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FR@GMENT WINGのテーマは、反逆(あらがい)である[シャニマス]

FR@GMENT WING01のジャケットでわかる通り、FR@GMENT WINGシリーズのテーマは、

「曇り空のとき、それでも翔べるか」

です。これは高山プロデューサーの言葉ではないですが、彼の言葉を聞いてそう思いました。次の記事から引用します。

新衣装の「オーバーキャストモノクローム」も曇り空をイメージしていて、雲の層をパッと抜けた時に青空が広がるようなコンセプトなんですね。ただこれは、ともすれば暗くなってしまうような楽曲とも言えるのですが、それでも今なら『シャイニーカラーズ』の「空」を表現できるんじゃないかという思いがあり挑戦しました。(高山プロデューサー)

雲の層を突き抜けられるのか、そういった挑戦こそがFR@GMENT WINGのテーマです。挑戦とは、既存の体制に対する抵抗や反逆だと考えます。新しいものは、既存の概念や価値観を破壊します。だから最初は受け入れられにくいリスクがあります。それでも、その先にある創造を信じて挑戦していく。今回は、FR@GMENT WINGシリーズの各楽曲からそういった抵抗や反逆といった要素を抽出してみました。いずれの曲にもそういう要素があるのかは疑問でしたが、結果はどうでしょうか。お手元の歌詞をご覧になりながら読んでいただけると幸いです。

直線への反対

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真っ直ぐの道じゃなくたっていい。悩んで迷って、遠回りしたって、彷徨ったって、歪んだ光だって、自分たちだけの輝きを。

それはまさに迷光そのもの。

誰かが作った、誰かに引かれた道(レール)の直線ではなく、自分なりの蛇行。

いつだって世界が正しいわけではありません。いつでも自分が間違っているわけではありません。事実、Straylight.run()では、歪んでいたのは世界のほうで、アイドルに対して真っ直ぐで正々堂々闘ったのはストレイライトの3人でした。面白い皮肉ですね。ストレイライトの3人は、彼女たちなりの蛇行(まっすぐ)で、偽りだらけの世界と闘いました。「Wandering Dream Chaser」はストレイライトのデビュー曲にこれ以上ないぐらい相応しく、彼女たちの自己紹介のための曲といえるでしょう。

それを踏まえた上で、「Transcending The World」はそういった世界への超越、超えていくといった気持ちを歌った曲だと思います。自分自身の心、自分自身の生命、自分自身の世界。それら全てに勝り、超越すると終盤に歌っていますね。世界を超越することを歌っていますが、世界とは自分自身の世界で、歌っているのは自分自身のことだったのですね。「いつまでも傍にいるよ 私の果てまで ずっと」の歌詞からもそれが感じられます。進化や変幻自在といったフレーズからも、自己変革といった言葉を想像できます。自分自身を超越して塗り替えていくのは、まさに抗いそのものと言えるでしょう。

既存の摂理への拒絶

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ラビリンス・レジスタンス」は、曲名通り抗いを示した曲でした。躊躇って止まらずに、望んだ自分でいるために、声を上げながら抗って彷徨うんです。誰かが「もう抗わなくていいんだよ、こっちにおいでよ。みんながいるよ」と囁きます。一人滑稽に道化として踊っていた自分へのやさしさです。望んでいる自分を消してしまって、みんなと同化すれば楽になれることでしょう。もう迷わなくて済む、不安定で曖昧な自己嫌悪からも逃げることができるでしょう。もう自分を無様だと思うこともなくなるのでしょうが、この歌の主人公はそうはしなかった。自分で心臓の矢を抜いて、涙を流して声をあげながら、抗って彷徨い続けます。闇を打ち消すタイヨウのように、ですね。

抗いの観点で考えると、「NEO THEORY PHANTASY」の見方も変わってくるのかもしれません。「新たなる理(ことわり)」とはなんでしょうか。この曲は時間経過による風化について抗おうとしていると思っています。時間が経てば様々な物語や歌は、淘汰されていき、人々に忘れ去られていきます。それに争う(あらがう)ためには、どうすればいいんでしょうか?古いものでも現代にまで残っているものがありますが、それらは時代の風化にどうやって耐えてきたのでしょう。これまでにない新しさがあったから、時の流れにも耐え残ってきたのでは?新しさがあれば、供給過多になっている有象無象の創作物の中でも生き残ることができるのではないでしょうか。

時間が進むことへの囁やかなキライ

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ビーチブレイバー」では、子供であることを誇らしく歌っているように思います。大人になることへの抵抗というのは過剰な解釈だと思いますが、「なりたいのは人魚でパイレーツ」といった一見矛盾するフレーズや「UV 遊泳 大人はCUT」といった歌詞からは、純粋に子供であることを謳歌しているように思えます。「大人ぶるって大人しくじゃなく」のも面白く、大人でも自分のサナギを捨てていいんだよと言っているようにも思えます。誰だって昔は子供だったのですから、大人になったって子供のような無邪気さや好奇心を忘れたくはないものですね。

一方で、「よりみちサンセット」では時間が経過して素晴らしい今がなくなってしまうことの寂しさを歌っています。気持ちとしては帰りたくないし、少し遠回りしたい。あの時計がズレていれば、もっと一緒にいられる。「向いている未来と同じくらい大事な今」なんです。「時間が止まればいいのにな」と歌っています。でも、行かなくちゃならない。時計の針を止めることはできないのです。大人の誰もが昔は子供だったように、生きていれば子供だって誰でも大人になるのですから。思春期における、幸せな時間がずっと続けばいいのになといった叶わない願いを、明るく囁かに歌っているのです。

「わたしの純情」を穢す全てに対する反逆

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Bloomy!」では、「もっとまっすぐに感じよう」「いつもわたしらしくいよう」といったフレーズが繰り返し歌われます。そういったポジティブなフレーズが散りばめられることによって、一人の女の子が、自分で自分を律しているように感じます。「大丈夫 遠回りしてもいい」「ずっと信じつづけていたい」「そうよ ありのまま輝いている」といった歌詞からも、それは強く感じられます。自分の外側にいるもの、他人であったり世界であったり、それらから歪められることを拒んでいるように感じます。歌詞で絶妙に上手いなと思ったのが、「大丈夫」や「そうよ」といった掛け声。まるで自分で自分に言い聞かせているように思えるからです。自分の心の中で、自分を励ましている。周りの雑音(ノイズ)に、自分の純情が濁らされないように。「ありのまま」とか「遠回りしていい」といった表現もそうですね。いつも自分らしくいるために、何事ももっと真っ直ぐに感じられるように、心の清らかさを健気に保とうと頑張っている感じがします。

Love Addiction」では、いつものマンネリな日常からの脱却を歌っているように思えます。贅沢にテーブルを飾って、下ろし立てのワンピースを着て、キラッとするスプレーをちりばめて。いつもよりちょっとお洒落してみる。日常の中にある、ささやかな非日常。夢のような時間に終わりはあるのでしょうが、結局は考え方や感じ方次第なのかもしれません。

孤立への反抗

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孤独に良し悪しはありません。人間は誰しも孤独で、死ぬときは1人で死にます。でも、孤立はよろしくないことが多いでしょうね。誰からも助けてもらうことができない、それは辛いと思います。孤立という言葉が使われる状況は、孤独とは違い集団から拒絶されている状態でしょうから。イルミネーションスターズの2曲「We can go now!」「トライアングル」はいずれも、「孤立」に対する抵抗を歌っています。

We can go now!」では「ひとりじゃないよね」というフレーズが何度もでてきて、強調されています。他者と手を取り合い、繋がる。明るくポップな歌には、多くの人が抱えるであろう孤立という恐怖に対する、彼女たちなりの主張が盛り込まれているように思います。「大丈夫だよ」「願う叶う叶えていく」と励ましています。

トライアングル」でも同様で、「何があっても一緒だよ」「一人でそんな抱えないで」と歌っています。「たまに会えない時はもう 寂しくてたまらなくなっちゃうよ」という歌詞からは、やはり一人で過ごす時間は誰にだってあるということです。当たり前です。24時間365日ずっと一緒にいるわけではないし、誰だって孤独なんですから。でも孤独である時間を過ごすからこそ、大好きな人たちと過ごす時間の大切さを感じることができるのでしょう。

向かい風に対する抗い

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Ambitious Eve」は2年目の表題曲であり、「逆境でも羽ばたけるのか」「挑戦」といったテーマを強く内包している必要があります。事実、そういう曲ですよね。当たり前ですが、「Spread the Wings!!」とは歌詞の方向性が全く違います。「どこまで行けるの」「誰に届くんだろう」といった、不安で不確かな感じ、ポジティブとは言えない気持ち。「重力にハートが泣きそうでも」という明らかな外部からの抵抗。それにどう立ち向かうのか。1年間の時間を経て作品がより加速していく時期にぴったりのテーマだと思います。不安になりながらも、少しずつ進んでいることを実感しているのが歌詞からもわかりますね。曇りそうな心模様でも、明るく前向きな言葉で自分を鼓舞しています。強く、積極的(ポジティブ)な曲ですね。

いつか Shiny days」も同様で、「追いかけても 簡単には届かなくて」と冒頭から現実感が漂います。何事もそんなに簡単なはずないです。人生思い通りにならないことの方が多いでしょう。「それでも」というのがこの歌です。「くじけそうになったり 逃げたくなったりするけど 諦めたりしない 決して」なんです。厳しい現実に直面しても、強い強い意志を持って進んでいくんだというのがこの曲です。しかも羽ばたくのではなく、歩いていくというのがまた素晴らしいんですが、「いつか Shiny days」について詳細に語るのはまたの機会に。本当に、大好きな曲です。シャニマスで1,2をあらそうほど好きです。

まとめ

2年目は置きにいきたくない

高山プロデューサーの言葉です。2年目というのはプロジェクトを軌道にのせ、安定化させるのがセオリーなのでしょう。ことガシャに関しては、執拗に期間限定を連打し「置きにいった感」が否めないです(辛辣)。しかし作品のストーリー、そして楽曲に関してはとても挑戦的で野心的だったと絶賛します。FR@GMENT WING、本当に素晴らしい。

結論としては、強弱や明確さに違いはあれど、どの曲にも2年目のテーマは浸透しているように思いました。「逆境でも羽ばたけるのか」という問いに対して、コンテキスト(文脈)や答え方は違えど、それぞれの曲の中に答えは入っていたと思います。とても挑戦的で、素晴らしい楽曲たちでした。

感想

特にアンティーカやアルストロメリアがそうなのですが、グリム童話やら哲学的なニュアンスにまで踏み込んだ議論はまだできてないのです。なので、そのような取り組みをされている方からすると頓珍漢なことを言っている可能性もあるのですが

それにしても狼に飲み込まれて狼の腹を引き裂いて出てきたというのは、ちょっとアイドルの歌としてやりすぎなのではと解釈として違和感を感じます。アンティーカって可愛い要素も持ったユニットだと思うので、それではヘヴィメタルバンドな気がします。考察自体を否定しているわけではないので、「NEO THEORY PHANTASY」などの個別曲についてはまたの機会にじっくりと!

本記事で使用されている画像はすべて©︎BANDAI NAMCO Entertainment Inc.


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