基礎編(設備)
一級建築士製図試験における「計画の要点等」について、当研究所では建築計画、構造、設備、環境負荷低減の4分野に分類しています。
記述試験が本格的に出題されるようになった平成21年度からの過去問傾向を分析し、効率的な学習方法を考えていきます。
今回は「設備」です。この分野は製図をする際にも必要となりますが、なかなか理解が進まない方が多い分野です。基礎編では、とにかくシンプルに学ぶため、余計な部分を省き必要最低限な知識としています。
まずは全体像を把握し、知識が定着したら少しずつ広げていきましょう。
出題傾向分析
過去の出題傾向から見ていきます。令和2年から、記述問題が現在のスタイルへ変更された平成21年までを遡りながら分析します。
全記述問題のうち設備計画に関する設問だけを抽出して、設備計画分野の出題傾向をつかみます。
・令和2年 高齢者介護施設
設問数は全部で8問でした。このうち設備に分類できるものは2問です。
①インフルエンザ、ノロウイルス対策
②高齢者介護施設としての空調方式
・令和元年 10/13 美術館の分館
令和元年は台風により一部地域が延期されています。関西以南と北海道は延期なく実施されました。設問数は10問、このうち設備は1問です。
①多目的展示室の空調吹き出し口設置位置 理由と配慮したこと
・令和元年 12/8 美術館の分館
令和元年は台風により関東、東北地方は製図試験が延期されました。設問数は10問、このうち設備は1問です。
①多目的ホールの空調方式(イメージ図:必須)
・平成30年 健康づくりのためのスポーツ施設
設問数は9問、このうち設備に関する問題は出題されませんでした。
・平成29年 小規模なリゾートホテル
設問数は7問、このうち設備は1問です。
①居室に外気を送風するためにダクトレール計画
空調機械室、ダクトスペースの配置
・平成28年 子供・子育て支援センター
設問数は7問、このうち設備に関する問題は出題されませんでした。
・平成27年 市街地に建つサ高住
設問数は10問、このうち設備は3問です。
①レストラン厨房の排気計画
②住宅部門の排水管計画
③免震構造での給排水衛生、電気設備計画
・平成26年 温浴施設のある「道の駅」
設問数は8問、このうち設備は2問です。
①浴室の給湯設備 熱源採用理由、設置位置
②浴槽ろ過機、非常用発電機、地域特産品売り場の
空調の設置位置と維持管理、更新方法
・平成26年 沖縄 温浴施設のある「道の駅」
平成26年は沖縄のみ台風にて延期されています。設問数は8問、このうち設備は1問です。
①給湯設備計画(ガス、ボイラー)又は(電動空冷ヒートポンプ)
・平成25年 大学のセミナーハウス
設問数は8問、このうち設備は2問です。
①アトリエの空調方式 空調機の設置位置、吹出口、吸込口計画
②受変電設備、空調室外機、浴室用給湯・ろ過設備設置位置
・平成24年 地域図書館
設問数は8問、このうち設備は2問です。
①吹抜け部分の冬季空調設備計画
②小ホール空調機械室位置と給気、還気ダクトルート
・平成23年 介護老人保健施設
設問数は8問、このうち設備は2問です。
①「受水槽及び給水ポンプ」及び「受変電設備」の設置場所
維持管理又は機器からの騒音、振動防止
②地震対策「設備の損傷防止」「停電」及び「断水」から2項目
(停電や断水は3日程度を想定する)
・平成22年 小都市に建つ美術館
設問数は10問、このうち設備は3問です。
①常設展示室、エントランスホール、研修室の空調方式
②収蔵庫に必要な環境条件(設備的手法)
③常設展示室の照明計画
・平成21年 貸事務所ビル
設問数は10問、このうち設備は4問です。
①建築物に採用した空調方式の採用理由
②設備スペース、シャフト計画の理由
③貸事務所の照明計画(照度、配置計画)
④排煙計画の理由
・分析
平成21年から本格的に記述が求められるようになり、台風による延期を含めると14回の試験が行われています。全ての設問数は121問、このうち設備に関する出題は23問(19.0%)です。
近年、設備分野の出題は減少傾向にあります。これは、省エネルギーへの関心が高まるとともに、設備分野から環境負荷低減分野に移行しつつあるためです。
しかしながら、設備分野の知識は製図を進めるためにも必須の知識なのでないがしろにはできません。早めに全体像をつかんでおけば、直前になって慌てることはありません。
空調計画
空調方式を問われた際の選択フローを示します。
①設計条件で提示されているか?
[Yes]
設計条件で空調方式が指定された場合 ⇒指定方式を選択
[No]
全ての空調方式で検討する。⇒②へ
②個別制御が必要か?
[Yes]
個別制御性に優れた方式を選択します。⇒③へ
[No]
全館空調ができる空調方式を選択します。⇒単一ダクト方式(定風量型)
③大空間が存在するか?
[Yes]
大空間においても居住域まで給気可能な方式を選択する。⇒単一ダクト方式(変風量型)、空冷ヒートポンプパッケージ方式床置きダクト接続型
[No]
個別制御性に優れ、個室の空調が得意な方式を選択する。⇒空冷ヒートポンプパッケージ方式天井カセット型、ファンコイルユニット方式
・単一ダクト方式定風量型
中央熱源から空調機に熱を供給し、温湿度調整した空気をダクト経由で各室に供給します。風量は一定とし、給気温度を変えることで室温を調整します。負荷変動の少ない室、天井の高い大空間に採用されます。
エントランスホールの空調方式は、均一な気流分布と温湿度分布を確保できる単一ダクト方式定風量型を採用した。
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