【1月号】芸人リレーコラム/男性ブランコ・浦井
「新年に向けて」
2020年。まず数字の響きに驚く。
ものすごく未来の感じがする。
バックトゥザフューチャーでマーティが行った未来でさえ2015年でもう5年前。アルマゲドン2020、ターミネーター2020、とタイトルの後ろにつければ午後のロードショーでもやらなそうなB級映画の爆誕である。
「ウチら未来に生きてんね」と心の中のパリピが話しかけてくる。
あ、はい...…と僕は心の中のパリピに人見知りする。
落ち着いている、文豪ぽい、ほぼ滝廉太郎じゃないか、と普段言われている昭和顔の僕だが、一度だけこのパリピを制御出来なかった事がある。
ありがたい事に芸人になってからほぼ毎年どこかの劇場でカウントダウンライブに出ている。2020年に変わる瞬間も無限大で過ごす事が決まった。
大阪にいた時のカウントダウンライブに出た時の事。それはとても大きな会場で、GAG福井さんの公開プロポーズが失敗に終わった伝説のライブだった(僕はあの時初めて、公開プロポーズも失敗する時がある事を知った。空気階段のかたまりが成功して本当によかったと思う)。
劇場の主要メンバーでなかった僕らのコンビはサブステージでネタをした後、メインステージの端でライブオリジナルタオルを振りながら大勢でカウントダウンをするシンプルな出番だった。ライブは大団円で終了、会場はとてつもない満足感に包まれていた。
ステージから降りるとき、サイドの二階席に座っているお客さんが手を振ってくれた。こんな若手の僕らになんて優しいんだ、と嬉しくなっていると、お客さんが手を振りながら「ちょうだい! ちょうだい!」と叫んでいた。
どうやら首からかけているオリジナルタオルが欲しいらしい。
普段なら照れてスルーするはずが、その日そこにいたのはとてつもない数のお客さんと一体となったテンアゲ状態の僕だった。自分でも知らなかった心の中のパリピが、顔を出した。
「ウェーイ!!!!!」
できるだけ遠くに飛ぶようにギュッと丸めたタオルを下手投げでぶん投げた。距離が近かったので、ファサッと広がりながらもなんとかそのお客さんまでタオルは届いた。ありがとうマイメンなどと思いながらその人の顔を見ると、なぜか苦笑いだった。何かがおかしい...…。
答えはすぐに出た。僕の後ろにミキ亜生がいたのだ。
お客さんもさぞ驚いたろう。亜生のタオルを求めたら、いきなり大人しそうな若手が自分の汗まみれのタオルを投げつけてきたのだから。苦笑いで済んでよかったと思う。
帰り際、亜生に「浦井さんがタオル投げてるところ、めちゃくちゃ面白かったです。」と言われた。
大人しい人の中からパリピが顔を出したら面白い事もある。どうすれば心の中のパリピを自在に制御できるのか、2020年には答えを見つけられたらと思う。ウェーイ。
■男性ブランコ・浦井
NSC大阪校 33期生。1987年12月3日生まれ。京都府京都市伏見区。よしもとプラモデル部。