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温泉ソムリエの温泉漫遊記 三朝温泉編

 みなさん、温泉はお好きですか。
 今年は、秋に長めの連休を取得するので、お盆休みは2日間。九州へ行くには短いし、かといって有馬は近すぎるので、神戸から程よい距離の三朝温泉に行ってきました。三朝温泉は鳥取県と岡山県の県境に位置する温泉地で、近くにはウラン採掘で有名な人形峠があります。そのため、当然といえば当然ながら、泉質はラジウム温泉です。
 三朝温泉に行くならば、国宝の投入堂(なげいれどう)は避けては通れません。皆さんも教科書などで一度は目にしたことがあるはずです。三徳山の岩肌にめり込むようにしてお堂が建っているやつです。役小角が投入れたのだという伝説から投入堂と呼ばれております。
 投入堂までの道のりは意外とキツイです。三佛寺境内から出発ですが、一人では入山できません。滑落したときに助けを呼びに行く相棒が必要なのでしょう。さらに、入山時には靴をチェックされます。運動靴でもすり減っているやつは不可です。草鞋を購入してそれに履き替えです。そのため、ここだけの話、「京都からわざわざやって来たけど、一人だったので追い返されて困っているんです。一緒に上ってくれませんか」と、自称社会科教師のおじさんにナンパされてしまい、一緒に上りました。大層感謝されました。
 輪袈裟をかけて入山すると、最初は普通の山道ですが、途中から急に険しくなります。

襷の様にはすにかける輪袈裟


入り口からして厳しい!

 木の根をよじ登ったり、鎖場があったり。途中、お堂が2か所あり休憩することもできますが、足元がスースーして、力を抜いてゆっくりとという気にはなれません。

難所の鎖場
落ち着きません

 登山道自体は普通にきつい山道だけなので話は端折り、40分ほどで投入堂に到着。意外と息が上がっています。今までにも何度か来ているはずなのに、体力の低下を実感。

すぐ近くまでは行けません

 下山したら意外といい時間になっていたので、三朝温泉へと急ぎます。
 三朝温泉は平安時代には発見されていたとのことで、中心部を流れる三徳川の河原には無料露天風呂の「河原風呂」があります。その三徳側に沿って高級旅館から庶民的な宿までたくさんの温泉旅館が立ち並び、それぞれが個性豊かな温泉を有しております。

河原風呂。丸見えです。

 そんな数ある旅館の中で、今回訪問したのは木屋旅館。ナビで案内されて、この路地を進むのかぁと嘆息するような細い温泉街の路地に面する小さな旅館です。
 なぜこの旅館を選んだかというと、まず登録有形文化財の宿であることが第一。そして建物は小さいのになぜか温泉が4個もあるという温泉変態チックなお宿であること。ホームページを見る限り、お世辞にもきれいとは言えない湯舟ですが、自噴の源泉があるとのことで、温泉ソムリエとしては、行かねばならないわけです。

登録有形文化財


 小難しい話。ウランからラジウムができて、個体のラジウムがα崩壊すると気体のラドンが生成されます。その気体のラドンを吸入することで、ラドンから出たα線が細胞の新陳代謝を活性化する云々という訳なのですが、そんな理屈をおかずに入浴する人は稀なので、この辺でやめておきます。
 外観は普通のこじんまりとした旅館です。しかし中に入ると温泉変態(すいません……)の片鱗が。「温泉に関してラジムリエがご説明いたします」的な案内があります。ラジムリエ? どうやら三朝温泉独自の入浴アドバイザー資格のようです。
 まずは大浴場に向かいます。大浴場はいたって癖のない普通のお風呂です。洗い場があって浴槽があって、湯温も適温。しかも源泉かけ流し。
 源泉かけ流しというだけでも普通に考えたら凄いことなのですが、これを普通のお風呂と言わしめるくらい、ほかのお風呂は癖が強いのです。

木屋旅館HPより拝借 大浴場男湯

 まずは、大正時代に手掘りで作られたというお風呂に向かいます。空いていれば入ってもいいですよ的な感じのお風呂です。引き戸を閉めて鍵をかけて、1階の脱衣所から結構な階段を下りていきます。河原の露天風呂と同じ源泉なので、その露天風呂の高さまで下りないといけない訳です。

ここが1階の脱衣所
大正時代の手掘り源泉かけ流し
ケロリン置いてます

 湯舟周りは特に洗い場もなく、3畳一間程度の広さです。かけ湯をして入湯。歴史を体に染み込ませたかったのですが、地下ゆえに空気が澱んでおり、先客の香水の匂いで気分が悪くなり早期撤収。
 気を取り直して、もう一つの源泉足下湧出の湯に向かいます。こちらも1階から階段を下りて湯舟の高さまで行きます。こちらは階下に脱衣所や神棚があり、湯舟は2個。

神棚あります


年季は入っていますが清潔です

 かけ湯をしようと湯に手を入れると、これがとんでもない熱さ。そうでした。源泉温度は70度超なのです。これが足下からぷくぷく湧いているので放っておくととんでもない熱さになるのです。そして薄め方はいたって簡単。横にある緑色のホースでざぶざぶ加水して適温になったら入浴です。加水あり、加温なし、循環ろ過なし。それでも、下から湧いてくるので常にやや熱めの湯です。これは、Good。2個湯舟があったのでもう一つの湯舟に足を入れて見ましたが、だれも薄めていないのでリアル熱湯風呂でした。

温泉成分分析票
ナトリウム塩化物泉を名乗れそうなのに 潔く放射能泉のみの表示
源泉の説明 一生懸命説明しています

 そのほかにも、予約制ですがミストサウナにも入れます。このミストサウナが濃い。スーパー銭湯のミストサウナを予想して臨んだものの、やられました。湿度気温に加えてラドンもマシマシ。次郎系リスペクト的な全部マシマシのミストサウナは25分の枠でしたが、10分で充分でした。

木屋旅館HPより拝借 濃ゆいミストサウナ

 豪奢なロビーや展望風呂もなく、決して高級とは言えませんが、心行くまで源泉を堪能したいという温泉マニアにはお勧めのお宿です。


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