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閲微草堂筆記(211)因果応報

巻六 因果応報
 亡き四番目の叔父である栗甫公は、ある日、友人を訪ねて河城へと赴いていた。
 すると馬が一騎、北東の方角に向かって飛ぶように馳せて来たかと思うと、たちまち柳の木の枝に引っかかって、乗っていた者が落馬した。人々が駆け寄ってきて見れば、その者は気絶していた。まもなくして一人の婦人が泣き叫びながらやって来て言った。

「姑が病を患ったのですが、薬も食糧もなく、一昼夜歩いて実家から衣服数着を借りて来たところでございました。それが思いもよらないことに、馬に乗った賊に奪われてしまったのです!」

 皆で先ほど落馬した者をひきずり出してみると、彼はすでに息を吹き返していた。婦人は叫んだ。

「その者にございます!」

 風呂敷包みは近くの道端に投げ込まれていた。その中身の衣服の数を問うたところ、落馬した者は答えることができなかった。一方、婦人が答えたものを風呂敷包みをあけて確認してみると、すべて一致した。

 落馬した者は罪に問われることになった。人々は白昼堂々強盗を働いていることから、縛り首が妥当だとして役所へと送ろうとしたが、落馬した者は叩頭して命乞いをした。自分の懐の中には数十両があり、それを婦人に渡して罪を贖いたいと願い出た。
 婦人は姑の病状が急を要すること、また訴訟のため役所まで赴くことを望まないことから、その金を受け取り、その者を解放した。
 叔父は言った。

「因果応報というが、その報いがこれほどの速さでかえってくるのはこの話のほかにない。このようなことに想い及ぶたび、鬼神とはいついかなる場所にもいらっしゃるのだと考えさせられるよ。」

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