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閲微草堂筆記(206)一言の恨み

巻十 一言の恨み
 五軍塞の王生が言うことには、とある農夫が夜に棗林の見張り番をしていたのだが、林の外に人影のようなものを見た。農夫は盗人かと疑い、ひそかに様子をうかがった。

 すると、まもなくして東の方角からもう一人、何者かがやって来て人影に尋ねた。

「こんなところに立っていて何かあったのかい?」

 人影が答えた。

「俺が棺に入った時、傍で何某がこっそりと『めでたいなぁ』と言っていやがったんだ。その恨みを募らせること二十年あまりになる。今、奴もまた地獄の役人捕らえられたのだ。俺はここで奴が縛られて通り過ぎるのを待っているのさ。」

 人の怨毒とはなんと甚だしいものか!

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