
バカンスで南国にやってきたタバタと佐崎。ココナッツジュースを飲みたいと言う佐崎に、「向こうにヤシの木生えてたからとってくるよ」と答えるタバタ。「目の前に屋台もあるけど?」と困惑しながら返すも、「そんなの偽物だろ。せっかく来たんだから本物を味わわなきゃ」と言うタバタ。「もしかして電子レンジで調理した食べ物反対派の人?」という佐崎の一言から、店で買うよう説得を試みる佐崎とあくまでヤシの木からもごうとするタバタの攻防は思わぬ方向に進んでいく……

→幕間曲: Paradise / Sade
ボーカルのスモーキーで妖艶な歌声が渋いサウンドにマッチして、酔っ払ってる時に聴いたら踊り出してしまうこと必至。絶対に夕方以降、できれば金曜日の退勤後にお酒の缶片手に聴きたい曲。

3ネタ目『FoMO』
「おれハム太郎かもしれん…」という某ネットの匿名掲示板のスレッドタイトルを巡るストーリー。横並びのパイプ椅子に座ってはいるが、あくまで各々離れた自室におり二人の会話はネットを介したテキストによるコミュニケーションという設定で、FoMO(Fear of Missing Out)をテーマに「あの頃の」インターネットを懐かしむインターネット老人会必見のコント。

→幕間曲: Amour, Haine & Danger / Angèle
MVとか見るとネットやスマホ依存症の人間的にはギョッと?ゾッと?する曲だけど、歌詞がフランス語なおかげで聴いてるだけでは意味が頭に入って来ないのが救い。まだ明るいうちに浴槽にいつもよりぬるめのお湯をためて、新しく買ったバスソルトを入れて浸かりながら聴きたい曲。

4ネタ目『親の心子知らず』
父親役のタバタのみ板付で始まり、新聞を読むマイムをしながらの独白で進行していく。近頃、子供の様子がおかしい。どうやら、自分に隠し事をしているようだ。本人は普通に振る舞っているつもりだろうし、周りの誰もそれに気付いてはいないだろう。思春期真っ盛りだから、親に隠したいことの一つや二つはあるのが当然だろうが、どうもそれが何やら後ろめたいことらしいのが問題だ。
と、そこへ子供が学校から帰って来る。会話をし始めたようだということがタバタの目線やセリフからわかるが、あくまで舞台上にはタバタ一人しかいない。タバタの返答から穴埋め形式で推測される会話は脈絡の読めないもので、観あまりの突拍子のなさに何の話をしているのか分からず客席からは笑い声が。

暗転し、明転すると次は子供役の佐崎のみ舞台上に立っている。学校から帰宅し、目線の先にいるという設定の父親と会話をする。先ほど父親がしていた会話の子供視点でやりとりが完成していき、観客は暗転前に自分たちが目にしていた父親が「信頼できない語り手」であったことに気付く。

→幕間曲: わたしの青い空 / 藤井隆
名曲。曲も詞も歌も声もダンスもMVも、全てにおいてあまりにも極まっている。インフルエンザにかかってランダムで音楽を流していた時にこの曲が流れて来たことが私とミュージシャン・藤井隆との出会い。高熱にうなされながら聴いたというはじめましてのシチュエーションまで含めて、あまりに衝撃的だった。とにかく、とにかく聴いてほしい。
MVに出てくるシャツがどれもオシャレ。もしや私の柄シャツ好きはここから来てるのか……?

5ネタ目『斜めの正面』
二人は高校生の設定で、制服を着ている。「付き合ってほしい」と告白をする佐崎に対し、「なんで?」と答えるタバタ。タバタは、自分には恋愛感情がないため付き合うということがよくわからないと言う。佐崎はなぜ友達ではなく恋人になりたいのかを、独占したい、特別になりたい、などとそれらしい理由を並べて説明するも「それ、超一番特別仲良しの友達でもよくない?」と続けるタバタに、佐崎は……

→幕間曲: killer tune kills me / KIRINJI
これは夜の高速を走る車内か、都会を一望できる部屋で電気を消して聴きたい曲ですよねえ。明日早起きしなきゃなのにな、と思いながら夜更かししてる時のお供にバッチリ。これにハマってこれしか聴いてない時期に当時リアコしてた推しが(参考: https://note.com/genaudas/n/na64caefeb6ba)ラジオでこの曲をかけててめちゃくちゃテンション上がった思い出もある。Good bye my love……

6ネタ目『500ml缶』
500ml缶のビールは後半苦行に変わる、飲み干すまでの時間が無限に感じるくらいかかる、というタバタの一言から始まる。500ml缶を開けてから飲み干すまでの時間で二人の会話、立場、言い分、関係が目まぐるしく変わり、飲み干す頃には予想もつかない結末に……

劇場ロビーにて販売されたグッズは、協賛でもある某大手ビールメーカーとのタイアップ商品で、本ライブ限定デザインパッケージのビール500ml缶(通常版・ノンアル版)、見た目は500ml缶そっくりなデザインの砂時計(リンゼンの二人が実際に一本飲み干すまでの時間を計測した計10回分の平均タイムが測れるもの)の三種類のみという攻めたラインナップ。
二人がコント中に実際に飲んでいるのもこの通常版で、しっかりアルコールが入っている。終盤タバタの滑舌に危うい部分が見られるのも、佐崎が楽しくなってアドリブを挟み出すのもこのため。

→エンディング曲: Dasselbe und das Gleiche / ok.danke.tschüss
ピコピコ音とボーカルの少年のようなライトな歌声が不思議なハーモニーを生み出してる、最近お気に入りのバンド。他の曲も全部良いので是非みなさん聴いてみてください。

ちなみに開演前と閉園後は会場に普段の出囃子でもある藤井隆さんのI just want to hold youが流れています。

あ〜〜、たのしかった。なんだこの遊び??架空のコンビの架空の単独ライブを考えるの、めちゃくちゃ楽しいな!!

ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
今回挙げた曲のプレイリスト載っけときます。

https://open.spotify.com/playlist/3m1YmhXDQYl1OIbnunoYU8?si=Yj6z0qLnQpauRZs-PdCHOw

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