静電気_表紙

静電気はなぜ起きる?

冬になると発生する厄介者、静電気。
空気が乾燥していると発生し易くなりますよね。
では、なぜ発生するんでしょうか?
そもそも、静電気とは何なのでしょう?

身の回りのものは、すべて電気を持っています。
プラスとマイナスが同じ数だけ存在し、電気的に中性を保っているんです。
ところが、異なる物どうしが触れ合うと、このバランスが崩れる事があります。

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図のように、一方の物質にマイナスもしくはプラスの電荷が引き寄せられ、偏りができます。
簡単に言えば、この状態が静電気です。
でも、バランスの崩れた状態は不安定です。
元の中性な状態に戻ろうとします。
ここで、マイナスに帯電したものとプラスに帯電したものが近づくと
マイナスの電荷がプラスに帯電した物に移動します。
この動きが「放電」です(厳密には火花放電と呼びます)。
バチッと音がするあの嫌な静電気はこの放電現象なんです。

では、どんなものだと静電気は起こるのでしょうか?
何となく気付いている方もいらっしゃると思いますが、
電気を通しやすいものどうしでは静電気は発生しません。
そう、電気を通しにくいものどうし、具体的には誘電体(絶縁体)の摩擦で生じます。
この誘電体には、下の表のように帯電列というものがあります。

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この列で位置が離れている物どうしが接触すると静電気は発生し易く、近い物どうしだと発生しにくくなります。
帯電列は結構複雑で、材質が同じでも形が変わると帯電列も変わることがあるんです(例:フィルムと糸)。
例えば、アクリルは板と繊維で帯電列の位置が変わります(表の黄色のハイライト)。
また、静電気には未だに分からない事が多く、
大まかには前述した通りと考えられているものの、
詳しい原理については今も議論されています。
最近では、異なる物質どうしが接触したとき、接触面の構造が変化するためだとも言われています。

ちなみに、人によって静電気が発生し易かったりし難かったりしますね。
これは着ている服の組み合わせが原因です。
帯電列の離れている物を着てしまうと、少し動くだけで静電気が発生してしまいます。
人の体は電気を通しやすい電気伝導体なので、そこに個人差はありません。
ただ、肌が乾燥していると静電気を逃がし難くなります。
ハンドクリームなどで保湿することはとても重要なんですね。

服の組み合わせについては、
ウールとアクリル繊維が発生し易いです。
とはいえ、そこまで考えるのは大変ですね。
暖かさや自分の好みで選ぶのが一番だと僕は思います。
静電気が酷くてどうしても我慢出来ないとき、
組み合わせを考え直せば良いんじゃないでしょうか?
ちなみに、綿は比較的静電気が発生し難いです。

静電気は困った奴で、各所に被害をもたらします。
可燃性液体を扱うガソリンスタンドや工場などでは
静電気の火花放電が原因で火災や爆発が起きる事があります。
そのため、入念な静電気対策が施されています。
例えば、ガソリンスタンドや化学工場で働いている方は、帯電防止の靴と服を着用しています。
セルフ式のガソリンスタンドなどでは放電プレートが設置され、給油前に触る事になっています。
たかが静電気と甘く見てはいけません。
日常的に発生する静電気程度でガソリンやシンナーなどは着火します。
化学研究の現場でも、静電気による事故やヒヤリハットが毎年起きています。静電気対策はとても重要です。

そして雷。
実は、雷は静電気による放電現象の大規模バージョンです。
地上と雲の間で電荷の偏りが生じ、最後は大放電を起こします。
上昇気流によって運ばれた空気が上空で冷やされ水滴が発生し、氷になります。
この氷がぶつかり合い、静電気が発生すると考えられています。
*詳しい原理についは以下の三ツ村さんのnoteを参照下さい。

雷雲と地上の間には空気が巨大な絶縁層として存在しているため、簡単には放電しません。
そのため、放電(落雷)するときは約10億ボルト、数万アンペアという
とてつもない規模になります。
雷を避けるため金属類は身に着けない、傘をささない等の注意をたまに見聞きしますが、無意味です。
例え絶縁体で身を包んでいても、10億ボルトの大放電の前では無力なんです。
屋内から出ない、建物や車の中に逃げるのが一番です。

とはいえ、雷による被害は出来るだけ防ぎたいですよね。
雷害防止策の代表が避雷針。
従来の避雷針の役割は、雷を避雷針に誘導し、地面に流してしまうことです。
ところが、最近は落雷を回避するタイプが登場しています。

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図のように、球状のキャパシタというものを設置します。
上空はマイナスなので、同じマイナスを上空に向けていれば、
一定範囲の落雷を防止できます。

避雷針も万能ではありませんが、設置することで雷の被害を少なくする事ができます。

静電気を意図的に起こすのは意外と難しいんです。
それでいて、起きて欲しくないときには起きる。
古くから知られているのに謎の多い静電気、
世界中で研究が行われているので、謎が明らかになる日は近いかもしれません。

読んでいただけるだけでも嬉しいです。もしご支援頂いた場合は、研究費に使わせて頂きます。