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一級建築士製図試験勉強の始め方

こんにちは、記述研究所の源です。

今日は製図試験勉強の始め方についての話です。この記事は研究所員の3人が経験したこと、感じたことと、周囲の様子をまとめたもので、製図試験受験生の一例をお伝えします。

気軽に読んでいただき、自分に役立ちそうな部分だけ参考にしてみてください。



スケジュールを立てよう

試験日までのスケジュールを立てます。いつまでに、何をできるようにするのかの目標を定めます。

大きなポイントとしては、例年7月に発表される製図試験課題です。令和5年であれば、10月8日の試験日に対して、7月21日に課題「図書館」が発表されました。

この課題が発表されてからは、詳細な対策を始める事ができるので、それまでに基礎的なことは済ませておくようにします。

まずは、合格までに必要な能力を列記します。

合格に必要なスキル
1.建築に関する一般知識
2.法律知識
3.図面を書く(手順、速さ、見た目)
4.パーツ(階段、トイレ)などの細かな定形物
5.文章作成
6.設備知識
7.エスキス

課題発表までにやっておきたいこと

1から6までのスキルはどんな課題であっても共通です。基礎的な部分をしっかり固めておきましょう。

エスキスに関しては、課題によって基準階型ゾーニング型が変わります。テーマによって、エスキスに必要な知識は大きく変わるので、課題発表後から本格的に練習すれば無駄が省けます。

課題発表前は、基本的な手順を忘れないよう、サラッと見直す程度で良いと思います。


1.建築に関する一般知識

試験に関する知識として必須というわけではありませんが、やはり建築への興味は常に持っておき、知識は加えておくべきと思います。

実際の建築物を興味を持って見ることで、本試験で迷った際の判断に役立つこともあると思います。実例の建築物を見たり、本での知識を加える程度のもので、余裕のある時期にやっておくことになります。

本試験で迷った時に役立つ知識があるかもしれません。


2.法律知識

製図試験での法令違反は即座にランクⅣにつながります。毎年、標準解答例の図面には注意すべき法令が書かれています。

少なくとも、直近の数年に書かれている法令は全て押さえておきましょう。

製図試験での法律知識は、法令集の持ち込みが許可されている学科とは異なり、あやふやな知識では対応できません。

しっかり法律の内容をイメージでき、数字や条件もしっかり把握しておく必要があります。

時間に余裕のある時期に、深堀して知識を定着させておきましょう。


3.図面を書く(手順、速さ、見た目)

図面は練習した分だけ、上手くなります。作業のように手を動かしても意味がないので、しっかりと頭を動かしながら作図の練習をしましょう。

まずは、平易な図面をトレースすることから始めます。いきなり、標準解答例をトレースしても、複雑であるため心が折れるだけですので避けましょう。

作図スピードが短縮できない原因の一つには、作図手順が身についていないことがあります。

毎回、書き方が変わってしまうようでは、効率的な作図ではありません。まずは、作図の本を参考にして、手順を覚えましょう。その後、自分なりのアレンジを加えていくことで更なる時間短縮を目指します。

時間短縮のためには、フリーハンドを取り入れることも効果的です。しかし、フリーハンドには、向き不向きもありますので、ある程度試して効果が出ないようでしたら、早めに切り捨てる判断が必要です。

図面は見た目の印象も気にした方が良いと思います。同じレベルの内容であっても、線や字が綺麗な図面の方が優れていると判断される可能性が高くなります。

普段、字を手書きすることはほとんどないと思われますが、製図試験の勉強期間は意識的に手書きを増やすようにし、字の練習もするようにしましょう。

字は手本となる字形がイメージできないと上手くなりませんので、手本を見て形を覚えることも練習の一つとなります。


4.パーツ(階段、トイレ)などの細かな定形物

作図のスピードが上がらない原因の一つに、細かなパーツを書くのに時間がかかっている場合があります。

対策としては、苦手なパーツを繰り返し練習して手に覚えさせてしまうことです。

一例として、時間のかかるパーツとして、階段があります。建築基準法バリアフリー法のそれぞれに対応した階段を覚え、余裕がある場合には、異なる階高にも対応できるよう、パターンを増やしておきましょう。

パーツ練習は製図板がなくてものできるので、場所を選ばす、隙間時間を使ってノートの片隅に書き進めましょう。


5.文章作成

記述は暗記で十分ということが言われますが、「計画の要点」は自分の設計に関する考えを試験元に伝える場所です。

まともな文章が書けなければ、どんなに素晴らしいプランも伝わりません。普段から文章を書きなれない場合には、文章を書くことから学ぶ必要があります。

まずは、文章の基本パターンを掴むことから始めましょう。その後は、基本的な例文を読むことで、記述に必要なキーワードを増やしていきます。


6.設備知識

製図試験では、空調、照明、給水などの設備に関する知識も必要となります。とりわけ空調は複雑であるため、一気に詰め込むことで混乱してしまう受験生は多いです。

近年は、省エネルギーに関する設問も増え、ますます設備は複雑になっています。さらには、図示を求めらることも多くなってきたため、設備の勉強は時間かけてじっくりやりたい分野です。

教科書などを落ち着いて読み、課題発表前に全ての基本事項を理解しておけば、テーマへの対応がスムーズに進めることができるようになります。

また、近年の記述問題では、一歩踏み込んだ知識をイラストと共に答える問題が出題されます。早めの対策が必要な分野です。


7.エスキス

作図、記述、エスキスの中で、最後まで不安が残るのはエスキスです。課題発表以降は、エスキスに全力投球できるよう、作図、記述は発表前に8割方、仕上げておけるといいですね。

作図は手順を固め、速さと見た目を上げます。記述はテーマに沿ったキーワードを追加で覚えるのみです。

エスキスは、テーマに沿った問題を複数回解くことで精度が上がっていきます。事前に毛色の違うテーマの問題を解きすぎると、余計な癖がついてしますので、エスキス以外のことを完成させておくことをお勧めします。


資格学校に通う?

まず、「資格学校に通わなければ合格できないのか?」と聞かれれば、「通った方が合格可能性は高くなります。」と、答えます。

決して、通わないと合格できないわけではありません。しかし、非常に困難な道のりになります。少なくとも、十分な時間的余裕と試験に精通した人が周囲にいなくては厳しいでしょう。

実際、私は初年度に資格学校に通うことなく受験し、不合格となりました。翌年は学科試験以降の短期コースに通って合格しましたが、得られる情報の多さに驚いていました。


長期または短期

資格学校に通うとして、長期コース、短期コースの選択があります。結果として、短期コースで合格できましたので、どちらでも合格はできると考えます。

私が短期コースを選択したのは、3月から10月までの長期コースでは集中力が続かないと思ったからです。もともと短期集中型なので、半年以上はモチベーションが続かないと思い、選択しました。

しかしながら、長期コースでは基礎から丁寧に幅広く教えてもらえると聞きますし、自分の短期コースが始まった時に長期コースを覗き込むと高度なことをやっていて差を感じたのを覚えています。

試験日が近づくとコースの実力差は縮まると聞きますが、スタートダッシュできるのはメリットですね。

結局は、自分に合っていると感じるものを選べばいいです。


資格学校の特色

一級建築士試験のメジャーな資格学校としては、古株では日建学院、総合資格があります。また、新興勢力としては、法律系の資格に強いTACがあり、この3校が多くを占めます。

それぞれには特色があり、自分に合った学校を選ぶところから試験勉強は始まっています。

記述研究所の3人は、日建学院1人、TAC2人の通学経験があります。その当時の各校の印象は以下の通りで、学校を決めた際に検討したことです。

日建学院
内  容:基本問題から応用問題まで(授業での作図の初歩的説明はなし)
問  題  数:中間(TAC<日建<総合)
授業時間:朝から夕方まで(延長なし)
授  業  料:中間(TAC<日建<総合)

TAC(タック)
内  容:基本問題から応用問題まで(授業での作図の初歩的説明はなし)
問  題  数:少ない(TAC<日建<総合)
授業時間:朝から夕方まで(延長なし)
授  業  料:最も安価(TAC<日建<総合)

総合資格
内  容:基本問題から応用問題まで(初歩の初歩から説明)
問  題  数:多い(TAC<日建<総合)
授業時間:朝から夕方(夜まで延長する場合あり)
授  業  料:最も高価(TAC<日建<総合)

各校、特色はありますが、授業内容の違いはあれども、どこの学校でも合格者は出ていますので、大きな違いはありません。

あとは、何を重視して学校を選択するかによります。

初歩から教わりたく、問題数をこなしたい場合には、総合資格を選択します。逆にTACの場合は、少ない問題をじっくり何度も解くことで、根本から学ぶことを重視しています。それぞれにメリット、デメリットがあります。

各学校では、体験授業などがあると思いますので、そこで最終判断をするのが一番いいと思います。


通信教育もあり?

初年度、資格学校に通学しており、エスキス、製図の基礎がわかっている場合には、2年目以降、通信を選択する道もあります。

現在は、大手資格学校でも通信コースの用意があるので、検討してみる価値はあります。

通信のメリットとしては、通学に比べて費用が抑えられていることと、教室まで通う時間が節約できることです。

デメリットとしては、周囲の学生との意見交換がしにくい、講師への質問や図面添削の返却に時間を要するなどがあります。

あとは、勉強の進捗管理は全て自分で行うため、厳しく律することができる人に向いています。安いとか、時間がないからといって飛びついてしまうと、全くカリキュラムをこなす事ができずに試験日を迎え不幸が発生します。

実際、私以外の研究所員二人は初年度は資格学校に通いましたが、2年目以降、通信教育を利用して合格しています。

時間、経済的に制約がある場合は、通信も選択肢の一つにしてみるものいいかもしれません。


SNSは役立つ?

SNSは試験勉強にとって有益でしょうか?

一級建築士に関する情報はネットに溢れています。受験生だと、色々な不安からネットの情報を求めるようになります。

ブログ、X(旧Twitter)、LINEオープンチャット、5ちゃんねる等で一級建築士試験に関するものがたくさんあります。

かつて、情報収集のために受験シーズンの間、一通りのネットを回ってみたことがあります。私が感じたのは、有益な情報はほんの一握りだったということです。

その情報を見つけるために、SNSを徘徊するならば、その時間を自分の勉強に費やした方がはるかに価値があります。

結論としては、要した時間に対して、得られた情報の価値が低いというものです。

試験前には雄弁に語っていたアカウントが試験日以降沈黙したり、合格発表日以降、消えてしまった現実を見ると、試験勉強期間にがっつりSNSに浸かっていると良い結果には結びつかない事が多いようです。

結局、ネットは自分で情報の取捨選択がしっかりできる人のみがやるべきです。息抜きの一環として、余暇の範囲でSNSをする程度にとどめましょう。

私が受験だった時には、ネットでも情報収集は全くしませんでした。その頃、SNSに興味がなく全くやっていなかったのもありますが、資格学校で生徒や講師のみなさんから得た情報で十分だったと思います。

ネットと比べると、情報の信ぴょう性が高いので、余計なことを考えることなく吸収できます。

多くの情報を得たとしても処理しきれず、心配事が増えてしまうだけなので、精神衛生上も良くありませんね。


以上、製図試験勉強を始める際に考えることを紹介してみました。


よろしければ、記述の勉強方法の参考としてみてください。