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ポリ乳酸とは?

ポリ乳酸(PLA = Polylactic Acid)は、植物由来の資源から作られる生分解性プラスチックです。主にトウモロコシやサトウキビなどのデンプンや糖を発酵させて得られる乳酸を重合して作られます。そのため、従来の石油由来のプラスチックとは異なり、環境負荷が少ないことが特徴です。
ただし、勝手に土に埋めたり川や海に捨てたりしてはいけません。
それなりに環境を整えないと、分解されません。
*タイトル画像は、ポリ乳酸を使って3Dプリントしている様子です。

歴史

  • 1930年代:ポリ乳酸の基礎的な研究が始まりました。カール・メイヤーが乳酸の重合反応を研究し、PLAの基礎を築きました。

  • 1950年代:医療用の縫合糸などに使用されるようになり、生体適合性や分解性が注目されるようになります。

  • 1990年代:工業的なポリ乳酸の製造が実用化され、食品包装など一般用途にも利用され始めました。

  • 2000年代以降:ポリ乳酸の生産技術が進化し、商業規模での生産が拡大。環境に優しい素材として普及し、特に使い捨て製品や包装材料で注目されています。

ポリ乳酸の性質

  1. 生分解性:PLAは、特定の条件下(高温・湿度など)で自然に分解されます。これにより、廃棄後に環境への負荷を軽減できます。繰り返しますが、特定の条件下で分解されるので、家の周辺などにポイ捨てしてはいけません。それでは分解されません!

  2. 硬度・強度:比較的硬度があり、形状を保持する能力が高いです。ただし、耐熱性はそれほど高くなく、約60°C以上になると形状が変わりやすいという欠点があります。

  3. リサイクル性:PLAは他のプラスチックと比較して、リサイクルが容易であり、自然界での分解や再利用が可能です。

用途

  1. 食品包装

    • PLAは生分解性があるため、使い捨ての食品容器や包装材に広く使用されています。特に、カップ、トレイ、ストロー、フィルムなどの製品がPLAで作られています。

  2. 医療分野

    • 生体適合性の高さから、縫合糸、細胞培養の足場材料、ドラッグデリバリーシステムなどに利用されています。時間が経つと体内で分解されるため、手術後の取り外しが不要です。

  3. 3Dプリンターのフィラメント

    • PLAは3Dプリンターの材料としてよく使われています。3Dプリンターには様々な材料が使われていますが、PLAは熱収縮と糸引きが少ないため、プリントしやすく、精度の高いものを作りやすいです。高強度タイプのものもあるので、プロトタイプ製作やホビー用途、治具製作など、幅広い用途で使われています。

  4. 農業

    • 土壌分解性を活かし、農業用フィルムや植栽ポット、肥料包みなどで使用されています。使用後はそのまま分解され、廃棄物としての負担を減らします。

  5. 繊維・衣類

    • PLAから作られる繊維は、衣類や繊維製品にも使われています。特に環境に配慮したエコファッションの分野で注目されています。

続いて、ポリ乳酸の研究について紹介します。
ポリ乳酸(PLA)は、持続可能な素材として注目され、様々な分野で研究が進んでいます。ここからは、過去10年間におけるポリ乳酸に関する研究例をいくつかご紹介します。

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