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〜The origin of Laugh〜 feat.エンペラー

笑いを追求する芸人さんの起源て何だろう。ふとそんなことを思い立って聞いてみました。今回はエンペラーの笑いの起源。

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それぞれのお笑いの原点、リスペクトしたもの

安井:小さい頃から「吉本新喜劇」、「笑いの金メダル」、「エンタの神様」をかじりつくように見てましたが、個人的にすごく惹かれたのはやっぱり「M-1グランプリ」ですかね。そしてダウンタウンさんがものすごく好きでした。

にしやま:僕の育った高知県は割と大阪にも近いですけど、実は関西のお笑い番組はあまり放送されてなかったんですよね。まずチャンネル数が少ないので。だから基本、お笑いの文化があまりない。そんなかで小学生の頃、NHKで放送されてた「爆笑オンエアバトル」を見てて、なんとなくこういう職業っていいなってふんわり思ってました。で、2005年の「M-1グランプリ」のブラックマヨネーズさんの漫才を見て衝撃を受けて、これに出たいなって思いました。

子どもの頃は…?

安井:僕は、明るいキャラでしたね。スクールカーストの上位の方、一軍でした。

にしやま:ウソなしで言いや!

安井:ウソやないわ! 普通に彼女いっぱいおったんで。

にしやま:それがいきなりウソっぽいやん! 小学校、中学校、高校生が頂点やろ。

安井:今もや! まぁ、小学校の時、放課後に「この後、僕らコントやるんでよかったら見てください」って言うて、同級生とトリオコントみたいなのを定期的にやってたりしてそういうのもあって一軍でした(笑)。ちょっとしたコントをやって、見てもらってっていうのを定期的にやってましたね。

でも、お笑いを目指そうなんてことはなく、当時の気持ちとしてはただ目立ちたいってだけでした。なんせ卒業文集には“漁師になりたい”って書いてましたから。なんかテレビで釣りたての魚を船の上で捌いている場面を見て、めっちゃええなぁって書いたと思うんですけど、今思えば、京都の山に囲まれた環境で育ったので、海に憧れがあったと思います。

中学生、高校生はネタこそしなかったけど、ようふざけてる男子でした。今の身長くらいになったのは中学3年生かな、学校ではバレーボールやってたんです。でも1年生の頃はクラスで一番小さくてレシーブ専門のリベロだったんですけど、背が伸びたんでアタッカーになりました。

そのまま高校でもバレーボールってことも考えたんですけど、バスケットボール部に入りました。結局1年で退部して、あとはバイトばっかりと友達とつるんで遊んでばっかりでした。で、高校3年生で進路を決めないといけない時に、大学で勉強をするのも嫌やし、普通に働くのも嫌やし。でも面白いことをするのは小さい頃から好きでしたから、しかもそれでお金が稼げるんやったら一番ええなぁという、正直、消去法と軽い気持ちでした。

NSCという存在は知ってたので、同じく進路を決めてなかった幼なじみを口説いて入学しました。ちなみに両親は、「やりたいんだったらやりなさい」って二つ返事でOKでした。

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にしやま:私は小学生の頃はお花屋さんになりたかったですね。外で遊ぶことにあまり興味はなくて基本インドアな子でした。で、中学生の頃は弁護士になりたくて、当時の私なりにいろいろと本を買って勉強したんですけど、早々に投げ出しました(笑)。学校では教室の隅っこで数人くらいでキャッキャ言いながらクラスの上位の奴らをバカにしてるような男子でした。

安井:めちゃめちゃ陰キャやんけ! 小学校や中学校の頃、いじめられてたんやろ。

にしやま:まぁいじめというか……元々、イジられる感じがあるからなのかもですけど……。屋上からバッグを投げられたりとか……。多感な時期だったんで悩んでたことはあったんですけど……。巧妙やったんは、私が座ってる椅子の上の天井位置に、濡れたティッシュを貼られて、授業中、ポタポタと絶妙に私の頭に雫が垂れてくるという。よくそんなことを考えたなと思いました……。

高校は、工業系でほぼ男子だけですから、特にこれといって“ピンク色”みたいなことはなく、剣道部に入ってひたすら鍛錬してました。だから、礼儀作法は完璧だと思います。

その頃から本格的にお笑いはやりたくて、両親に言うたらさすがに大学は出てほしいと。それでダウンタウンさんが好きだったので、お2人の出身地である尼崎の大学に入学しまして。関西に出てきました。

ただ、英語学科に入ったんですけど、元々工業高校で高1レベルの英語しか勉強していないので授業が難しくて。先生は外国人ばかりだし、日常会話は全て英語だったし。両親には、せっかく祖父母がお金を出してくれたんやから卒業してくれと言われましたが、2回生の時にさすがに我慢できず、高知に帰り祖父母に退学させてもらうことをお願いし、許しを得ました。

そこから、同級生で、芸人としては後輩なんですけどいつもたいしゃのシンジ君がいたんです。彼はインディーズの頃からコンビを組んでいて僕の周りで唯一お笑いをしている子だったんです。彼を見て、私もなれるかなと思ってNSCという学校を調べて入学しました。

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NSCへ

安井:もともと幼なじみとコンビを組んで入学しているので、しばらくは誰とも喋らなかったんです。そんな必要ないわって思ってましたし、若くて尖ってましたし(笑)。けど、3ヶ月で幼なじみが辞めて、ひとりになり、急にこれはヤバいと。相方も見つけないといけないし、すでに周りは仲がいいグループとかもできてきてるしで慌てて遅れを取り戻すべく、積極的に話しかけていきましたね。そこでにしやまをはじめとした3人と知り合って……。

にしやま:安井さんと計4人でそれぞれ一回ずつローテーションを組んで、ネタ見せに出ようと。お試しみたいな感じで。
それで最後にやってみたのが私と安井さんで。それから一緒にネタをやるようになりましたね。決して、今日から組もうって言われたのではなく、「キング オブ コント」の一回戦でさらにお試し的に出てから、ズルズルと。いつ正式にコンビを組もうって言うてくれるのか(笑)。

安井:まぁ事実婚みたいな感じで(笑)。結成秘話がないのも面白いかも。

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にしやま:それである日から、安井さんが何か見つけたように、私のことを気持ちワルって言うようになって、今ではそれが私と組んでる理由になってます。

安井:にしやまは、最初から気持ち悪かったんです。なんかね、気持ち悪かった(笑)。言動やちょっとした動きをいじったりしたら面白いんやろなってふわってイメージできて、いい意味での気持ち悪さというか。それが決め手に(笑)。

にしやま:なんかいじられた時にしょげたりしたら空気悪くなるじゃないですか。だからこそ、学生時代もいじられたら返してたし、それで周りが楽しくなるんやったらいいかなって自分の中で納得というか。でも“それ”をやったら気持ち悪いって言われる。みんなを幸せにしようとしてるのに……。

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今年10年

にしやま:いろいろあったとか言いたいですけど、めちゃくちゃ努力したとか、苦節うんぬんとか、そういうのがなくて、楽しくできたらええなって思ってるうちに10年経ったような気がします。
2019年に「ABCお笑いグランプリ」で優勝した時は嬉しいより安堵が大きかったです。大学辞めるのを許してくれた祖父母や両親にちょっとは恩返しできたかなと。でも、今年は賞レース的に最後が多いので、勝負イヤーとしてさらにいいとこを見せてあげないとと思ってます。

安井:10年……振り返ってみると今里に住んでた頃、一緒にやって3年目くらいの時が、個人的には一番きつかったです。オーディションも何にも通らないの連続で、ヒマやし、何もないしで悶々としてました。
そこからよしもと漫才劇場がオープンして、メンバーとしてしっかり入れた頃からなんとなくコンビとしてもやっていけてるなぁと。にしやまも今のスタイルになったのもその頃かな。

にしやま:明確には衣装が変わったのも含めたら2018~19年。
私が「衣装、こういうのにしましょう」と提案したんです。それまでは安いリクルートスーツみたいなのに赤と青のネクタイ姿で…。私の身なりもメガネをかけ出したり、私服で出たり、ヘアスタイルを変えたりとコロコロ変えてたので。特徴がないのでキャラ作りに必死でした。

で、オールバックにメガネにしたら顔立ちが古臭く見えて、スーツもダブルにしたら年上に見えるかもとやってみたらハマりまして、まぁ全部一応戦略勝ち、今でいうマーケティングとブランディングが成功したと言うか……。

安井:ダサいな(笑)。

にしやま:ただ一つ引っかかった部分があって、今のままじゃパッと映えない、見てもらえない格好だったので、私がこういう衣装を作ってほしいと写真を安井さんに見せたんですね、そしたらオーダーしてきてくれて、後日仕上がったのを見たら、スーツの色がめちゃめちゃ明るい色、目に刺さるような空色で、私が注文したのはもっと暗い紺色なのに全然注文と違うやつを作ってきやがって! めちゃめちゃ腹立ちました!

安井:でもその衣装がなかったら賞も取れなかったと思うし。今考えると完全に戦略勝ちです(笑)。

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漫才師として

にしやま:大阪だけを拠点にとか決めてるわけではないですが、全国の人たちにより、私たちのことを知ってほしいので、場所を問わず、漫才をとにかく演じていきたいと思います。

安井:僕も漫才はずっとやっていきます。そして歳を取っても舞台に立って、後輩とかにも、ずっとすげーなって言われたいですし、なめられたくないです。ダラダラと芸歴だけを重ねてるとは思われたくないですし、やっぱり漫才師としてリスペクトされ続けたいですね。

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思い出の場所

大今里南公園

安井:コンビ組んでから初めて西山がタバコを吸うてるのに気づいたのがこの公園でした。3年くらい知らなくて、この公園で、吸ってるんやって驚いたことを憶えてます。

にしやま:私もそういう人(ニン)がつくのが嫌で。タバコを吸ってるのを知られること自体があんまり。清潔でいたかったっていうのがありますね。

にしやま:私のここでの思い出は、そうですね…蚊にむっちゃ刺された。

安井:話薄いなぁ。

にしやま:あと、公園の近くのマンションに私が住んでたんですけど、それを追って同じとこに住みだしたんですよ。しかも私より上の階に……それがなんかエピソード的にいやでしたかね。

安井:それずっと言うけど、マジでたまたまなんですよ。

にしやま:以前から安井さんは私の真似をしがちなんですよ。まずマンションでしょ、そして私がツーブロックにしたら、安井さんもツーブロックにするとか。

安井:いやいや、ツーブロックは俺が先にしてたから!

にしやま:いやいや違いますよ。

安井:中学からツーブロックなんで!

にしやま:全然違う!

安井:あと、俺が白Tばっか着てたら、白Tばっか着だしたし! 下黒ズボンのコーディネートすぐやったやん!

にしやま:みんなそやろ、白Tは着るし、それは誰もがやる定番やろ!

安井:いや、めちゃめちゃ真似してるやんって憤ったわ! でもね、マンションはほんまに知らなくて。何より相方が住んでるところ知らなかったですから! NSC生徒がよくお世話になってる不動産屋の紹介ですよ。安いところを紹介してほしいって頼んだらたまたまそこで、相方に家を引っ越すねんって言うたら俺のマンションやでって。なんで上の階がイヤやねん!

にしやま:新参者は下やろ

安井:なんでお前の下にならんといかんねん!

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ネタ合わせの場所

よしもと漫才劇場

安井:基本的には書かずに、テーマをひとつ決めて2人で喋りながら作ってます。例えばヤングコーンを食べたことある、ないみたいなネタがあるんですけど、これは今まで食べたことない物はあるかな?というテーマでひたすら喋って生まれた感じです。

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■エンペラー プロフィール
安井祐弥にしやまのコンビ。
安井祐弥の趣味は釣り、キャンプ、サバイバルキャンプ、ねんど細工。特技はコマ回し、一輪車、魚の手掴み、高い所から川に飛び込める、本を読むのが速い。
にしやまの趣味は映画鑑賞、妄想(デスゲームの)、人間観察。特技は少林寺拳法、親指がすごい反ります。

エンペラーINFO


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取材・構成/仲谷暢之
撮影/渡邉一生(SLOT PHOTOGRAPHIC)

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