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閲微草堂筆記(217)狐のしっぺ返し

巻五 狐のしっぺ返し
 平原の董秋原が言うことには、海豊県(現在の広東省轄県)に僧寺があったが、もとより狐が多く、しばしば瓦や石を投げ込み人々を揶揄っていた。

 一人の読書人がこの僧寺の東側の部屋を三棟借りて学生たちに教えていたが、このことを聞くや、自ら仏殿に詣でていき、狐たちを厳しく𠮟りつけた。それから数晩はいたって静かなもので、読書人は得色を浮かべていた。


 ある日のこと、寺の主人が訪れて話をしていたのだが、読書人が拱手してお辞儀をした際に、たちまち袖の中から巻物が一巻、地面に落ちた。これを取って見てみると、すなわち春画であった。
 主人は押し黙り、次の日、生徒たちは来なかった。

 狐が人を犯していないというのに人の方が狐を犯すと、かえって狐の術中に嵌ることになる。
 君子が取るに足らない者たちの相手をする時は、ただただ慎んで備えておくのみなのである。何の理由もなく彼らの切っ先に触れれば、その多くは敗れることになるのである。

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