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お花畑左翼は世界史教科書を読もう

「左翼は頭がお花畑だ」という批判を時々見かける。
反戦や平和といった理想を掲げる左派は、リアリズムの立場からすれば理想主義的であるように映るだろう。

本来、左翼というのは左翼思想に立脚した強固な理論を持つため、まったく理想主義的ではないはずだ。しかし、左翼思想を持たず単に理想だけ思い描いている、いわば「空想的左派」も一定数存在するのである。そして、そうした「空想的左派」の存在が、左派の支持が伸び悩む一つの要因になっているように感じる。

仮に「中国に侵略されたらどうする?」と訊かれたら、彼ら/彼女らは何と答えるのだろうか。おそらく「中国が日本を侵略するというヘイトはやめろ!」と論点をずらすことしかできないのではないか。
「空想的左派」は本を読まないから、左翼思想も理解していないのである。
しかし、「空想的左派」がそのような態度をとり続けるのであれば、大衆の支持は一向に得られない。
左派が支持を拡大するためには、イデオロギーを持たないといけないし、つねに勉強し続けなければならないのである。

右派への拒否感から左派に共感し、左に傾くというのはよくあることであろう。どういうきっかけで政治に関心を持ったのかは別として、右派への拒否感から左派のいうことを全部肯定するというのは間違っている。
イデオロギーとはideologyと書く。語根<log>「話によって議論する」をもつことからも分かる通り、イデオロギーの欠如とはすなわち論理性の欠如である。
時として、論理性を排除し、感性を以ってして大衆に訴えかけることは必要であろう。しかし、左派政権の樹立を望む左派市民の態度、言い換えればかなりゆるい形ではあるが、マルクス・レーニン主義における「前衛」の態度として、論理性を欠くというのは絶対的に間違っている。
かつて旧ソ連でマルクス主義が歪曲され、スターリン主義という怪物が生み出されたこともあるのだ。右左を問わず、多様な意見・主張を取り入れ、咀嚼して自らの頭で考える、ということが必要である。

さらに「空想的左派」について悪質なのは、右派からの的確な指摘を「ヘイト」だと受け取り、一切の批判を受け付けないことにある。
もちろん、排外主義的な悪質な意図を持った右派による左派への攻撃、ヘイトも存在するものの、中道保守的立場に立ったリアリズムに対しては、十分に議論できる。
イデオロギーが語根<log>を持つことは先にのべた。
イデオロギーをもつ者は、自らと異なるイデオロギーをもつ者に対しても、積極的に対話を行う必要がある。
この人が言っているから正しいだろう、という認識は禁物である、大事なのは「誰が言ったか」ではなく、「何を言ったか」である。

ここまで述べても、「リベラル」が頑なにイデオロギーを持とうとしないのは「共産主義への忌避感」があるからだろう。池上彰によると、「リベラル」とは「左翼と呼ばれたくない人たちの自称」だそうだ。
1991年に崩壊したソ連、改革開放により資本主義国家へと変貌した中国、金王朝の独裁的支配によって統治される北朝鮮・・・確かに、20世紀の共産主義は「敗北」した。東側諸国のバックグラウンドを失ったことにより、「共産主義への忌避感」は左派の間にも広がっている。今日において「左翼」を積極的に自称するのは、「革命的左翼」を自称する新左翼党派くらいしかないのではないだろうか。
しかし、資本主義が正しいとは思えない。コロナ禍における格差拡大やNATOの膨張と米中新冷戦。ウクライナ戦争を契機に、世界が2つに分断され溝が深まっている。それら諸問題に対する処方箋として、左翼思想が見直される時が来たのである。

左翼思想や理論について勉強するにあたって、その土台として基礎教養を身に着ける、ということが必要になると思う。
たとえば、ウォーラーステインの「近代世界システム論」は、主権国家を「中核」と「周辺」に分けて、資本主義世界経済における国家間の格差(現代における南北問題に通ずるところもあると思う)について論じたものであるが、その理論を理解するためには、世界史における16世紀の主権国家の成立について理解していなければならない。
また、マックス・ヴェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』を読むためには、カルヴァンの宗教改革や資本主義の成立について理解していなければならないのである。
ここでいう、基礎教養は、高校レベルの地歴公民を指す。特に、高校レベルの世界史だ。
「空想的左派」はまず世界史の教科書を読み、基礎的な教養を身に着けてから、左翼思想について勉強し、理論を身に着けるべきであろう。

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