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建築計画

一級建築士製図試験における「計画の要点等」について、当研究所では建築計画、構造計画、設備計画、環境負荷低減の4分野に分類しています。

今回は「建築計画」です。この分野が最も暗記が通用しない分野ですので、基礎力をしっかり身につけましょう。

まずは、引き出しを多くするため基礎的な知識を蓄え、自分のプランに合わせて当てはめていけるように練習を積みましょう。


出題傾向分析

建築計画分野は必ず出題され、出題数も他分野に比べて多く出題される傾向にあります。主な出題傾向としては、諸室の配置計画ゾーニング動線計画などがあります。

【ゾーニング】一定の条件で建物の空間を振り分ける作業を指します。条件としては、部門利用時間履物などがあります。

【動線】人が動く時に通る経路を線で表したものです。建築では施設利用者の利便性に大きく関わるため、設計の際に特に気を配ります。


過去の傾向としては、「諸室を配置した位置の理由」などの一つのことが問われました。

しかし、近年の設問では設備や構造の知識と融合したものが出題されています。このような問題も、個別の基礎知識の組み合わせに過ぎません。基礎力を養っておけば、十分、対応できます。

ここ数年の傾向としては、居室の使い方を提案する問題であるコンセプトルームが出題されました。この傾向の問題には、課題発表後に自分なりの案を用意しておけば対応できます。

平成29年[小規模なリゾートホテル]、平成30年[健康づくりのためのスポーツ施設]で出題されました。また、令和元年[美術館の分館]では「室の設え」について出題されています。

設えしつら内装や什器、設備などを示す言葉です。「H30/インテリア、什器、設備機器等 H29/内装、什器、設備機器等 R01/注釈なし」で出題されています。

この流れの問題は令和2年[高齢者介護施設]、令和3年[集合住宅]で居室詳細を問う問題へと変遷しています。これらの問題はイメージ図の出来が点数を左右しますので、普段からイメージ図も意識しながら勉強を進めましょう。


配置計画

配置計画は、敷地における建築物屋外施設の位置、建築物内の居室の配置などについて問われます。

敷地に対しての建築物配置

敷地の中で、建築物を配置した位置について問われます。周辺環境の関係性を考慮して配置します。
以下に主な周辺環境に対する配置理由例を示し、積極的(○)消極的(X)理由に分けます。

計画する建築物と、周囲の環境との関係性を考慮して、敷地のどの位置に建物を計画するかを答えます。

[学校]
(○)低層が多く、校庭もあるため、日照や視界は確保できる。
(○)学校と関係性が深い建築物の場合、一体的利用できる。
(X)静寂を求める施設の場合、距離を取る。

[公園]
(○)開口を設け、公園の景観を取り入れる。
(○)近隣住民に開放された建築物の場合、公園側からも集客できる。
(○)屋外庭園を計画する場合、公園との一体的利用できる。

[風光明媚な景観]
(○)積極的に景観を取り入れる。
(○)敷地の景観側に寄せることができる。

[低層住宅]
(○)日照、通風が確保できる。
(X)住宅側への圧迫感を減らすため、距離をとる。
(X)開口部計画はプライバシーに配慮する。

[高層住宅]
(X)日照、通風、プライバシーのため距離をとる。
(X)開口部は互いの視線を考慮する。

[商業施設]
(○)商業施設側からアプローチを計画し、集客する。
(X)静寂を求める施設の場合、距離をとる。


諸室の配置

設計条件で求められた諸室について、建築物の中でなぜその位置に計画したのかを問われます。設問となる室の特性を加味して、計画した位置との関係性を説明します。

[住居]
日照、通風、眺望、プライバシー、静寂性を考慮する。

[レクリエーションルーム]
施設利用者や周辺住人が集い、多目的に楽しむ。
騒音、振動があるため、隣接する室の種類を考慮する。
日照、位置の明快さ、利便性などが求めらる。

[エントランスホール]
明るく開放的な雰囲気が望ましい。
建物の全体像が把握できる。
各部門へのつながりが明快である。

[レストラン、カフェ]
建物の目立つ位置に計画し、集客性を考慮する
カフェテラス、庭園などとの一体利用も考慮する。
厨房用の資材搬入にも配慮します。

[図書室]
上階の角など、落ち着いた雰囲気が望ましい。
安定した日照条件を求め、建物北側に計画しても良い。


屋外施設の配置

屋外施設の配置位置を問われます。それぞれの施設に応じた目的を説明しながら、計画した位置との関係性を説明します。

[駐車場]
交通量の多い道路側に車両出入口を計画し、施設利用者の利便性が上がる。
車回しを一方通行で計画すると安全性が向上する。
車いす使用者用駐車場は主出入口に近接させ、経路の段差を無くす。

【車寄せ】施設利用者の送迎のため、主出入口に近接させた車両の停止位置を指します。雨天に備え、屋根を計画し安全性を考慮します。
[車回し]車寄せ迄の車路を指します。安全性を考慮すると、通り抜け方式が優れます。

車寄せ、車回し


[カフェテラス]
建物内のカフェに面して計画する。
カフェと一体的利用し、開放的な雰囲気作りをする。
周囲から目立つ位置に計画し、集客性を考慮する。

カフェテラスの一体利用


[オープンスペース、屋外庭園]
建物と直接行き来可能とし、一体利用する。
集客性を考慮し、周囲から目立つ位置に計画する。
公園が隣接する場合、公園側にも出入り口を計画し、一体利用する。

屋外庭園による集客性向上
屋外庭園の一体利用


配置計画問題

設問1「図書室の配置計画で工夫したこと」

[解答例1]
敷地西側の公園に面して配置し、利用者が良好な景観を楽しめるように計画した。
[解答例2]
安定した日照条件とするため建物北側に配置し、利用者の快適性に配慮した。
[解答例3]
各出入口から視認しやすい位置に計画し、利用者がわかりやすいものとした。
[解答例4]
レストランと離した位置に計画し、利用者が静かで落ち着ける空間とした。


設問2「建物内の室やスペースの配置で考慮したこと」

[解答例1]
特産品売場をエントランスホールに面して配置し、来館者が立ち寄りやすいように計画した。
[解答例2]
休憩スペースを駐車場側出入口の近くに配置し、多くの利用者が気軽に利用できるよう考慮した。
[解答例3]
休憩スペースを北側湖に向けて計画し、湖の景色を楽しみつつ、利用者が落ち着いて休憩できる場所とした。


設問3「敷地周辺の住宅に対し、建物配置について考慮したこと」

[解答例1]
住宅のある北・西側は敷地境界から適度に距離を取り建物を配置し、周辺住宅に圧迫感を与えないように計画した。
[解答例2]
敷地北側には高木の常緑樹を植え目隠しすることで、戸建て住宅のプライバシーに配慮した。


設問4「駐車場・車寄せの計画について考慮したこと」

[解答例]
車両経路と歩行者通路を明確に分離し、歩行者の安全に配慮した。車両は北側道路の東から西に抜ける一方通行とし、安全と利便性を考慮した。


設問5「屋外創作広場の計画について考慮したこと」

[解答例1]
敷地の南西側に配置し、利用者が明るく快適な空間で過ごせるようにした。河川敷の景観を取り入れ、落ち着いた雰囲気とした。
[解答例2]
アトリエに屋外創作広場への出入口を設け一体利用し、利用者同士の交流が活発にできるよう計画した。
[解答例3]
屋外創作広場には公園と遊歩道側に出入口を設け、公園利用者や歩行者が気軽に立ち寄れる雰囲気を作り、地域住民の交流活性化を図った。


設問6「分館の配置及びカフェテラスについて工夫したこと」

[解答例1]
分館の主出入口を本館側に寄せて計画し、利用者が相互に行き来しやすい計画とした。
[解答例2]
本館から主出入口まで敷地内通路を設け利用者がわかりやすい計画とした。
[解答例3]
カフェ及びカフェテラスを東側の公園に向けて計画し、利用者が景観を楽しみながらゆっくり過ごせるよう配慮した。
[解答例4]
カフェテリアから公園への出入口を設け公園利用者が気軽に立ち寄って利用できる計画とした。


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