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ポリウレタンとシリコーンゴム

ポリウレタンはウレタン結合を持つ高分子化合物の総称です。
厳密には、高分子量ではないものもあります。
総称なので、ポリウレタンと言っても、その性質は様々です。
基本的には、耐油性耐摩耗性を持っています。
しかし、分解されやすいという欠点を持ち、耐熱性や耐水性は高くありません。
ポリウレタンはゴム状のものが多いため、他の合成ゴムとよく比較されます。

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ポリウレタンは、イソシアネートと、水酸基を持つ物質との反応で作られます。水酸基を持つ物質には、グリコール(アルコールの一種)が使われます。

ポリウレタン改1

イソシアネートと水酸基の反応でウレタン結合ができます。
しかし、ポリウレタンは高分子なので、沢山の分子が繋がった構造をしています。
実際には、ジイソシアネートジオールが反応することで生成するんです。

ポリウレタン改2

Rは物質によって変わります。
例えば、CH2やC2H4などの炭化水素鎖が入ります。

また、化学では数をギリシャ語で数えます。
1=モノ、2=ジ、3=トリ、4=テトラ、5=ヘプタ、6=ヘキサ、7=ヘプタ、8=オクタ、9=ノナ、10=デカ
つまり、ジイソシアネートとは、イソシアネート基を2つ持っているということを表しています。ジオールもそうですね。

ウレタン結合はアミノ基やカルボキシル基などからもできます。
そして、Rの構造や側鎖の違いによって性質が変わります。

ウレタン結合を見て分かるのは、加水分解されやすいということです。
つまり、水に弱いんです。
もちろん、水に漬けたらすぐに分解されるわけではありません。
しかし、長時間水に漬けたり、湿度の高い環境に置いたりすることで劣化が進みます。
温度変化や直射日光にも弱いので、3年程度で劣化してしまいます。
中には耐水性や対候性を高めたものもありますが、長持ちしないことが多いです。
服や靴底、カバンなどにもよく使われるため、
雨に濡れた時や洗濯するときは注意が必要です。
*手入れの方法などは各製品の説明書や注意書きを読んで下さい

ポリウレタンの弾性繊維はスパンデックスと呼ばれます
服には向かないように思えますが、その伸縮性からシワになりにくく軽いという特徴があります。
さらに、様々な繊維と組み合わせる事が出来るんです。
混紡率が低くても、ポリウレタンの特徴を失いません

それでは、実際にポリウレタンを作ってみましょう。
市販の「人肌のゲル」を使ってみます。
主剤と硬化剤を混ぜて固めるだけです。

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主剤は水酸基を持つジオール系の物質。
硬化剤はイソシアネート系の物質です。

主剤:硬化剤=3:1で混ぜます。
重さは正確に測る必要があり、0.1g単位まで合わせた方が上手く作ることができます。
比率が1%ずれるだけでも、上手く固まってくれません。
*固まるけど、ベタベタと手に付きます。

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よく混ぜた後、型に流し込みます。
今回はシリコーンゴムの型を使いました。

イソシアネートは、このような2液混合系でよく使われる物質です。
混合することで重合反応が起き、分子のたくさん繋がった高分子ができます。

24時間後、ベタベタしますが、手に液が付かなければ成功です。
添付のタルク粉を振りかけ、シリコーンの型から剥がします。

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こんなふうに、よく伸びます。
その柔らかさから、ウレタンゲルとも呼びます。
溶媒を含まないため、厳密にはゲルではありません。
しかし、ゲルに性質が似ている材料は、ゲルと呼ぶことがあります。
硬いスライムを伸ばしているような感じですね。

ポリウレタンは2つの物質を混ぜるだけで出来るため、接着剤などにも使われます。
塗料にも採用されています。

また、防振材としてよく使われています。

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このような透明な防振材を見たことがあると思います。
これはポリウレタンでできています。
柔らかく、伸縮性があります。
見た目や触った感じは、本物のゲルのようです。
ただ、溶媒を含んでいないため、ウェットではありません。

続いて、シリコーン
ケイ素と酸素が繋がって出来た無機高分子がシリコーンです。
図のように、シロキサン結合を持ちます。

シリコーン1

こちらも、側鎖のRの部分は様々です。
例えば、メチル基(CH3)の付いたものは撥水性を持ちます。
逆に、水酸基(OH)を付けると親水性になるんです。

柔軟性と弾力のあるシリコーンは、シリコーンゴムと呼ばれることが多いです。
こちらも、溶媒を含んでいないため、ゲルではありません。
また、人肌のゲルを作るときに使った型は、シリコーンです。
シリコーン耐熱性・対候性・耐薬品性を持つ、とても丈夫な高分子です。
溶剤にも溶けません

ポリウレタンのように、未使用でも3年程度で劣化するということはありません。

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シリコーンモールドや、ヘラ、スプーン、シートなど、色々な形にして使われています。


シリコーンはこの耐性の高さに加え、ゴムや硬い樹脂、オイルなどの様々な状態にすることができます
そのため、医療や食品、化粧品、建築や電気電子関係など、様々な分野で使われています。

ちなみに、「シリコン」はケイ素の事です
例えば、半導体で使うシリコンはケイ素の高純度結晶です。
シリコーンとのばすと、無機高分子になります
混同し易いので、違いに注意して下さい。

余談ですが、防振・防音マットなどに使われる材料にエチレン-酢酸ビニル樹脂(EVA)があります。

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こちらもある程度柔軟性がありますが、ポリウレタンとは別物です。
柔らかさや伸縮性があまりないため、EVAがゲルと呼ばれることはありません。

身近にポリウレタンやシリコーンがないか、探してみて下さい。

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