見出し画像

ロケットの打ち上げと、JAXAと仕事をした話

5/21、H-ⅡBロケットの打ち上げが成功しました。

打ち上げの瞬間はいつ見ても感動的です。
移動発射台には感謝と希望の言葉がありました。
真夜中だったので、Youtubeで録画映像を見ました。

動画の32分時点が、打ち上げ1分前です。
49分から「こうのとり」の解説を見ることが出来ます。

ロケットの打ち上げはとても大変な事業で、打ち上げる地域の人たちや自治体、漁業、航空など、数多くの調整が必要です。打ち上げ日の何か月も前から計画します。そして、天候にも左右されます。
関係者ではない僕が言うのもなんですが、ここには書ききれないほど多くの困難を乗り越えなければなりません。

ロケットの打ち上げは宇宙に物を輸送する事業です。
地球とは全く違う環境の宇宙に、重力に抗ってロケットを飛ばし、目標地点まで運びます。

輸送の依頼を受けるには信用が必要です。
毎回、正確に、確実に届ける。
ロケットとなると、確実に打ち上げること自体が大変です。
かつてJAXA(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構)は
NASDA(ナスダ=宇宙開発事業団)という名前でした。
30代後半より上の方なら、覚えているのではないでしょうか?
2003年に航空宇宙技術研究所 (NAL) 、宇宙科学研究所 (ISAS) と統合して誕生したのが現在のJAXAです。
90年代後半にH-Ⅱロケット5号機、8号機と連続で打ち上げに失敗し、JAXA発足直後のH-IIAロケット6号機も失敗(搭載した情報収集衛星も失う)したときは大きな問題になり、マスコミや世間から散々叩かれました。

しかし、その後は連続して打ち上げに成功し、H-ⅡAと同じエンジンを搭載するH-ⅡBロケットも含めると、5月21日の打ち上げで50回中49回成功、成功率98%となりました。
H-ⅡAはH-Ⅱで問題になっていたコストも大幅に削減しています。
実績で信用を得れば、海外からの衛星打ち上げ依頼も来るようになります。
連続で失敗したときはどうなるかと思いましたが、H-IIA 6号機より後は成功続きで、本当に良かったです。

ここからは、個人的な話です。
以前、特殊なセラミックス材料の研究をしていたとき、JAXAの方とやり取りしたことがありました。
その方は、次代のロケット開発(20年以上先の話)のために新しい材料を探していて、僕が研究中の材料が使えるかもしれないということで、コンタクトがありました。
ご存じの方もおられると思いますが、ロケットの殆どは燃料なんですね。
燃料の入った部分は途中で切り離され、最後に残るのは先頭の部分だけです。
つまり、どれだけ軽量化できるかが課題の一つなんです。
そのために、現行の材料と同じ性能で、半分以下の重さと大きさのものを求めているということでした。
僕もその点は知っていたので
「求めている性能は具体的にどんなものですか?」
と聞いたら
「こんな感じなんです...」
と、見たこともない数式をガーっとホワイトボードに書き始めました。
「これが○○以上の数値で、ここがですね...」
分野が違い過ぎて全く分からないwww
取りあえず、自分が分かる話に調整しました。
「つまり、こういう条件になれば良いんですね?」
「そうです、そうです、そういうことなんです。」
なるほど、この数式はそういう意味なのかw
「ロケットは高温に晒されるので、熱放射がですね...(以下略)」

ということで(?)
まずは材料を提供して評価してもらうことに。
何度かやり取りして、まずまずの結果が出ていたようなんですが、
その方の所属しているグループの評判は今一つだったようで、自然消滅しました。
最初に会って話したときに
「実はお金がなくて、大した額を出せないんですよ。それでも良いですか?」
と困った顔で言われたのが一番印象に残ってます。
さすがにお金をもらおうなんて思ってないので、無償で提供しました。
かくいう僕も、研究費がほぼ人件費のような環境で、装置を自作したり、あり合わせの物や中古品でやり繰りしていたので、なるべく負担をかけずに協力しようと考えていました。

結局、続きませんでしたが、自分の研究したものが宇宙に行くかもしれないという高揚感は今も忘れられません。



読んでいただけるだけでも嬉しいです。もしご支援頂いた場合は、研究費に使わせて頂きます。