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現代における「イデオロギー」の価値ってなんだろう?

日本維新の会が共産党を「イデオロギー政党だ」「日本から無くなったらいい政党で、言っていることが世の中ではありえない」などと批判した.

現代において「イデオロギー政党」ということばは主に批判的文脈で用いられる.市民感覚を第一に政治と向き合うポピュリズム政党にとって,「イデオロギー政党」とは敵そのものなのである.

たしかに,政治家が市民感覚を欠落させ,イデオロギーに傾倒して頭でっかちになるのは,国民の代表者たる政治家の態度としては間違っているのだろう.
しかし,かといってイデオロギーを持つことが無意味であるとは決して思わない.むしろ,政治家はイデオロギーを持ち,「政治家としてどんな社会を目指すのか」を明確にしたほうが良いのではないか.

イデオロギーとはなにか

野党政治家が「誰も貧困に苦しまない社会をつくる」とか,「国の税金を防衛費ではなく教育や福祉に回そう」とか,そういうあるべき社会の理想を掲げたとする.

たしかに,そういった理想が現実となれば,今よりもずっと幸福な社会が実現するだろう.
しかし,前に挙げた目標が,実際に現実のものとなると考える有権者はどれほどいるだろうか.むしろ,「理想だけ掲げても実際にできるかはわからんだろう」と考える有権者が大半なのではないだろうか.
野党には実績がないのだ.
だから,いくら立派な目標を掲げたとしても,先に挙げたように,「理想だけ掲げても・・・」という理由で,有権者に野党が信任されることがなく,
野党がどれだけ正しいことを言ったとしても,野党は選挙に勝てないのである.

私は,イデオロギーとは「理想を現実のものにするための手立て」だと思っている.

例えば,「国の税金を防衛費ではなく教育や福祉に回そう」という理想を現実のものとしようとしたとき,必ず「中国に攻められる」だとか,「北朝鮮にミサイルを撃ち込まれる」だとか,そういう風に主張する人が一定数いる.
中国は覇権主義的な行動を強めるばかりだし,北朝鮮はミサイル開発に邁進しているから,そういう疑念を抱く人が少なからずいるのは当然だろう.

ここで「イデオロギー」の出番なのだ.
日本の防衛費を削減したときに,実際に中国や北朝鮮は日本に攻めてくるのかどうか,一切の感情を排除して論理的に考え,「こうすれば、中国や北朝鮮が攻めてくることはないのだ」という理論を打ち立てればよいのである.
そうすれば,「国の税金を防衛費ではなく教育や福祉に回そう」という理想が,現実のものとなるからである.

SEALDsにはイデオロギーがなかった

数年前,安倍政権の暴挙に若者が立ち上がり,「自由と民主主義のための学生緊急行動」(以下:SEALDs)を結成した.
SEALDsが60年安保のときのような巨大なムーブメントになるかと思いきや,実際には多くの若者が一斉に立ち上がるムーブメントは巻き起こらず,さらに特定秘密保護法も戦争法案も可決を許してしまった.SEALDsは敗北したのである.なぜSEALDsは負けたのか.
その根本原因は「イデオロギーがなかったから」ではないだろうか.

「中国に攻められたらどうする?」
これに対してのSEALDs代表の回答はこうであった.

「中国が戦争を仕掛けてくるというのであれば、そんなに韓国と外交がうまくいかないのであれば、アジアの玄関口に住む僕が、韓国人や中国人と話して、遊んで、酒を飲み交わし、もっともっと仲良くなってやります。」

中国が攻めてきても酒を酌み交わして仲良くする,それが抑止力になるのだ,と言われたところで,国民の大多数は納得しないだろう.
SEALDsには理想があっても,その理想を現実のものとする手立てを持っていなかった.
だからこそ,SEALDsは敗北したのである.

対照的に,60年安保の時代には,新左翼セクトが自らのイデオロギーのもとに運動を行い,結果として多くの大学生が参加する巨大なムーブメントとなった.日米安保の成立こそ許してしまったものの,学生運動が当時の若者に与えた影響は計り知れないものだっただろう.

「資本論を読み始めたばかり」の共産党幹部

昨今の日本社会には,イデオロギーを蔑ろにする風潮が強まっている.
共産党の吉良よし子は,共産党の幹部であるにもかかわらず,「資本論を読み始めたばかり」らしい.
「理想を現実のものとする手立て」なしに,どのようにして共産主義社会を実現させるのだろうか.

「誰も貧困に苦しまない社会をつくる」
「国の税金を防衛費ではなく教育や福祉に回そう」

大層な理想を掲げるだけでは,多くの人は賛同してくれないのだ.
だからこそ,リベラルは理想を掲げるだけでなく,イデオロギーで理論武装をして,「理想を現実にするための手立て」を持つべきではないだろうか.

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