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閲微草堂筆記(260)羅洋山人の詩
巻一 羅洋山人の詩
莆田(現在の福建省中東部)出身の教諭であった林霈は、台湾での任期を満了し、北へと向かっていた。
涿州(現在の河北省東部)の南にたどり着いたところで、彼は車を降りて小用を足した。ふと見れば、廃屋の壁に磁器の欠片の先でひっかくようにして詩が一首刻まれてた。
騾綱は隊隊として銅鈴を響かす
清暁寒を沖き 驛亭を過ぐ
我 自ら鞭を垂れ残雪に玩る
驢蹄 緩やかに踏む乱山の青
(騾馬の隊商は隊列をなして銅鈴の音を響かせている
明け方の寒さは厳しく駅亭を通り過ぎる
私は自ら鞭を垂らして残雪で戯れる
驢馬の蹄は緩やかに深い山々の青を踏む)
その落款には「羅洋山人」とあった。
林霈は詩を読み終えるとひとりごちた。
「詩にはそこはとなく趣きがある。羅洋とはいったいどこなのだろうか?」
廃屋の中から、返事があった。
「詩の中の語を見るに、湖広の人のようだがな。」
林は廃屋の中に入って確かめてみたが、ただ塵と腐った落ち葉があるのみであった。
彼は幽鬼に遭遇したのだと悟り、怯えながら車に乗り込んだ。それからというもの、彼は常に鬱々として楽しまず、ほどなくして亡くなった。
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