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黒い深海生物

光の届かない深海。
深海生物は僅かな反射光を目印に、獲物を探します(超音波などで探知する生き物もいます)。
今回は、隠れる場所がほとんどない深海で生き延びるため、漆黒に身を包む手段を選択した魚をご紹介します。
グロテスクなので閲覧注意

黒い深海魚で真っ先に思い浮かぶのがチョウチンアンコウです。
最も良く知られている深海魚だと思います。
チョウチンアンコウと言っても、たくさんの種類がいます。
下の動画はクロアンコウというチョウチンアンコウの一種です(正しくは、オニアンコウ科)。

そして、これは江ノ島水族館(現在は新江ノ島水族館)で飼育されていたチョウチンアンコウの映像です。

光っている様子を見ることが出来ます。
この映像は1986年のもの。
というのも、チョウチンアンコウの飼育は難しいんです。
滅多に見ることが出来ません。
江ノ島水族館でも、飼育したのは過去に二度しかないそうです。
頭に付いた突起が発光することで知られていますが、実際に確認されたのは20世紀に入ってからで、目撃例は多くありません。
江ノ島水族館の映像はかなり貴重なものと思われます。
標本はたくさんあります。

体表はゼラチン質で覆われています。深海生物はゼラチン質で覆われている種が多いようですね。水圧の影響を和らげるためでしょうか?
そして、黒い色をしています。深海の闇と一体化し、誘因突起の光だけを目立つようにしているんですね。
獲物は小さな生き物だと思い込み、近づいてしまうわけです。

チョウチンアンコウの中で最も黒いのがユメアンコウ属です。
なんと、99.95%の光を吸収します。

ミツマタヤリウオも同じくらいの光を吸収します。

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ミツマタヤリウオ(https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/07/99-7.php)


深海にはもっと黒い魚が居ます。
99.9%の光を吸収してしまう体表を持っていると、存在そのものが闇と言っても過言ではないでしょう。

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ダイニチホシエソ属のEustomias pacificus(https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/18/042000181/?P=2)

あんまり凝視したくないですねw
ミツマタヤリウオ亜科やダイニチホシエソ科は、ワニトカゲギス目に属します。こんな見た目の魚が多いです。
そして、チョウチンアンコウと同じく生物発光をします。

こちらはオニキンメ。
300~500mの深海に生息しています。

鋭く大きな牙が印象的です。
名前の通り金目鯛の仲間ですが、目撃例はとても少なく、動画はオニキンメを捕らえた数少ない貴重な映像のようです。

ほぼ全ての光を吸収する生物の体表には「メラノソーム」という小胞器官が含まれています。
メラノソームに含まれるメラニン色素が光を吸収するため、生き物の体表は真っ黒に見えます。
メラニンは多くの動物が持っています。紫外線から皮膚・身体を守る大切な役割を担っています。日に焼けると黒くなるのは紫外線に反応してメラニン色素が生成されるためです。
真っ黒な深海生物は、常に黒いメラニン色素で覆われているんですね。

メラノソームではありませんが、以前取り上げた暗黒ゴムシートも、99.9%の光を吸収するものでした。

深海生物は暗い色をしているものが多い一方で、赤色の生き物もよくみかけます。
理由は簡単で、赤い光は深海まで届かないため、深海生物は赤い光を見ることが出来ないんです。
赤い光が届かないから、見る必要が無いんでしょうね。
ただし、その特徴を逆手に取って(?)、赤い色を見ることの出来る深海生物も居ます。油断ならないですね(^^;)

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赤い深海生物と言えば、タカアシガニですね(Wikipedia)

タカアシガニは世界最大の節足動物です。
主に200~300mの深海に生息し、産卵期には水深50m程度まで上がってくるそうです。
飼育が容易なため、多くの水族館で見ることが出来ます。

そういえば、先日ご紹介したダンボ・オクトパスは、周囲の色と体色を合わせる深海生物でした。
色んな生き物が居ますね。


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