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切れない、潰れない「ダブルネットワークゲル」

多くのゲルは柔らかく、小さな子供でも簡単に引き千切り、潰すことが出来ます。
ところが、世の中には成人男性が力一杯引っ張っても千切れない、数百キログラムの物体を上にのせても潰れないゲルが存在します。
しかもこのゲルは90%以上が水です。信じられない強さですね。
その強いゲルは、ダブルネットワークゲルと呼ばれています。

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ダブルネットワークゲル(http://altair.sci.hokudai.ac.jp/g2/DN.html)

ダブルネットワークゲルは、その名の通り、異なる性質を持つ2つのネットワークから出来ています。

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図のように、1つの高分子で出来たネットワークの中に、別の種類の高分子で出来たネットワークが形成されています。
ダブルネットワークゲルは、硬くて脆い剛直な高分子と、よく伸びる柔軟な高分子で出来ています。
ゲルに力が加わると、硬くて壊れ易い高分子の鎖が切れ、ゲルの構造が壊れ始めます。
しかし、伸び易い高分子が脆い高分子の鎖を繋ぎ留めます。
ゲルの至る所で脆い高分子が切れることで、加えられた力が緩和されます。
そして、よく伸びる高分子がネットワークの破壊を阻止します。
異なる性質を持つ2つの高分子の特徴を活かし、高い強度のゲルを実現しているんですね。

ダブルネットワークゲルは、ゲルとは思えない圧倒的な強度の高さから、様々な分野への応用が考えられています。
例えば、柔軟・高強度の軟骨の再生、臓器や血管・眼球などの生体代替材料、ゲルの低摩擦性を活かした、重量物の滑り移動などが考えられ、応用が進められています。
軟骨は運動時のクッションの役割などを担う重要な部位ですが、損傷すると再生は困難です。しかし、ダブルネットワークゲルを欠損部に埋め込んで軟骨を再生する、もしくはそのまま骨に接着して人工軟骨とすれば、軟骨再生の課題を解決できます。

強さだけでなく、その応用にも目を見張るものがありますね。

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