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世界最古の化学・医薬品メーカー「メルク」

ドイツのメルク(MERCK)という企業をご存じでしょうか?
タイトルの通り、化学や医薬分野でよく知られている、世界的な大企業です。
何をしている企業ですか、という問いに一言で答えるのが難しいくらい、様々な事業を展開しています。
ヘルスケア(不妊治療や癌の治療など)、ライフサイエンス(食品・飲料の検査、体外診断薬、医薬品の製造など)、マテリアル(ディスプレイ、自動車、建築、研究用試薬、化粧品、顔料、半導体などの材料)と、
メルクの事業は挙げればきりがありません。
研究開発を積極的に行っているのもメルクの特徴です。
毎年、売り上げの約20%を研究開発に投じています。

そんなメルクですが、なんと創業したのは1668年。今から350年以上も前のことです。
ドイツのダルムシュタットで、フリードリッヒ・ヤコブ・メルクが天使薬局という薬局の経営権を取得したところから始まります。

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ダルムシュタットの天使薬局の絵。ここからメルクの歴史が始まった(Wikipedia)

19世紀に入ると、薬品の研究開発を行う企業に転身します。そこから規模を拡大し、海外(イギリス、アメリカ、ロシア)にも拠点を置きます。
第一次大戦後に海外の拠点は連合国に接収されますが、その後も医薬品・化学品の研究開発・製造によって成長を続けました。
ちなみに、このとき接収されたアメリカの拠点はメルク・アンド・カンパニーとして独立し、世界的な製薬企業に成長しました。
その後、本家のメルクもアメリカに再度拠点を置いて活動しています。
通常、メルクと言ったらドイツの本家メルクのことを指します。

メルクは自社での研究開発だけでなく、積極的な買収も行い、事業を拡大しています。
個人的に驚いたのは、世界的な化学薬品メーカー「シグマ・アルドリッチ」とバイオサイエンス企業「ミリポア」の買収です(どちらも米国企業)。
化学研究に携わっている人にとって、シグマ・アルドリッチは研究用試薬で、ミリポアは超純水製造装置・フィルターでお馴染みです。
メルクはこの2社の買収によって、ライフサイエンス分野の事業を強化しました(ミリポアは2010年、シグマ・アルドリッチは2015年に買収)。

350年以上も続いているのは、常に変革を続けてきたからだと思います。

実は、メルクは創業してから現在まで、一貫してメルク家が経営するオーナー企業です(メルク家が70%の株を保有)。事業にはほとんど関与せず、経営の監督のみを行っているそうです。メルク家では株主となる者に相応の教育を行っていると言われています。

2015年、メルクは企業ロゴを変更しました。

特徴的な形のロゴは、顕微鏡で見た細胞をイメージしているそうです。
これまでの青色のMERCKロゴとは随分印象が違います。
ライフサイエンスにより力を入れるという意思の表れなのかもしれません。

変化を恐れない積極的な姿勢が変わらない限り、メルクはこれからも世界の化学・医薬品業界をリードする企業であり続けると思います。

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