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歴史と科学 Vol.5 ~ 青色を求めて ~

古来、紫は高貴な色とされ、多くの国で珍重されました。
そして、青色も特別な色とされ、様々な青色顔料が作られます。
青色を出すために使われたのが、ラピスラズリでした。
古代エジプトでは、ラピスラズリは特に貴重なものとされ、黄金以上の価値を持っていました。
ラピスラズリは日本では瑠璃(るり)と呼ばれ、仏教の七宝の一つになっています。
青金石(ラズライト)を主成分とした鉱物で、深い青~藍色をしています。また、黄鉄鉱の粒を含んでいることが多いです。

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ラピスラズリ(黄色く光っている部分が黄鉄鉱:Wikipedia)

このラピスラズリを使ったことで有名なのが17世紀のオランダの画家、ヨハネス・フェルメールです。
ラピスラズリを精製して作った青色顔料を天然ウルトラマリンと呼びます。
天然ウルトラマリンを豊富に使った青は「フェルメール・ブルー」と呼ばれるほど、フェルメールの絵に特徴的なものです。
現存するフェルメールの作品数は少なく、約35点とされています。
中でも有名な「牛乳を注ぐ女」と「真珠の耳飾りの少女」はフェルメール・ブルーの美しさがよく分かる作品ですね。

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牛乳を注ぐ女(ヨハネス・フェルメール作, Wikipedia)

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真珠の耳飾りの少女(ヨハネス・フェルメール作, Wikipedia)

どちらの作品も、来日したときに本物を鑑賞したことがあります。
噂に違わぬ、思わず息を飲んでしまう美しさでした。

現存するフェルメール作品のうち、残念ながら「合奏」だけは盗難され、今も行方が分かっていません。
1990年にアメリカで起きた「ガードナー美術館盗難事件」によるものです。

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合奏(ヨハネス・フェルメール作, Wikipedia)

総額5億ドルとされる計13点の作品が盗まれ、今も全作品が行方不明のままです。
事件としては既に時効になっているため、現在は作品を取り戻すことが最優先になっています。
もし見た記憶がある方は、ガードナー美術館への情報提供をお願いします。
日本だと警察に連絡するのが良さそうですね。
作品は世界中に分散したとも考えられており、日本にあってもおかしくはありません。

ちなみに、Netflixでこの盗難事件のドキュメンタリー映画を見ることが出来ます(4時間もあります)。事件当時の警備が手薄で、セキュリティが軽視されていたことが悔やまれます。

少し脱線してしまいました。

青は貴重な色でしたが、ラピスラズリは簡単に入手できる鉱物ではありません。
海や空が青いからと言って、そこから色を取り出すことも出来ません。
そのため、青色を作る方法が考案されます。
今回は、青色を求めた人類の歴史を紐解きます。


古代エジプト


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