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閲微草堂筆記(271)二人の術士

巻一 二人の術士
 安中寬が言うことには、その昔、呉三桂(明末清初の将軍。三藩の乱を起こし、周王朝を建てて皇帝を称したが清に滅ぼされた。)が謀叛を起こした時のこと、六壬(占いの一種)に精通していたとある術士が、呉三桂の軍に身を投じようとした。
 たまたま出会ったもう一人の術士もまた、呉三桂の軍に身を投じたいと言うので、ともに宿に泊まることにした。

 術士が西の壁の下で寝ていると、もう一人の術士が言った。

「君、ここで寝てはならないよ。この壁は亥の刻に倒れるだろうからね。」

 術士は答えた。

「君の術はまだまだのようだね。壁は外に向かって倒れるのであって、内側には倒れてこないのだよ。」

 夜になって、はたしてその通りになったという。

 私が思うに、この話はこじつけである。
 この人は壁が内側外側どちらに倒れるかまで知ることができたというのに、呉三桂が敗れることになるとは知らなかったのだろうか。

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