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ゴリラ愛を語る~爛々萌々・前編~

例えば、女性に「ゴリラ好き?」と尋ねたら、どれくらいの人数が「好き!」と答えてくれるだろう。おそらくほとんどの女性が「別に~」という返事をすると思う。が、よしもと漫才劇場には「好き! なんなら愛してる!」と、胸を張り、声を大にして答える女性がいる。爛々の萌々がその人物である。あるきっかけからゴリラにハマった彼女に、愛しの“霊長類”のことを、語ってもらった。

ゴリラと自分が結びついたのは、最初、強制的だったんです。
高校生の時に、学力や出席日数の問題で学校から、卒業できなくなるよって言われたんです。でも担任の先生が、私が頑張り屋さんだということはわかってくれていて、「あなたが一年かけて、“何か”について、一生懸命調べ、論文を書き、それを提出して学校側が“これは凄い!”と判断したら、あなたを卒業できるようにする」と、言っていただいたんです。
それでテーマに“ゴリラ”を選びました。

なぜチョイスしたのか……私、なんだかゴリラっぽいみたいで、動きもなんとなくそうみたい、顔も区分するとゴリラ顔の系統に入るみたいで、学生の頃から顔のフォルム、絶妙な感じで広がった鼻とか、さらに小さい頃から極真空手をやってたこともあって、他の男の子よりも力強かったせいもあって“女ゴリラ”とか“メスゴリ”って呼ばれたりしてたんですよ。
そこから友だちに「おい! メスゴリ」って言われた時に、すかさず自分とゴリラとの違いを説明できたら面白いかなと思って、それでゴリラを論文テーマにしました。

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卒業を賭けた人生を左右するような論文に、「自分のあだ名を面白く説明したらいいだろうな」という理由で“ゴリラ”をチョイスするとは!

図書館やネットなどでゴリラのことを調べていくうちに、ゴリラと私の違い云々なんてことより、一般的にみんなが思っているゴリラは、ゴリラじゃないって気付きだしました。それからゴリラにのめり込み、だんだんと愛おしい存在になっていきましたね。

ここからは、彼女が調べたゴリラ話が続く(ただし、あくまでも彼女が高校生時調べなので、諸説あること、情報もアップデートされているかもしれないということを最初にご理解しておいていただきたい)

「どうやってゴリラという存在になったのか?」から調べ始めたんですけど、ゴリラと人間というのは、隣同士。極端に言えば、たった一個の枝分かれした存在なんですね。お互い、ものすごく近いんです。「ゴリラは英語でなんて言うのか?」、「なぜゴリラと呼ばれるようになったのか?」とか調べました。ちなみにゴリラはギリシャ語で“毛深い女部族”という意味なんです。

一般的に“ゴリラゴリラ”が正式名称と思われてるんですが、本当は“ゴリラゴリラゴリラ”なんです。もともとゴリラというのは一種しかいないと思ってたんですけど、大きく三種いるということで正式名称はゴリラゴリラゴリラなんです。こういうのを調べていけばいくほどさらにゴリラへの親近感を抱きます。

さらに、胸を叩くドラミングなんですけど、皆さんついグーで叩きますよね。でも実はパーなんです。太鼓も手のひらを広げて叩いたりしますけどあれと一緒です。あれって威嚇とか、攻撃を加えるイメージがあるじゃないですか。違うんです。そもそもなぜそういうイメージを人間が持ったのかと言うと、その昔、欧米人が初めて森でゴリラと遭遇した時に、ドラミングをされたんです。

ゴリラ側は本当は、コミュニケーションを取っているつもりだったんですが、人間からするとその見た目と、ドラミングの迫力に衝撃を受けて、自分たちが攻撃されていると勘違いしたのが広がり、それが未だに尾を引いて伝わってしまっているということなんです。
戦いを暴力で終わらせるのではなく、引き分けに持ち込みたいという意味でのドラミングなんです。

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ゴリラ自体は平和主義者なんですよ。仲間と揉めないように暮らしてるし、なんなら野生でゴリラのオスがドラミングをやる時には、周りに腕が当たらないように確認してからするんです。
普段は群れで暮らしている彼らは、仲間がハグれた時などはドラミングで居場所を知らせたりするんです。その音は2km先まで聞こえるそうで、これを遠距離間コミュニケーションって呼んでます。

あと、威嚇で使うのは稀で、どっちかと言えば嫉妬や求愛で使うことが多いんです。そんなことを知れば知るほど、もう胸キュンしっぱなしで、私の中では日本人からのアジア人、アメリカ人、ヨーロッパ人などなど、ゴリラは同じ一線状にいます(笑)。もうダイバーシティです。

そう言えば、昔、ゴリラと人間のコミュニケーションを図ろうとしたフランシーヌ・パターソンさんていう研究者がいて、ゴリラに手話を教えたんです。そのメスのゴリラはココ(KOKO)っていう名前で、2,000語くらい手話で会話ができたそうです。

有名なエピソードは、彼女が絵本で知った猫をプレゼントにねだったんです。でも周りは危険だからぬいぐるみを与えたんですが、なんの興味も示さず、危惧しながらも一匹の猫をココに差し出したんですね。そしたら愛情いっぱいに可愛がってたんです。

でもある日、事故でその猫が亡くなり、そのことをココに伝えると“悲しい”と、手話で答えて、泣きじゃくって。ゴリラも死というものを受け入れることがわかったというもので、それを知った時はもう胸が張り裂けそうでした。 その後、その話についてはいろいろと賛否両論があったみたいですが、とにかく人間とのコミュニケーションは取れるんだということは私の中では揺るがないです。

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こういったエピソードなどを調べ、まとめたゴリラの論文は、先生たちに高評価を受け、無事に高校を卒業することができた。さらに霊長類研究に造詣が深い京都橘大学にまで彼女が書いた論文は送られたそうだ。がんばり屋さんはまさに頑張ったのだ。そんな彼女には推しのゴリラがいる……。

名古屋の東山動物園にはイケメンゴリラのシャバーニがいますが、実際見に行ったら、確かにカリスマ性があってかっこいいんですけど、個人的には「あぁでかいゴリラだなぁ」という感じでした。私としては京都市動物園のゴリラファミリーを推したいです。
関西で唯一ゴリラに会えるところなんですよ!

ここは、日本で初めてゴリラが子どもを産んだところなんです。父親のモモタロウ、母親のゲンキ、その子どもがゲンタロウって言うんです。ゲンキがうまいことお乳をやれなくて、人工哺育をすることになって、日本で初めて成功したのがこの京都市動物園なんです。

ゴリラは繊細で神経質なので、たとえ人工哺育をしても母親の元に戻すのが大変。最悪な場合、死んでしまうこともあるのに、飼育員さんが試行錯誤していろんな工夫をして育てて。そして、両親の元に戻したらちゃんと3人で生活できるようになったんです。

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実際、当時付き合ってた彼氏と見に行って、説明文読みながら「こんなに大きくなったんや」っておもわず涙流してしまいましたもん。それから今も一緒に暮らして、弟のキンタロウまでおるんですよ。
ちょっとしばらく行けてないので、久しぶりに京都市動物園に行ってみたいなぁ…。

というわけで、ゴリラファミリーが今はどんな暮らしをしているか気になり、京都市動物園にアポを取ってみた……。はたして爛々・萌々はゴリラたちと再会できるのだろうか。ゴリラ愛を語るから、実際にその愛を確かめることができるのだろうか……。

後編へ続く

■爛々 プロフィール
萌々(もも)と大国麗(おおくにうらら)の女性コンビ。
萌々の特技は、魚をさばく、トランペットを吹く(歴10年)、空手初段、 絵を描く、デザインや動画編集、 激安の服を着こなす。
大国の特技は、お洒落、服を売る、お化粧、歌を歌う、京都のいいとこ紹介、美容院でひと言も喋らずにいられる、ペルシャ絨毯の良し悪しを見分けられる。

爛々INFO

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取材・構成/仲谷暢之(アラスカ社)
写真/月刊芸人編集部
写真提供/爛々・萌々

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