閲微草堂筆記(403)踊る靴
巻十 踊る靴
昌吉(現在の新疆ウイグル自治区昌吉市)が平定された後、捕虜や逆賊の子女は、褒美として将軍たちに分け与えられた。ウルムチの参将(官名)であった某は、その分配の実務を司っていた。
そして彼自身も、その子女たちの中から容姿の優れた者を四人選りすぐって我が物にした。
歌や踊りを教え込み、白粉をはたき、色とりどりの衣や装飾品で着飾らせ、姿態の多彩さはまるで絶世の美女のようであった。それらを見た者の中で心を奪われない者はいなかった。
後に、彼は金塔寺(甘粛省張掖市)の副将として転任することになり、時期になって赴任地へと出発した。
ところが、童子たちがその荷物の中の衣装を検めていた時のこと、たちまち、箱の中にあった刺繍入りの靴が四足、ひらひらと躍り出て来た。それは堂の中をあちこち踊るように翔びまわり、蝶が群れになって飛んでいるかのようだった。
杖で叩き落してようやく地面に落ちたが、それでもなお、もぞもぞと動こうとしていて、「よぅ……よぅ……」という声がした。
見識のある者はこれを不吉な兆しなのではないかと訝った。
その後、某参将は辟展(ゴビ)にたどり着いたが、そこで地方の官員を鞭で打ってしまい、鎮守大臣に弾劾された。彼は伊犁(現在のイリ・カザフ自治州)へと配流となり、その地で死んだ。