見出し画像

頼っても、決して「丸投げはしない」というお話

以前からイベントに出演する人や曲を聴いてくれる人に、うまく自己紹介ができて、かつ配信されている曲へのリンクなどが掲載されている広告媒体が作れないか、と考えてはいたのですが、先月(2023年7月14日)にオープンマイクに出たときに、それを「名刺」という形でやっている方がいて、「これだ!」と思いました。
下手の横好きではあるのですが、中高生の頃は音楽と同じくらいイラストを描いたりすることにも興味があったりして、よくノートやスケッチブックなどに書いたりしていました。授業中に取るノートなんかもイラストの落書きだらけでした。

介護福祉士の受験勉強をしていたときのノート。
当時、訓練校で同じ受講を受けていた生徒さんの似顔絵イラストをこっそり落書きしていました。

僕の周りのミュージシャンの方やDJさん、パフォーマーの方は、その方面のプロフェッショナルの方も多く、中には自分でグッズを作っている方もいたりして刺激を受けたりします。
今回は、そういった刺激から得たインスピレーションの放出と、今、音楽制作のプロセスでも一部で取り入れている「AIとの付き合い方」について、話をしていきたいと思います。

「ししょうクン」誕生へのプロセス

音楽酒場ブギでオープンマイクに出るようになって、和服を着て、扇子を持って歌っていたからか、一部では「師匠」というニックネームがつきました。個人的には呼ばれて悪い気がしないどころか、むしろ喜んでいるニックネームの一つです。
この「師匠」と言うニックネームについては、今後の活動においても、何かと使っていきたい自分の音楽活動におけるキーワードの1つでもあります。

「師匠」と呼ばれる所以のスタイル

前述したように自分の周囲ではグッズ展開している人もいることにヒントを得て、プロモーション用の名刺や、その他印刷物など、何かにつけて、自分の代わりになる「アバター」みたいなキャラを作ろうと思いました。

そのアバターとなるキャラクターは、もちろんトレードマークである「扇子」「和服」「ダテメガネ(以前はダテでしたが、今は遠近両用の度付きメガネです)」は外せないアイテムなので、それらを生かしたキャラにしようと思い、作業開始です。

かなり久しぶりにイラストを描いてみることになる訳ですが、その段階を少し紹介します。

まず、↑の元になった画像から、キャラの草案みたいなものをコピー用紙に鉛筆で落書きします(スキャンではなくカメラで撮ったものが①)。
そして、それを下書きにして、iPadのAdobe Frescoを使って、簡単なペン入れと色の塗りつぶしをしました(②の画像)

そして、そこからが今何かと話題のAIの出番です。

その②の画像を元に、キャラクターになるような画像を、ひとまず作ってもらいます。僕が使ったのはiPhoneのアプリで、「画像生成AI」というStable DiffusionというAIを使った画像生成アプリを使いました。
無料で生成の間にたくさん広告を見る必要はあるのですが、いくつか、いろんなAIを使ったものの中で、個人的には一番使い勝手が良かったと思います。そこで②の画像を元にAIに「呪文」と呼ばれる指示を与えて、画像を生成してもらうことになるのですが、その過程でできたもの一部が③と④、実際はもっとたくさん作ってもらっています。

そこでなぜAIを使ったか?というと、②の画像を見てわかるように、②ではほぼ単色でベタ塗りつぶしをしているのですが、そこから、ちゃんとした彩色をするために参考画像を作ってもらうのが第一の目的です。

そして、AIによる生成→Flescoで書き込み、を延々と繰り返しながら、段々とキャラがいい形になってきます。⑤~⑧はその繰り返しをしながら、AIに作ってもらっていた画像です。

こうして、AIの画像作成を待っている間に寝落ちしたりしながら、彩色やペン入れの直しや顔の書き直し…とやっていくうちに出来上がったのがこれ!

Yu Katsuragi のアバター「ししょうクン」

今、自分が使っているSNSのほとんどで自分の画像の代わりに使っている、名付けて「ししょうクン」が出来上がりました。

まだ、数々のパターンを作っていきたいので、キャラを固めるために、歌と同じくらいキャラを描く練習が必要になってきそうです…。

もう1つ。音楽と同じくらい活動に大切なウエイトをおいているランニング用の「ししょうクン」も描いてみましたが、まだ描きこみが全然足りていないので、顔がまだ定まっていません。でも、これもかわいくていいです。

ランニング仕様の「ししょうクン」

画像生成以外でのAI使用例

僕が人生で一番最初に「AI」という言葉と出会い、それに触れることになったのは、実はもう30年以上前のことになります…と言っても、僕と近い世代の人は、同じAIに触れた人は多いだろうと思います。

それは1990年にエニックス(現:スクウェアエニックス)から発売されたファミコン用RPG「ドラゴンクエストⅣ 導かれし者たち」の戦闘にAIが導入され、以後のドラクエのシリーズで定番となる「さくせん」の礎になったものです。
まあ、当時のAIも「学習機能」を売りには出されていましたが、例えば即死呪文である「ザラキ」を効かない相手に打ちまくるクリフトなんかが、よくネタにされます。ファミコンでは「ザラキが効かない敵」を失敗からAIが学習してくれるらしいのですが、ただ、そこには弱点があり、基本1回だけのバトルとなるボス戦で、絶対効かないはずザラキを打ってしまうという暴挙に出る頭の悪さが露呈してしまうのが、AIの弱点といったところかもしれません。結局、次作のドラクエ5からは「さくせん」に、マニュアルでコマンド指令ができる「めいれいさせろ」という作戦が加わりますが、ゲームにおいては、それが一番無難で確実なプレイなのかもしれません。

話をゲームから戻して、今回は「ししょうクン」を作るにあたって、AIに大活躍してもらいましたが、最近は時短のためもあって、いろんなところでAIに活躍してもらっています。

そのうちの1つが、初めて仕事のためにAIを使った研修資料。
今月の職場研修の資料とMCを担当することになったのですが、その資料作成のためにCHAT GPTを使いました。

あと、肝心の音楽制作でもAIを使っている部分があります。
それが自分の苦手とするミキシングとマスタリングにおいての部分です。

音楽面でのAI使用については簡単にプレイリスト作成についての話で書きましたが、ミックス、マスタリングにおいて活躍してもらっているのがiZotopeのプラグインの数々です。ミックスではNeutron、マスタリングではOzoneです。アルバム「Dialogue 1991」をお蔵入りした2018年版から、リリースされた2023年版に作り直した時の(その過程の話は前回の記事で)大きな違いは、これらのツールが加わったことが一番大きな違いでした。
「Dialogue 1991」のやり直し作業については、これらのAIを使っても、かなり作業が難航した部分もありましたが、制作ツールをアップデートして一新した後に作った「GuzzMix」の制作作業に関しては、うまく付き合えるようになってきたか、と思います。

ちなみに、これはまだ自分ではやってはいませんが、個人で楽しむ範疇ですごく興味があるのAIカバー。有名な曲を他のアーティストや、亡くなったアーティストに歌わせるAIによるカバー動画が今、Youtubeでトレンドの1つになっていますが、僕はそれを自分の曲でやってみたい好奇心があります。
個人的に気に入っているAIカバーの動画を紹介します。今、UKで10数年ぶりにチャートでTOP10に入るくらいの異例のシングルヒットしているカイリー・ミノーグの「Padam Padam」のマドンナのボーカルによるAIカバーです。これはかなりよくできていますね。本人が歌っていると言ってもいいくらいです。

あくまでもAIが作るものは「提案」に留める

ただ、クリフトのザラキ連発を引き合いにAIにも弱点があることを書いたように、AIに絵を描かせてみたらわかるのですが、指が6本指だったり、ランニングする人を描かせても、右足と右腕が同時に出ている絵を描いたりするなど、実はそこまでAIも万能ではありません。実際、間違いがない、まともな絵を描いてくれることは稀なケースで10枚に1枚あればいい方です。
CHAT GPTが質問に対して出す回答にも「間違い」が含まれていることは十分にあって、その辺、AIが作ったものに対して、人間の判断で「チェック」を行う作業が必要であることは間違いないものだと思います。

僕は音楽面で使うにしても、AIがしてきた回答については、「こんなのどう?」という提案なのだと思って接しています。

作業内容においては、そういったAIからのサジェスチョンを受けることなく、「めいれいさせろ」と同じように自分自身で作業を0~完成まで出来る、もしくはその方が効率が良くて速いのであれば、AIは全く無用の長物になるだろうと思います。

確かにAIは、効かない相手に即死呪文を唱えるような間抜け、もといお茶目な一面も持ってはいますが、「自分でできないこと」や「苦手なこと」を補助する部分、あとパターンが決まっているものにおいて作業時間を短縮する部分においては、その提案を考慮に入れる、ヒントをもらう、あるいは選択肢に入れてもいいのではないかな、と思っています。

さすがに採用はしませんでしたが、試しにCHAT GPTに作詞をさせてみたことが何回かあります。ポップス音楽における「歌詞」においては、別にそのまま使っても遜色ないと思うものを書いてくれますし、正直、自分で申告しなければ、AIが書いたものか、自分で作ったものか、確かめようがないと思ったし、これは確かに夏休みの読書感想文の宿題には使ってはいけない、と50歳手前の大人は思いました。

しかし、AIを使えば自分のオリジナリティが損なわれるか?ということに関しては、それも違うとは思っていて、「自分の作品」と思っているものも、実際、自分で学習したり、受けた影響から作られているものだと思えば、AIからの提案を受けることだって、そう変わりはないと思います。圧倒的にそのスピードが速いだけで。

なので、ここでタイトルのフレーズが出てくるのですが、AIに頼ることはあっても、決して「丸投げ」しない、ということが重要になってくるかな、と思います。これから自動車の自動運転なんかも出てくる時代になると思いますが、自動運転に丸投げされた車が運転手なしで走っているなんて、僕から見たら恐怖でしかないです。

それは、僕が仕事にしている「介護」といった福祉にも同じことが言えると思います。「自分でやるのが困難なこと」を「その道のプロ」や「専門家」にお願いすることは決して悪いことではありません。ただ、そこに「任せきり」で「丸投げ」して欲しくはありませんし、任せる側からしても「丸投げ」したくはありません。必ず、自分のその目で納得いくように、その仕事をチェックするべきだと思います。

将来、AIに仕事が奪われる、といった事態が出てくるでしょうが、逆にAIに任せられるような仕事なら、どんどん利用して効率化できた方がいいのではないか、と僕は感じています。
僕の現場である福祉の場面でもそうです。実際、少しずつパソコンを使って必要書類や請求の計算といったものがデジタル化されてきてはいますが、それを報告する手段が未だにファックスだったり、バイタルサインや日常の記録も基本手書きだったりと、全然進んでいない場面もあります。顔認証の出退勤記録(以前タイムカードと呼ばれたもの)が、やたらハイテクに思えるくらいです。むしろ、それを進めるために、結果的に業務効率が良く、働きやすい職場環境になるなら、試行錯誤や数々の失敗も重ねて議論しながら、進めてもいいと思います。マイナンバーの保険証や運転免許の一元化なんかもそうで、紐づけされた方が便利、ということの他にも、認知症の家族とのやりとりの中で、マイナンバーと保険証などの紐づけがあることのメリットを、ひしひしと感じました

最後は、少しAIから話が逸れた部分もありましたが、僕は「使えるものは使う」、というスタンスでこれからもやっていこうと思っています。できれば僕のように、なるべく音楽制作なら、歌から、作詞・作曲・編曲からミックス、マスタリング、果てはジャケット作りなどに至るまで、一人でやっている人からしたらAIは、ちょっとお茶目だけど、よい提案者になってくれるだろうと思います。これから先、年齢的な部分もあって、どこまで新しいことに対応できるかはわからないけど、できる限り食らいつけていけたらいいな、という希望は持ち続けたいです。たとえ、物忘れが気になっていて、同僚の名前をド忘れして出てこなくなってきているとしても。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?