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Untitled Fantasy(仮題) 破9

登場人物

マーティ・ハガード(18) 便利屋、元孤児
セレナ・ウィリアムズ(18) ウィリアムズ王国現第二王女
ジョニー・ダグラス(18) 薬剤師、元孤児
エマ・クラーク(17) 機織り、元孤児

グレアム(283) 天界の若手官僚
アコーマン(?) 魔族の将、マーティとセレナに敗れ死亡。

初回

前回

本文

〇砦内の部屋

マーティ、セレナ、ジョニー、エマ、グレアム、南東砦の小隊長がいる。

セレナ「では、攻撃に割く予定だった部隊も防衛に回しなさい。今夜到着する援軍もすべてです。収容しきれていない民の移送も、体力のある者から順に可及的速やかに進めなさい」
南東砦の小隊長「本当に加勢は必要ないのでしょうか?」
セレナ「またアコーマンのような敵が攻めてきたとき、民を守るにはそれ相応の戦力が必要です」
南東砦の小隊長「しかし……」
グレアム「心配は無用だ。王女殿下も他の三人も俺が才能を引き出した。下手に軍隊を引き連れていったら巻き添えを気にして全力を出せないだろう」
セレナ「大丈夫よ。私たちが魔族を追い返すから、あなたたちはここで待っていて」
南東砦の小隊長「……誠に不甲斐なく、申し訳ない限りです」

南東砦の小隊長、悔しそうな顔で俯く。

セレナ「不甲斐なくなんかないわ。あなたたちの仕事は国を守り、民を守ることでしょう? これも立派な仕事よ。誇りを持って」
南東砦の小隊長「殿下……。仰る通りです。我々は我々の職務を全ういたします」
セレナ「ええ、そうしてちょうだい」

脇で見ているマーティとジョニー、笑みを浮かべる。

グレアム「話はまとまったな。ジョニー、エマ、お前たちはいけそうか?」
ジョニー「はい。魔力が大幅に上がったようなので、僕は大丈夫です。ただ……」

ジョニー、エマの方を見る。

エマ「あたしは、その……」
マーティ「エマ、やっぱりお前はここで待ってたほうがいいんじゃないか?」
エマ「それは嫌! あたしもマーティについて行く!」

マーティ、困った顔をする。

マーティ「グレアム、エマの能力が何なのかわからないのか? 俺たちの素性は事細かに調べ上げてんだろ?」
グレアム「おいおい、無茶言うなよ。そう簡単に人の能力がわかるならこの世は天才で溢れかえってるぞ」
マーティ「なんだよ。ったく、肝心なところで役に立たねぇな」
グレアム「悪かったな。まあ戦いに加われば嫌でも力を発揮するさ。それまで後ろについていればいい」
エマ「マーティ、あたしは大丈夫だから、お願い。セレ……王女殿下も、お願いします!」
セレナ「ええ、いいわ。あなたの隠された能力に期待します」
エマ「ありがとうございます!」

マーティ、頭を搔く。
ジョニー、それを見てくすりと笑う。

ジョニー「まあエマが危なくなったらマーティが守ればいいよね」
マーティ「ジョニー、お前テキトー言いやがって。わかったよ。エマ、一緒に行こう」
エマ「うん! ありがとう、マーティ!」
グレアム「話がまとまったなら善は急げだ。敵に感付かれる前にできるだけ戦線を上げるんだ」
セレナ「わかったわ。みんな、行きましょう!」
マーティ、ジョニー、エマ「「おう!」」

 *   *   *


〇砦の門の外

マーティ、セレナ、ジョニー、エマ、グレアム、門の外に立っている。
セレナは軽装、マーティは重装の鎧に着替え終えている。

門が閉じられる。
城壁の上に砦の小隊長がいる。

南東砦の小隊長「殿下! ご武運を!」

セレナ、手を上げて応える。

グレアム「さて、それじゃあ行くか」

グレアム、王都の方角を向き、何かに気付く。

グレアム「どうやらアコーマンはあまり信用されていないようだな。見ろ、もう援軍が向かって来てるぞ」

遠くから敵軍が南東砦に向かって走って来るのが見える。

セレナ「ゆっくりしていられないみたいね。急ぎましょう!」
マーティ「おう! 行くぜ、ジョニー、エマ、グレアム!」
ジョニー「ああ、行こう!」
エマ「うん!」
グレアム「俺は後方支援に回る。お前たちは安心して前に進め」

セレナたち五人、敵軍に向かって走り出す。

 *   *   *

敵軍の近くまで来る。
王都にいたのと同系の有翼の魔物と、その他、獣類の魔物が多数いる。

セレナ「グレアム、敵将はどこ!?」
グレアム「さあな、俺にもわからん。雑魚を蹴散らして引きずり出すしかないな」
マーティ「なら話は早いぜ! セレナ、突っ込むぞ!」
セレナ「ええ、行きましょう! ジョニーは討ち漏らした敵を片付けて!」
ジョニー「まかせといて!」
セレナ「エマは何かできないか試して! グレアムはエマを守る! いいわね!?」
エマ「うん、わかった!」
グレアム「承知した」

マーティ、陸の魔物を大剣でなぎ倒していく。
セレナ、長剣を振り、空気の刃で陸と空の魔物を斬っていく。

マーティ「今の俺たちならわけないぜ!」

有翼の魔物たち、上昇し、高い位置から尖った氷の弾をマーティたち目掛けて撃つ。

マーティ「なに!?」

マーティ、セレナ、とっさによける。
ジョニー、炎の壁を作り氷を溶かす。
グレアム、光の壁を作り氷を防ぐ。

マーティ「城にいたのとは違うのか!? あんな位置から撃たれたら何もできねぇぞ!」
セレナ「この距離じゃ私の攻撃も届かないわ!」
ジョニー「マーティ、セレナ、僕にまかせろ!」

ジョニー、すばやく詠唱する。

ジョニー「行け! ホーミングファイア!」

ジョニーの手から火の玉が連続で八発発射される。
八つの火の玉は上空の魔物に向かって飛んでいく。
八発すべて命中する。

有翼の魔物たち「「ギイエエエエ!!」」
ジョニー、モノローグ(威力も弾数も予想以上だ。これなら雑魚はすぐに片付けらるな)
マーティ「すごいぞ、ジョニー!」
ジョニー「当然さ! 上空の敵は僕が片付ける! マーティ、セレナ、陸の魔物は頼む!」
マーティ、セレナ「「わかった(わ)!!」」

マーティ、大剣で敵をなぎ倒す。
セレナ、長剣から放つ空気の刃で敵を斬る。
敵の雑兵が次々に倒されていく。

 *   *   *

敵軍の半分ほどが倒れている。

???「全員下がれ!!」

マーティ、セレナ、ジョニー、敵の雑兵が停止する。
敵の群れの中から二本の角が生えた筋骨隆々の魔族の男が現れる。
男は大斧を担いでいる。

マーティ「あいつが魔族の将か!?」
グレアム「そのようだな」
マーティ「よし! なら一発かましてやるぜ!」

マーティ、魔族の将に向かって走り出す。

魔族の将「ほう、威勢がいいな。ならばひとつ小手調べといこう」

魔族の将、大斧を横に振りかぶる。

魔族の将「むん!」

魔族の将、そのままマーティめがけて横なぎに大斧を振る。

マーティ「!?」

マーティ、とっさに大剣で攻撃を受け、そのまま吹っ飛ばされる。

マーティ「ぐわっ!」
セレナ、ジョニー、エマ「「マーティ!」」
魔族の将「ほほう。それだけの大物で瞬時に防御するとは、なかなかの膂力と反応だな」

セレナ、マーティに駆け寄る。

セレナ「マーティ、大丈夫!?」
マーティ「ああ、かすり傷だ。だが、まいったな。アコーマンとは比べ物にならない強さだぜ」

魔族の将、不敵な笑みを浮かべる。

魔族の将「アコーマンは我々の中でも最弱。一緒にしてもらっては困るな」
マーティ「なんだと!?」
魔族の将「我が名はアパオシャ。単純な腕力ならアエーシュマ大隊随一と言われている」
マーティ「そのアエーシュマってのがお前らのボスか?」
アパオシャ「答える必要はない。貴様らはここで倒されるのだからな」
マーティ「ぬかせ!」

マーティ、立ち上がりアパオシャに向かって走り出す。

セレナ「マーティ!」
マーティ「セレナ、ジョニー、援護してくれ!」
セレナ、ジョニー「「わかった(わ)!」」

セレナ、斜め右方向に走る。
ジョニー、斜め左方向に走る。

マーティ「タイミングを合わせろよ!」

セレナ、アパオシャに向かって空気の刃を二発撃ち込む。
ジョニー、大きな火球を1発放つ。
マーティ、空気の刃と火球にタイミングを合わせて大剣を縦に振る。

アパオシャ「無駄無駄!」

アパオシャ、胸郭を大きく上げ、大量の空気を吸い込む。

アパオシャ「カッ!!!」

アパオシャの口から衝撃波が放たれる。
空気の刃と火球がかき消される。
マーティ、後方に吹っ飛ぶ。

マーティ「ぐわっ!!」
セレナ「そんな! 攻撃が通じないなんて!」
ジョニー「くっ! だめかッ……!」
アパオシャ「残念だったな。大方そこの天界人に力を強化してもらったんだろうが、所詮人間は人間。かわいそうだがお前たちの反撃もこれまでだ」

アパオシャ、大斧を振りかぶりマーティに向かって走り出す。

セレナ「マーティ!」
マーティ「来るんじゃねぇ!」

セレナ、立ち止まる。

マーティ「こいつのパワーはお前じゃ受けきれねぇ! 俺が受ける!」
セレナ「そんな!」
ジョニー、モノローグ(万事休すか。あとはエマの能力に賭けるしか……)
ジョニー「エマ、何かないか!?」
エマ「何かって、わかんないよ!」
アパオシャ「大剣の騎士よ、まずは貴様から葬ってやる!」

アパオシャ、マーティに向かって大斧を振る。

エマ「いや! マーティ、死なないで!」

エマを中心に青い波動が広がる。

アパオシャ「何!?」

アパオシャ、後方に吹き飛ばされるも、体勢を整えて着地する。

エマ「え!?」
マーティ「何だ今のは!? あいつだけ吹っ飛んだぞ!?」
セレナ「エマ、やったわ!」
エマ「え? 今のが、あたしの力?」
ジョニー「エマの能力は『声』か!?」
エマ「あたしの能力は、声!?」


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