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お米の香りを分析

先日、福井大学のグループが、炊きたてご飯の香り成分の測定に成功した、という発表をしました。
お米の品種ごとに含まれる、香り成分の解明は進んでいますが、食べるときのご飯の香りの研究は進んでいませんでした。
炊いたご飯の香りは、それまでの保存期間や水や温度などの調理条件によってかわります。
福井大学のグループは、炊きたてのご飯に試料採取用のホルダーを近づけて、香りを吸着させ、吸着させた物質を分析したそうです。
分析は、質量分析によって行われました。質量分析とは、測定したい物質をレーザーなどでイオン化させて、検出器まで飛ばす分析方法です。
重い物質ほど、検出器にたどり着くのに時間がかかります。つまり、検出時間によって、物質の質量を知ることが出来るんです。

単純に匂いを嗅いでみると、炊いて2時間保温した後では、炊飯直後の甘い香りが少なくなっていたそうです。また、精米から2、3年経った米からは不快な匂いがしたそうです。

そして、質量分析で判明した、炊きたてご飯の香り成分の一部は、4ビニルフェノールと、インドールという物質です。

スケッチ-156

この二つの物質のにおいは、濃度によって変わります。
インドールは高濃度で悪臭を放ち、低濃度では花の良い香りがします。
実際、ジャスミンやオレンジなどの花に含まれ、香水にも使われているんです。
4-ビニルフェノールは薬箱や煙、スパイスなど、様々なにおいがします。
他の物質のにおいと混ざれば違うにおいになるため、においの良し悪しを単純に評価することは出来ません。

分析結果から、保温時間が長いほど、どちらの物質も少なくなることが分かりました。
ただ、まだ不明な成分も多い上、炊きたての甘い香りは、この2成分だけではないそうです。
確かに、炊き立てや数時間保温したご飯からは、香水やスパイスの香りはしませんよね。
今後の研究成果を待ちたいです。

考えてみると、お米の香りや味などの特徴は数値化されているわけではないんですよね。
もし数値化できれば、お米の美味しさを今よりも客観的に評価出来るようになるので、より美味しくて香りの良いお米の品種改良や、美味しくご飯を炊ける炊飯ジャーの開発に役立つと考えられます。
研究が進展することで、今より美味しいご飯が食べられるようになると良いですね。

ご紹介した研究で使われた質量分析の詳細については、過去の記事を参照下さい。


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