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Black Reverieが叫んだ「アンティーカの純白」[シャニマス]

以前、イルミネの記事で変化と不変のカオスについて熱弁しました。Twinkle wayとはそれら両方に連なる軌跡なのだと。今回のアンティーカについても、変わってゆくものと変わらないものに注目して考察していくのは同様です。それがGR@DATE WINGのテーマなのですから。ただ、Black Reverieからはより一層「変わらないもの」を歌っているように感じたのです。今回も、歌詞の物語性というよりも抽象度の高いメタ的な視点で、これらの曲が何を歌っているのかを解釈していこうと思います。

GR@DATE WINGシリーズは↑の記事で考察したように、変化と不変について描いているという視点のもと、アンティーカでは何を描いたかについて見ていきます。何度か曲を聴き、感覚的にある仮説を立てました。それは、

Black Reverieは、アイドルになる前となった後での変化を描いている

という仮説です。これをもとに考えていきたいと思います。

Black Reverieが叫んだモノ

Black Reverieは、白い天使が黒く堕天していくことを描いています。白から黒へ堕天するとはどういうことか。結論からいうと、歌詞の1番はアイドルになる前、2番はアイドルになってからの自分を描いていると思います。「開けない静寂」「始まってしまいそう」というのは、アイドルとして生きる前の自分が感じている予感のようなものを表している。「幕ガ開ク」「帳ヲ割イテ」というのは、アイドルとしての生が始まる部分。次からは2番の歌詞です。

無邪気な散策は 一瞬でマスカレード

マスカレードとは、仮面舞踏会のこと。仮面とは、ペルソナのことではないでしょうか?家族の前での自分、友達といる時の自分、プロデューサーに見せる自分、ユニットメンバーに見せる自分、アイドルとしてファンに見せる自分。アイドルとして注目されればされるほど、それらペルソナを望まずとも使いこなさなければなりません。彼女たちだけでなく、芸能関係者やスタッフなどが彼女たちに見せる姿もペルソナなのです。彼女たちアイドルを使ってお金を設けたり、あるいは自身の名声のためにアイドルを利用するために「良い人」の仮面を使う。仮面舞踏会とはこのことなのかもしれません。無邪気に過ごしていたアイドルになる前の自分は、否が応でも仮面舞踏会(大人の世界)へ参加せざるを得なくなるのです。

咲いている花さえも 目に入らない So Dizzy Night

無邪気に風と踊りたかったはずが、ミラージュに飲み込まれてしまう。咲いている花でさえ見る暇もないほどめまぐるしく動いていく世界と時間。アイドルになってから自分を取り巻く日常が大きく変化していったことを表しているんじゃないでしょうか。有名になればなるほど、ファン一人一人の表情も見えにくくなっていくのでは?例えると、売れなかった頃にやっていた一人一人の丁寧な握手会も、トップアイドルになればそのときと同様に行うのは難しいでしょう。アイドルとして有名になればなるほど、外に出る時は変装しないといけません。マスクをつけ、メガネやサングラスを付け。素顔ではもう、街を自由に歩くことさえできないのです。

Black Reverieは恋について歌った曲でありますが、この記事で考察しようとしているのはメタ的な解釈。アンティーカが作中世界でのファンに歌ったことについての意図ではなく、現実世界でこのゲームに触れている我々プレイヤーに何を叫んでいるかを焦点にしています。

闇ノ波間ニ

闇とは、アイドル活動のことではないでしょうか。アイドル業界の闇というような意味ではなく、暗闇や「先が見えない状態」のこと。

漂ウ二人

当然歌詞中のストーリーでは自分と自分が好きな相手です。メタ的な視点では、アイドルとそのプロデューサー、つまり我々プレイヤーのことではないでしょうか。闇の中で手をとって進んでいくことができるのは、自分の事情を直近でよく知っている人間だけということでしょうか。ある意味でそれは、家族や親友以上に自分にとっての理解者なのかもしれないですね。

Ah 手を伸ばしたら
分かってる でも深みへと進むの・・・

アイドルになるということは、それ以前の自分とは全く異なる世界で生きることになります。自分の名前を自分の周りの人間以外の多くの人間が認知するようになり、それだけではなく自分に対して「こうあってほしい」という願望や理想まで持たれるようになります。もう、自分一人のものであった私ではなくなります。大勢の偶像によって色付けられた、自分の知らない自分が外的なものによって形成されていきます。これが深みにハマるということです。ドツボにハマっていくのです。名声を得れば得るほど私生活では不自由になっていくでしょう。しかしどうすることもできないのです。外部からの力とはそれほど大きいものだから。分かっていても沼のような闇に潜っていくしかないでしょう。もう後戻りすることはできないのだから。

錯覚を起こす目眩 迷って掴む Helios

反逆という言葉だけではラビリンスレジスタンスを連想することは困難でしょう。「反逆の唄」であれば、まだわからなくもないですが決め手という気もしない。「迷って掴む」「Helios(ヘリオス=太陽(神))」と2つのワードからだと「これはラビリンスレジスタンスのことでは?」とも思ってしまいます。あくまで「ラビリンスレジスタンスの残り香が感じられる」という程度でしょうか。

佇む 永遠の汀 貴方がくれたGarnet
堕ちていく・・・ ためらいをそっと踏み越えたこの日から

1番の歌詞で佇んでいたのは「畔」でした。湖の畔というように、穏やかな水のイメージだったのが、ここでは「波が寄せる所、波打ち際」という汀(みぎわ)に変化しています。このようなフレーズからも、アイドルになる前となった後での自分のセカイの変化が表現されているように思えます。

ガーネットの花言葉は、「大きな希望、野心」だそうです。プロデューサー(プレイヤー)から与えられた、アイドルになることへの希望や夢。アイドルになるという人生の一大変化の瞬間を、ためらいを踏み越えて。アイドルになるという決意をしたこの日から、彼女たちはどんどんと堕ちていく。

月虹と革る世界 現とユメのChaos

革命と書いて変わるとよむ。月虹とは、月の光により夜間に生じる虹のことです。この月虹という言葉が2曲のいずれでも、特にBlack Reverieで重要なキーワードとして使用されています。これはシャイニーカラーズ、つまり283プロダクションのこと?とも思いましたがはてさて。アイドルという非日常(ユメ)と現(アイドルとして外界に出ないときの自分)が混沌としているのは自明です。たとえばストレイライトは、アイドルであるときとそうでない時の差が激しいキャラクターが多いですね。なので、アイドル(非日常)とペルソナを持たない自分(日常)で境界線を引くことがしやすいのではないでしょうか。アンティーカに比べて、ね。

現とユメのChaosという部分で、もうアイドルのペルソナをつけている自分と一人でいるペルソナをつけていない自分の境界が曖昧になってきて、どれが本当の自分なのかわからなくなっているようにみえます。

堕ちていく・・・魂は恋に魅入られてしまったの
昨日にはもう・・・ 戻れない私

1番から気になっていた、魂は何に魅入られたのか?ということ。恋とはアイドルのことでしょう。アイドルとして才能があり、同時にアイドルに面白さを見出していく自分。「深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ」とはよく言ったものです。Dark Angelとはまさにアイドルそのものでしょう。I'm a Dark Angelとは、私はアイドルであると言っているのと同じです。アイドルとしての名声が上がれば上がるほど、自分自身の自由はどんどん縛られて不自由になっていく。堕ちていくにもかかわらず、翼は一向に大きく広げられていく。アイドルとしての自分(周りから見える自分)は、わたし(アイドルではない、ペルソナをつけていない自分)の手が届かないほど高いところへ昇っていったのでしょう。

黒の幻想とは?

Black Reverieとは直訳で、黒の幻想・黒の夢想・黒の幻想曲という意味です。幻想とはなんなのか。それは、アイドルというペルソナのことではないでしょうか。いや、アイドルそのものか。この記事では、白から黒への変化を、アイドルでない一般人からアイドルへの変化であると定義しました。純白で無垢だった存在が、黒く黒く染まっていく。その堕天、それがアイドルへの変化。彼女たちにとっても、確かな現実であるはずのアイドルとしての時間が幻想的なものであり、本物の現(うつつ)と夢想の境界すら曖昧になっていく、Chaosであると歌っているのです。そして当然ながら、我々ファンである外野からみても、彼女たちアイドルの存在は幻想なのです。彼女たちのアイドルというペルソナを纏ったその表情の奥にある、真実を我々が見ることはできない。黒の幻想は、その確たる現実を我々に突きつけているのではないでしょうか。

Black Reverieは、歌詞を見ても曲中の人物たちの意志が感じられないです。〜したい、〜であってほしいといった欲求や願いが見当たらない。事実を淡々と歌っているように思います。これまで考えてきた内容も、「もう戻れない」「不自由に縛られていく」「アイドルは堕天である」という、極めて悲観的でディストピア的な解釈でした。これでは救済(=Remedy)が一向に感じられないですね。本当にそうなのでしょうか?

純白トロイメライが願ったコト

結論を言いますと、Black Reverieと純白トロイメライの2曲は密接に関連しているのではないかというのが私の仮説です。Reverieもトロイメライも、いずれも夢想と訳すことができますし、月虹や黒・白というキーワードが純白トロイメライでも登場するからです。しかもその関連は、Black Reverie→純白トロイメライというふうに時間軸を伴ったものであると考えます。ここからは純白トロイメライについて考えます。

この曲の特徴として、サビの部分を同じメンバーが歌っているのが新しいです。普通は循環させたりするのでしょうけど、この曲では一貫して同じメンバーが同じ歌詞を歌っています。

月岡恋鐘=選択
三峰結華=雨
幽谷霧子=花
田中摩美々=悪い子供(人)
白瀬咲耶=孤独

という感じでしょうか。冒頭から〜みんな同じでしょ?までの部分は、Black Reverieから続くアイドルの生活を表していると思われます。

さて、まずピンときた歌詞はこちらです。

隠した嘘のナイフ
突き立てるの待ってるなら
翳しなさい
きっと 時は今

突き立てるというのは、突き刺して立てることです。たとえば、人や物に刺すのがそうでしょう。一方、翳すとは手に取ったものを上げる、掲げることです。ナイフの役割が全く異なってくると思いませんか?いいえ、同じなんです。突き立てるのは天空(そら)に、翳すのも天になんです。するとどうなるか、ナイフが空からの光を反射します。Black Reverieで描いたのは堕天使であり、堕天使は光に弱いです。身体に当てられたら、身が焼かれることでしょう。なので、ナイフを突き立てることで

雨のように」→光の粒がカタストロフィになって降り注ぎ、

光合成をする「花のように」堕天使の身体はその光を吸収します。

でも、堕天使の身を焦がすその光と対象に、あなたは「いつも優しい」のです。悪い子というのは、堕天使のことでしょう。その光は、月虹とともに堕天使(わたし)を「寂しさ」から解放するほど包んでいきます。やがて訪れるのは、堕天使(わたし)の死なのでしょうか?

恋鐘が歌う「選んでよ」とはどういうことか。ナイフを持っているのは、あなた(プレイヤー)です。あなたが、その光を堕天使に当てるかどうかを選ぶのです。1番の歌詞では、堕天使に光を当てることを選ぶというのはどういうことなのかを説明しています。

No No Dedicate(献身)・・・以降の2番サビ前までの部分は、堕天使(わたし)の自律について描かれています。あなたに頼らず、自立して生きたい。

犠牲をともなう甘やかさ

とは、あなた(プレイヤー)の優しさです。これが与えられることで、彼女たちはどんどん期待して、終焉(いぞん)が始まっていきます。そして、

選んだら」からわかるように、2番のサビは堕天使に光を当てることを選んだ場合(if)の物語が描かれます。

代償(甘さ、ここでは光の粒)は「雨になって」降り注ぎ、

光に身を焼かれることで堕天使は息を引き取り、死後にたむけられる花だけが残ります(「花になって」)。

悪い人(あなた)は、堕天使の心(と生命)を奪ったのです。

眩い光は、「夢にまで見るほど求めた寂しさ」さえも溶かしていきます。アイドルである以上、寂しさを味わうことは難しいです。いつだって周りに人がいるのですから。月虹とは、やはり283プロダクションのことなのでしょうか。あるいは、息絶えることで無になり、孤独ですらなくなるので、寂しさを感じられないのでしょうか。

この光は一体何を表しているのでしょう。おそらく、この光は「世界(まわりのみんな)との同質化」です。漆黒の堕天使は、純白の天使たちばかりの天界から追い出された存在、悪魔です。眩い光は堕天使を浄化し、白く染め上げる。黒を削ぎ落とし、周りと同じく真っ白な存在にしてしまう。曲中の物語の中ではなくメタ的な視点で考えてみると、アイドルとして人間として周囲に同一化していくことに抗っているのでは?と思えます。そして

他人から輝かされるのではなく、自らの力で輝くという自立

を示しているのではないでしょうか。

話を戻します。そして、光に身を焼かれた結果、

欲しかった White Lie

となります。「欲しかった」ということはすなわち、与えられなかったということ。白い嘘は与えられず、白い真実(ひかり)だけが堕天使に与えられたのでした。このWhite Lieとは何か?あなたが光を当てることで堕天使は浄化され純白の身体に戻ることができるのでしょうが、そうではなく「光を当てないという選択」のことではないでしょうか。堕天使(彼女たち)を信じる心。

真っ黒な羽は
最後の想いごと
真っ白になれる

とはまさにそのことであり、翼(カラダ)が漆黒であろうと、純白の心さえあれば真っ白でいられるのではないかということです。

ここからは貴方を信じてもいい・・・?
「選んだよ」

堕天使(彼女たち)は、あなたを信じることを「選んだ」のです。堕天使に光を当てない選択をするであろう貴方を信じたのです。そして、あなたも同様に「ナイフを翳さない選択をした」のです。あなたもまた、堕天使を信じたのです。その結果どうなったか。ほとんどの部分は1番と同じですが、唯一違う部分があります。

でも貴方と「悪い子は」
空を飛びたくて

この部分、

・貴方と悪い子は、空を飛びたくて

・悪い子は、貴方と空を飛びたくて

の2通りの解釈があると思っていて、鍵かっこで括られて強調されている分、どちらかというと後者かなと思っています。純白の光に晒されて天使に戻るのではなく、「堕天使のまま」あなたと空を飛びたいのです。歌詞が前後しますが、

竦んだ夜を超えて舞い上がる Angel

竦んだ夜というのがポイントで、夜は何を竦む(恐れてこわばる)のでしょうか?闇の濃度、じゃないですか?竦んだ夜というのを具体的な言葉で表現すると、宵闇でしょうね。これはBlack Reverieのサビで何度も出てきた言葉です。この堕天使は、闇で覆うことを遅れた夜、それを超えて光のある空へと舞い上がって行ったのです。堕天使の身体は光に弱いです、でも堕天使は「あなたと空を飛びたかった」のです。1番や2番と同じように、光の粒が堕天使の身体を焦がしていくのでしょう。そうして、純白に還って行ったと歌は終わります。この堕天使が最期どうなったのかは定かではないですが、確かなのは彼女とあなたが世界に抗ったことです。ナイフで反射されて光を使わなくても、彼女たちの翼(こころ)は純白に還ったのです。彼女の翼は漆黒だったが、彼女の想いは真っ白だった。純白だったんです。これがトロイメライ(夢想)です。

トロイメライとは、調べてみると夢や夢想という意味で、ピアノ曲「子供の情景」の7番がトロイメライだそうです。夢想ではなく、子供の情景で考えてみるとどうでしょうか。子供とは何か。彼女たちは子供です。アンティーカは全員未成年です。未成年であれば客観的に見ても子供です。ですが、アイドルは社会的に見ると大人なんです。なぜなら、自ら労働して少なくない収入を得ており、さらには大勢の人間に影響を与える存在だからです。もちろん、事務所のスタッフなど大勢の人の力を借りながらアイドル活動をするわけですが、それでも大人なのです。よって、アイドルになった彼女たちは社会的に見れば大人の側面も持った未成年なのです。したがって、当然ただの子供ではありません。この歌を、子供=アイドルになる前の自分に還りたい・戻りたいという願いを歌った曲であるとも解釈できるのかもしれません。

まとめ:黒の幻想と白の夢想の相克の先は?

さて、記事のタイトルに戻りましょう。Black Reverieと純白トロイメライの世界観はつながっているとすると、Black Reverieから彼女たちの純白を感じることはできないでしょうか?堕天使が2つの曲で同一のものであると考えれば、一見己の意志を感じることが難しいBlack Reverieの裏側にある堕天使の想いを感じることができませんか。
純白とは、混じり気のない真っ白という意味だけではなく、汚れなく清らかなこと・またはそのさま、という意味もあります。私が思うアンティーカの純白とはまさに後者であり、彼女たちがけがれなく清らかであることをこの2曲は歌っていると思っています。

曲はダークでブラック、ヘヴィメタル。でも歌ってる彼女たち自体はとても純白。これから先どれだけハードでダークな曲を歌おうと、彼女たちの心の純白さは何も変わらない。そう叫んでいるように聞こえてきます。
どれだけ人気が出て売れようが、歌詞が過激になろうが、どれだけ進化しようが、わたしたちの本質は変わらない。変化と不変に対する5人の少女たちの慟哭のよう。黒い幻想、それは幻。真実は、現実は、どうしようもないほど純白である。
シャイニーカラーズとは文字通りの色。色を冠したということは、それなりに意味があるはず。記事を書きながらそんなことが頭に浮かびました。Blackから感じる心の純白さ。漆黒の幻想と純白の夢想が密接に絡み合っていることがわかった気がします。

様々なコミュを読んでいると、おそらく283プロダクションで最も知名度上がり売れているのはアンティーカであることはなんとなくわかります。そんな彼女たちだからこそ、「変わらないもの」を歌いたかったのではないかと思います。

アンティーカの5人、それぞれのキャラクターに初めて出会ったときに感じた魅力。たとえば摩美々の紫に対する誇りであったり、霧子の慈悲深さ。そういったものを、これからもずっと持ち続けて欲しいなと願っています。同時に、今回の2曲できっとそうなんだろうなと感じることができました。どれだけ堕天しようが、心は純白なんでしょうね。これから先も、アンティーカの5人には進化し続けて欲しいなと思います。

本記事で使用されている画像はすべて©︎BANDAI NAMCO Entertainment Inc.


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