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レイリー散乱とミー散乱

青空や夕焼けを演出するレイリー散乱
今回は、簡単にできる実験でレイリー散乱を見てみます。

レイリー散乱は光の波長以下のサイズの微粒子が光を散乱する現象です。
昼間(特に正午)は波長の短い青い光が空気中の酸素分子や窒素分子に散乱されるため、空は青く見えます。
夕方になると太陽は地平線に沈み、太陽光が観測者に届くまでの距離が長くなります
すると、青い光は散乱しきってしまい、散乱し難い赤い光だけが届きます。
そのため、空は赤く見えるんです。

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ちなみに、光の波長以上のサイズの粒子が起こす散乱をミー散乱と呼びます。
粒子サイズが大きなため、全ての波長の光を散乱します。
そのため、散乱した光は白く見えます
雲が白く見えるのはミー散乱によるものです。
また、光の通路が見えるチンダル現象もミー散乱によるものです。
雲の切れ間から光が差している様子が見えるのは、代表的なチンダル現象の一つですね。

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では、実験を行ってみます。
用意するものは以下の通りです。

・1.5リットルのペットボトル(同じくらいの長さの容器でもOK)
・豆乳(味付けされていない、無調整の豆乳です)
・LEDライト(スマートフォンのライトでも良いです。)

これだけです。

まずは比較のため、水道水を入れた状態でライトをあててみます。

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当然ですが無色透明のため、ボトル表面で光が反射するだけです。

次に、豆乳を5ml程度加えてよく混ぜます。
LEDライトを上から当ててみると......

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青白くなりました。
豆乳の微粒子(具体的には大豆たんぱく質の粒子)が光を散乱していることが分かります。
では、ライトを横からあててみましょう。

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ライトに近い方は青白いですが、だんだん黄色っぽくなっているのが分かるでしょうか。
大豆たんぱくの微粒子が青い光を散乱するため、端の方は青い光が少なくなります。

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逆からライトをあててみても、同じようになります。
微粒子で散乱され難い長い波長の光が、端の方まで残ります。
黄色や赤い光は波長が長く、微粒子に散乱され難いんです。

次に、豆乳を10mlに増やしてみます。

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濃度が高くなったので、より白っぽくなりました。

横からライトをあてると...

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濃度が高い分、青い光が散乱され易くなっています。
さっきよりも全体的に黄色っぽいですね。

では、倍の20mlの豆乳を入れてみます。

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濃くなったため、光が全体に行き渡らなくなりました。
上の方は少し青白いですね。

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横からライトをあてるとこうなります。
黄白色ですね。
青白い部分はほとんどありません。
濃度が高すぎると色の変化が分り難くなるようです。

ということで、約1.5リットルの水に5ml程度の豆乳を入れるのが観察に適していると言えそうです。

ちなみに、床用のワックスを混ぜると、よりはっきりと色の変化を見ることが出来ます。青から赤味のある色になります。
水中に分散する微粒子のサイズが豆乳と違うため、散乱の仕方が変わるんですね。
豆乳の場合は約400nmですが、床用ワックスは約100nm以下です。結構違いますね。
牛乳は豆乳に近い結果になりますが、無脂肪牛乳以外はミー散乱になるようです。

豆乳の微粒子サイズだと、レイリー散乱よりもミー散乱に近いと思われますが、実験では色の変化が見られたため、100nm近い微粒子も含まれていると考えられます。

このように、微粒子が気体や液体に分散したものをコロイドと呼びます(牛乳、ホイップクリーム、マヨネーズ、霧など)。
コロイドは微粒子と媒質の種類や状態によって様々な呼び方があります。
例えば、エマルション(乳濁液)、ゾル、エアロゾルなどです。
エアロゾルの代表例は煙と霧ですね。

そして、ゲルでもレイリー散乱やミー散乱を観察することができます。

小さな微粒子が集まってできたエアロゲルという特殊なゲルがあるんですが、エアロゲルは半透明かつ青白い色をしています。レイリー散乱によるものです。
ただ、エアロゲルは一般的に入手不可能なので、寒天や蒟蒻でゲルを作ります。

寒天は0.5~1.0%くらいの濃度で作ります。
ただ、寒天は脆くて扱いにくいため、今回は蒟蒻ベースのゲルを作りました。

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使った材料の影響で、黄色っぽいゲルになります。

このゲルにLEDライトをあてます。

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どうでしょう。写真では少し分り難いですが、若干青白くなっています。
肉眼の方が分かり易いですね。

これは、ゲルを構成している高分子が凝集した部分によるものです。
図のように、分子鎖の塊が光を散乱していると考えられます。

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ゲルを作るときの高分子の濃度が高いと、白いゲルになります。
この場合は、ミー散乱が起きていることが多いですね。

市販のゼリーや寒天を食べるとき、LEDライトをあててみて下さい。
全てではありませんが、中には青白くなるものがあります。


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