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Untitled Fantasy(仮題) 破1

登場人物

マーティ・ハガード(18) 便利屋、元孤児
セレナ・ウィリアムズ(18) ウィリアムズ王国現第二王女
ジョニー・ダグラス(18) 薬剤師、元孤児
エマ・クラーク(17) 機織り、元孤児

テイラー(62) 王国の老兵、マーティとセレナの剣術の師
セオドア・ウィリアムズ(28) ウィリアムズ王国現第二王子、現ウィリアムズ王国騎士団団長、側室の子

初回

前回

〇王宮前広場(午後)

黒雲が立ち込めて夜のように暗い。
兵士たちが有翼の魔物たちと戦っている。

大隊長A「ええい! 次から次へと! これでは埒が開かん!」

裏からマーティとセレナが一頭の馬に乗って飛び出してくる。

大隊長A、モノローグ(あれは、さっきの男! それに殿下! なぜあの男と一緒に!? テイラー殿はどうした!?)
有翼の魔物A「キイイイィ!」
大隊長A「ぐわっ!」

大隊長A、魔物の攻撃を受け、斬り返す。

有翼の魔物A「キイエエッ!」
大隊長A「くっ……、問いただす余裕などないか。おい! お前! 命に代えてもセレナ殿下をお守りしろ! さもなくば私が叩き斬ってやるからな!」

マーティ、拳を挙げて応える。

*   *   *

有翼の魔物、マーティたちに近付いて来る。

セレナ「マーティ! 魔物が!」
マーティ「来やがったな! セレナ、しっかり掴まってろよ!」
セレナ「うん」

マーティ、剣を抜く。

マーティ、モノローグ(馬上で戦うなんて初めてだが、やるしかねぇ!)
有翼の魔物B、C、D「「キイッ! キイッ!」」

マーティ、馬を操り敵の攻撃をかわしながら、剣先で敵の翼の根本を斬る。

有翼の魔物B「キイイイエエエッ!!」
マーティ「まずは一匹!」

マーティ、そのまま馬を操り残った敵の攻撃をかわし、翼を斬り落とす。

有翼の魔物C、D「「キイイイアアア!!」」
マーティ「よし! やったぞ!」
マーティ「このまま広場を出て大通りを突っ切るぞ!」
セレナ「マーティ……、私……」
マーティ「今は逃げることに集中しろ! 頭を伏せて、できるだけ小さくなるんだ!」
セレナ「……うん」

マーティとセレナ、広場の門を通過する。


〇城下町、大通り

マーティ、セレナ、引き続き馬を駆って逃げる。

マーティ「セレナ! 俺たちが初めて会った日のこと、覚えてるか!?」
セレナ「え!?」
マーティ「俺が騎士になりたいって言ったら、テイラー先生、強くて賢くて人に好かれる男になれって! そうなれたかどうかはわかんねーけどよ! 今は一人の騎士として、お前を守るぜ!」
セレナ「マーティ……」
マーティ「だからお前は王女として堂々と振舞えよ! お前は、この国に残された唯一の希望なんだから!」
セレナ「でも、私なんて……」
マーティ「ハッタリでもなんでもいい! あとは俺がなんとかする!」
セレナ(私はたまたま王族の家に生まれただけ。本当は、あなたと一緒にどこか遠くへ……)

再び有翼の魔物たちが襲ってくる。

有翼の魔物たち「「キイッ! キイッ!」」
マーティ「また来やがったか! セレナ! 少し横揺れするぞ!」
セレナ「う、うん……」

マーティ、馬を左右に振り、魔物たちの爪をかわしながら一匹ずつ斬り伏せていく。
そのまま十匹ほど倒す。

マーティ「畜生! 一匹ずつ斬ってたんじゃ間に合わねー!」
有翼の魔物E「キイッ!!」
マーティ「あぶねぇ!」

マーティ、馬を右に振り、首への攻撃をギリギリでかわす。

セレナ「マーティ!」

セレナ、マーティに掴まりながら左手で剣を抜き、小声で詠唱する。
そのまま左側の敵に向けて、空間を斬る。
圧縮された空気が刃となって敵の方へ飛んでいく。

有翼の魔物たち「「キエッッッ!!」」

有翼の魔物三匹の腹に横一線、深い傷ができ、魔物たちはそのまま息絶える。

マーティ「すげぇ! 三匹まとめてやったぞ!」

有翼の魔物たち、少しマーティたちから距離をとる。

マーティ「今ので牽制できたみたいだな。俺は右利き、お前は左利き。丁度いい。こっからは左右分担していこう!」
セレナ「え、ええ……」

セレナ、モノローグ(私って本当に嫌な女。セオドア兄様とテイラーに国を託されたら渋るくせに、マーティが危なくなったら迷わず剣を抜くなんて……)
セレナ「王女失格ね」
マーティ「何か言ったか?」
セレナ「ううん、なんでもない。ちょっと自己嫌悪になってただけ」
マーティ「……よくわかんねーけど、あんまり自分を責めるなよ。こんな状況、誰だってどうにもできねーんだから」
セレナ「……そうね」
マーティ「さあ、そろそろ次の攻撃が来るぜ!」

マーティ、セレナ、敵に対処しながら大通りを先へ進む。


〇城下町、大通り(別の場所)

兵士たちの誘導の下、市民が城門へ向かって逃げている。
逃げる兵士の集団の中にエマもいる。

エマ、モノローグ(どうしよう。兵隊さんに言われるまま逃げてきちゃった。マーティ、きっとセレナちゃんを助けようとして……)
誘導をしている兵士「市民のみなさん! 前の人を押さず、速やかにお逃げください!」
逃げる市民A「本当にこんなペースで大丈夫なのか? 王宮前には見たこともない魔物がいたんだぜ?」
逃げる市民B「でも、あの魔物たち、俺たちのことを追ってこないよな? なんでだ?」
逃げる市民A「知るかよ。そのうち来るんだろ? もうどうにでもなれだ」
エマ、モノローグ(マーティ、あんな怖い魔物がいる中に入っていった……。もしマーティが殺されちゃったら、あたし……)

*   *   *

少し離れたところにジョニーと薬屋の店主がいる。

ジョニー「あれ? エマ?」
薬屋の店主「どうかしたのか?」
ジョニー「ちょっと知り合いが。追いかけてもいいですか?」
薬屋の店主「ああ、行ってこい。逃げた先で合流すればいいから」
ジョニー「ありがとうございます」

ジョニー、エマに駆け寄る。

ジョニー「エマ!」

エマ、振り返る。

エマ「ジョニー!」
ジョニー「よかった。無事だったんだな」
エマ「うん。でも……」
ジョニー「でも? どうかしたのか?」

*   *   *

ジョニー「はぁ!? マーティが!?」
エマ「うん。きっとセレナちゃ……王女殿下を助けようとして」
ジョニー「ああ……。想像がつきすぎる」

ジョニー、頭を抱える。

エマ「どうしよう。あたし、一人で逃げてきちゃった……」

エマ、泣きそうになる。

ジョニー「仕方ないさ。逃げるしかなかったんだから。あとは、マーティがお姫様を連れて戻って来ることを祈るしかない」
エマ「でも、でも……」

ジョニー、エマの頭をなでる。

ジョニー「今は逃げながら二人を待とう。大丈夫。なんだかんだ、あいつはできる奴なんだから」
エマ「ジョニー……」

エマ、涙をぬぐいながらうなずく。


次回


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