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世界最長の生物、クダクラゲ

クラゲといえば傘が特徴的ですが、クダクラゲには傘がありません。
そして、多数のクラゲが繋がった群体生物です。
そのため、クダクラゲの見た目は多種多様です。
主に外洋域を浮遊していますが、深海に生息するものもいます。

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クダクラゲの仲間(https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/2054/)
写真のクダクラゲは、オレンジの幹(かん)に遊泳個虫がたくさん繋がっています。そして、幹は群体全体に栄養を運んでいます。

クダクラゲはヒドロ虫綱(ちゅうこう)に属します。
刺胞動物はポリプが固着するイソギンチャクと、浮遊するクラゲに分かれますが、このポリプが発達したものをヒドロ虫と呼びます。
クダクラゲはヒドロ虫が集まった群体ですが、パッと見だとそうは見えません。どう見ても一つの生き物です。

代表的なクダクラゲはカツオノエボシです。
刺されたときに電気ショックを受けたように感じるため「電気クラゲ」の異名を持ちます。触手に猛毒の有る危険なクラゲで、刺されると死に至ることもあります。

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カツオノエボシ(Wikipedia)

上の方は浮袋で、傘ではありません。
そして、浮き袋から触手が伸び、その長さは約10m。長いものだと50mに達します。

最近、観測史上最長のクダクラゲがオーストラリアのニンガルー・リーフの深海で発見されました。
海中に漂うヒモのようですが、大型クダクラゲの一種、アポレミアというクラゲなんです。
全長は推定120mと考えられ、シロナガスクジラを超えるかもしれないと言われています。

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アポレミア(https://gigazine.net/news/20200409-siphonophorae-deep-sea/)

アポレミアは、なんと数百万の個体が集まり、長いヒモのようになっています。
興味深いのは、単一の受精卵から各個体が生まれ、それぞれの個体が役割分担をしていることです。
「神経毒のある触手を広げる個体」「獲物を消化する個体」「移動のために海水を噴出する個体」「精子や卵子を生成して生殖する個体」などの役割分担があり、その役割は10種類以上あると考えられています。一つ一つは単純でも、集まると複雑な機能を持つ生物のようですね。
複数の役割を上手く機能させるには、各個体が情報を共有する必要があります。しかし、どうやって各個体が連絡を取り合っているのかは謎なんだそうです。
さらに、深海の生物はゆっくりと成長するため、発見されたクダクラゲは数十年~数百年生きている可能性があるとのことです。
魚や甲殻類を捕食するそうですが、どのようにして獲物を捕まえるんでしょうね。

個人的な見解ですが、クダクラゲに獲物が接触すると、自動的に神経毒のある触手が獲物に向かって広がり、続いて口のようなものが開いて捕まえるようになっていると思われます。つまり、表面に刺激に応答するセンサーがついているのではないかと。
圧力がかかると電圧を発生させる電場応答性ゲルと似たものを持っているんでしょう。
情報の共有も、刺激などを電気信号やpH変化で伝えている可能性があります。
深海生物の調査はとても難しいので続報があるか分かりませんが、どんなメカニズムを持っているのか、ぜひ知りたいですね。

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