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閲微草堂筆記(192)冥銭

巻九 冥銭
 戊子の夏のこと、若い下僕の玉兒が労咳を患って死んだのだが、にわかに甦って言った。

「冥府の役人に銭を持ってくるようにと言われて帰されました。」

 冥銭(※)を買ってきて焚き上げると死んだが、いくらもしないうちにまた甦って言った。

「銀色が足りなくて、冥府の役人が受け取ってくれません。」

 そこでさらに銀箔を買ってきて銀貨をこしらえて焚き上げたところ、今度こそ死んで二度と甦ることはなかった。

 思い起こせば、雍正の壬子の年(雍正10年)、弟の映谷の臨終の際にもこれと似たようなことがあった。
 それにしても、冥銭をこしらえることは本当に意味のあることなのだろうか。冥府の役人がこのように多くの金をせびっているという状況で、その上司は一体何をしているのだろうか。

※ 紙銭。死者のために焚く紙製の銭。焚き上げることによって、それがあの世での財産になるとされている。

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