見出し画像

生石灰の性質とこんにゃく作り

工業的に欠かせない重要な物質、生石灰(きせっかい、せいせっかい)。
正式な名前は酸化カルシウム(CaO)です。

画像1

強いアルカリ性を示す化合物で、水を加えると水酸化カルシウムが生成します。
水酸化カルシウム消石灰(しょうせっかい)とも呼ばれ、蒟蒻の凝固剤として使われています。

生石灰は、石灰岩や貝殻などを熱することで作られています。
以下の反応式のように、炭酸カルシウムの熱分解によって生成します。

スケッチ-193 (2)

セメントの原料や陶磁器、鋼鉄を作るときなどに使われています。
炭化カルシウム(カーバイド)の原料でもあります。

そして、酸化カルシウムに水を加えると発熱し、水酸化カルシウムを生成します。

スケッチ-194 (2)

実際にやってみます(危険なため、真似はしないで下さい)。
酸化カルシウムを水に少しずつ加えて混ぜます。

画像2

すると、発熱しながら水酸化カルシウムが生成し、白濁します。

画像3

ちなみに、水和するときの熱は大きなため、危険を伴います
少量の水だと短時間で100℃に達します

画像4

今回は少しずつ様子を見ながら水に加え、適宜、水の量も増やしました。
それでも、結構なスピードで発熱します。

画像5

画像6

これはかなりマイルドな方です。
水に少しずつ酸化カルシウムを加えるのではなく、酸化カルシウムに水を加えてしまうと大変危険です。激しく反応し、一気に100℃近い温度まで上昇します。

酸化カルシウムは乾燥剤として使われることもあるので、決して水を加えることのないよう、気を付けて下さい。
また、素手で直接酸化カルシウムを触ってはいけません。ごく少量の汗でも反応します。

実は、この発熱反応は火も煙も出ないため、弁当を温める用途に使われています。
紐を引いたら温まる弁当がそうです。
あれは酸化カルシウムと水を混合し、その反応によって生じた熱で弁当を温めているんです。
紐をひくと、「ジュワー」という激しく反応する音が出るので驚きますが、心配はありません。
すぐに反応は終わり、温度は下がっていきます。
酸化カルシウムは水酸化カルシウムに変化しますが、そのまま廃棄しても問題ない物質です。

そして、水酸化カルシウムの水溶液は強塩基性です。
pH試験紙を漬けると、14以上という結果になりました。

画像7

これは指標が14までというだけなので、実際にはもっと高い数値です。
酸性側もそうです。指標では0までですが、強い酸はもっと低くなり、マイナスのpHになります。
学校では0~14までしか扱いませんが、実際の研究や製造業ではその範囲外のpHがよく出てきます。
この事実は学校でもしっかり教えるべきですね。教材にも問題があります。

写真は素手ですが、手袋をして下さい...。
僕は酸化カルシウムの水和よりも遥かに危険な反応や物質を何度も扱ってきたため、ある程度知っているものはつい素手でやってしまいます(^^;)
もちろん、何が起きても自己責任です。
でも、真似はしないで下さい。
*保護メガネはしています

水酸カルシウムは、かつてはグラウンドなどに白線を引くラインパウダーとして使われていました。
しかし、その水溶液は強い塩基性を示すため、使われなくなりました。

そして、こんにゃくの凝固剤として今も使われています。
生石灰から作った水酸化カルシウムで蒟蒻を作ってみましょう。

画像9

まず、市販の蒟蒻粉にお湯を加え、良く混ぜます。
濃度は重量で3%です。

画像9

混ぜると蒟蒻粉が吸水して膨らみ、糊状になります。

画像10

よく練って30分寝かせた後、生石灰から作った水酸化カルシウム水溶液を少量加え、よく練り混ぜます。

画像11

画像12

よく練ると、さっきよりも粘性のある糊状態になります。

画像13

そのまま30分寝かせた後、熱湯に入れて1~2時間煮ます。

画像14

熱湯に入れた直後

画像15

1時間後。写真では分り難いですが、ギュッと凝集して固まったことが一目で分かります。

画像16

蒟蒻の完成です!

画像17

しっかりとした、弾力のあるゲルになりました。

水酸化カルシウムは劇物ではないため、河川や土壌の中和剤や凝集剤に使われています。
他に、食品や化粧品のpH調整剤、殺菌剤としても使われます。
微生物を不活性化させるため、消毒剤としてよく使われています。
鳥インフルエンザの発生でよく消石灰が散布されていますが、高濃度かつ長時間でないとウイルスへの効果はありません。それなりの量を繰り返し散布する必要があります。
細菌とウイルスは全くの別物です。この辺りを認識しておかないと、対応を誤ることになります。

そういえば、漆喰の主成分も水酸化カルシウムでしたね。

このように、生石灰(酸化カルシウム)は様々な用途に使われる重要な物質なんです。

ちなみに、石灰というのはカルシウムを含む無機化合物の総称です。
石灰岩はカルシウムの酸化物や水酸化物が多く含まれているため、石灰という名がついているんです。
水酸化カルシウムが消石灰と呼ばれるのもそれが理由です。


読んでいただけるだけでも嬉しいです。もしご支援頂いた場合は、研究費に使わせて頂きます。